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お題小説

赤ピーマン

作者: 水泡歌

 私には5歳の息子がいる。

 この息子、基本的に好き嫌いはしない子なのだが、一つだけ嫌いな食べ物がある。

 それは、赤ピーマン。

 ピーマンは食べられるくせに、赤ピーマンはダメ。

 一度息子に理由を聞いてみると返ってきた答えが、「赤いから」

 ……なんじゃそりゃ。

 今日も息子は赤いからという理由でスパゲッティに入っている赤ピーマンを残している。

 一応、母親として、そんな理由での好き嫌いを許すことはできない。

 しかし、無理矢理食べさせたとしても、この息子、泣くわ、叫ぶわ、すねるわで、私が苦労するだけだ。しかも結局食べないし……。

 そこで私は考えた。

 息子が自分で食べるようにすればいいと。

 さて、早速その考えを実行してみることにしよう。

「ねぇ、哲、赤ピーマンは何で赤いのか知ってる?」

 私が息子に言う。

 息子は振り向く。トマトケチャップで汚れた口のまま。あとでふいてやろう……。

「ううん、知らない」

 息子は素直に横に首を振る。

 私はフォークで赤ピーマンを一つ持ち上げると言った。

「赤ピーマンさんはね。実はすごく恥ずかしがりやさんなの。それでね、みんなに見られてる時は、まっかかになって照れてるんだよ。だから赤いの」

 息子は目をランランと輝かせて立ち上がる。

「そうなの!? じゃあ見られてないときは?」

 私はニコッと笑って言う。

「見られてないときはピーマンと同じで緑色。だから哲が食べた後は赤ピーマンさんは緑色になるんだよ」

 息子が赤ピーマンをジッと見つめる。

「じゃあ、本当は緑色なんだ」

「うん。哲は赤ピーマンが赤いから嫌いなんでしょ? 今のママのお話聞いても嫌い?」

 息子はブンブンと横に首を振る。

「ぼく、食べれる!」

 そして息子は私からフォークをとり、赤ピーマンを食べだした。

 どうやら作戦は成功らしい。

 私はこっそり心の中でガッツポーズをとる。

 さて、じゃあ、今のうちに洗い物でも……。

 席を立つ。

 すると後ろから息子が無邪気な声で、

「ママー、ぼくは赤ピーマンが緑色になるところはみれないの?」

 と言ってきたので、

「赤ピーマンさんは恥ずかしがりやだからね」

 と言っておいた。


 さて、息子が真実に気付くのはいつだろうか。


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