第09話
五郎さんじゃないが一歩一歩やっていくしかないな。
『まあまずはビャクとの釣りからだな』
風呂から上がり部屋へ帰る途中
『すいませーん、お風呂あがりました、ありがとうございました』
声をかけて少しすると、水をいれたコップを載せたお盆を持ったタエさんがやって来た。
『こちらをどうぞ、キショウ様が帰られてから晩御飯としますので休んでいてください』
『ありがとうございます』
水をうけとり部屋へ戻ってきた。
喉も乾いていたので一気に飲み干す。
『ふう~さて道具チェックしていくかね』
ボックスを全て開けて中身チェック。
入れておいたものは全てあったし海水も入っておらず問題なしだ。
次はロッドだ。
見た感じは何も問題なさそうだ、ロッド先なども問題なく曲げてみてもささくれなども見当たらない。
『あれーこの古いロッドとか使い込んでそれなりに小傷あったんだけどなーめっちゃ綺麗だ?』
不思議に思いつつも問題ないしまあいいかと思った。
最後に一番の大物でもあるリールだ。
流されて砂浜に到着したと思われるし、中に海水はまだしも砂とか入ってギヤやベアリング痛めたらアウトだ。
まずは手作業でバラしていき、ボックスから出した工具キットを使って全バラししていく。
安物と違い諭吉さん10枚以上するだけあって細かい所にパッキンが行き届いておりどうやら海水の侵入はなさそうだ。
『よしこれなら問題なさそうだ』
清掃用タオルにくるみ、清掃用クリーナースプレーで磨いていく。
2本セットで売っているメンテナンスオイル&グリーススプレーを各所にスプレーして仕上げだ。
組み上げてハンドルを回してみると、引っかかりもなくスムーズに回る。
『これならしばらくは釣り道具で困るようなことはないかな?』
と一息ついて片づけていると、トトトと小走り気味な足音が聞こえてくる。
トントンとノックの後ドアが開かれ
『ただいまー、お腹すいたしご飯にしようよはじめー』
『ああ、おかえり、ご馳走になるよ』
『じゃあ行こう!』
キショウについて食事処へ行く。
見えてきた食事は、ご飯、汁物、ステーキ、サラダ、漬物?みたいな感じだ。
『おーご飯があるのか・・・よかった』
『ふふふ、ご飯は日本人には欠かせないんだよね!』
『あーそれは日本人には必須なもんだな』
『さあ、温かいうちに頂こう』
お互い席に着き
『『いただきます』』
挨拶がハモった。
『その挨拶も五郎さんが?』
『ああ、そうだよ』
そして食事を食べ始めおどろいた。
ウマい・・・、これ日本のコメより上質じゃないか・・・?このステーキもすごい。
何度かお偉いさんに連れて行ってもらった鉄板焼きで食べた最高峰ブランド牛よりウマい。
俺がおどろいた顔を出していたのを見て
『フフフ、おいしいだろう。それは開祖がはじめた農業や畜産の長年の品種改良の中で生まれた最高の物なんだよ』
『500年の歴史ってやつか・・・すごいな、こんなウマいのは初めてだよ』
すごく嬉しそうなキショウ。
本場の人に認められたのが嬉しいそうだ、開祖もよろこんでいるだろうと。
食事を終え、食後のお茶を頂いているときにさきほど考えていたことを話してみることにした。
『さてキショウ、ちょっとこれからの事で話したいんだがいいかな』
キショウが頷いて話を聞く態勢になる。
『ちょっと変な話なんだが俺は五郎さんが日本にいた時代の約70年後の世界からやってきた。』
すぐにキショウがアレ?と思ったようだが話を続ける。
『すぐに分かったみたいだが時間が合わないんだ。日本からこちらへ来るときになにかズレが生じたのかもしれない。』
『まあそこは大事な部分じゃないんだ。70年分新しい時代から来たとはいえ俺がこちらに伝えられる知識はそんなにないかもしれない。』
『もちろん助けになるものがあれば提供するつもりだ。』
『俺は向こうで釣り活動をして釣りを広める活動をしてたんだ』
ふんふんとうなづいてるキショウ。
『そこですぐには無理だろうが俺はこちらの世界でもそういった活動をしたいなと思ってる』
『とりあえずは何か出来る仕事を見つけて落ち着いてからだと思うがね』
『うーん結構チャレンジなことだけどいいんじゃないかなー』
なにやらウンウンと頷いたりして思考に入ったみたいだ。
『よし私に任せておきなよ、ハジメはとりあえずゆっくりしてなよ、何か頼めることあればその時は頼むしさ』
といってニッコリ顔。
『何かありそうだがよろしく頼むよ、とりあえずはビャクと約束したし近いうちに一回釣りに行こうかなと思ってるよ』
『ビャクちゃんが興味示してるのかー、それならうまくいくかもね』
ニッシッシと笑い顔。
俺が思案してると
『まあ楽しみにしておいて頂戴よ』
とまたニッコリ顔。
これは話してくれそうにないなと思い話を終了。
おいしい夕飯と今後の展開話を終えるのであった。