第73話
グーー
漁船の事にのめり込んでいた俺たちはお腹の音で我に返る。
『げっもう3時間は話し込んでたのか・・・』
『熱中してしまいましたな、お茶を飲んで休憩しましょう』
ブラウンさんの合図でメイドさんがお茶と焼き菓子を運んできてくれた。
若返ったとはいえ中身おっさんの俺とブラウンさんのおっさん二人でお茶を飲みキャッキャと話をしていると
『えらく長く話し込んでると聞いたのですが何をそんなに話し込んでるのですか?』
俺たちにとっては予算の承諾権を握る難敵であるキシさんが現れた。
どうしたものかと俺が思っていると
『おーキシ殿、見て下され!これがはじめ殿の知識を元にデザインした漁船です!』
うあー、まさかの超剛球ストレートでいったー。
キシさんはこちらをジロっと見た後にブラウンさんがまとめていた資料を見て行く。
『ふー・・・・それで次はこの漁船を作るという事かね?』
『そうなのです!今までと違い小型の船にあたらしい技術を詰め込む、とてもやりがいがあるのです』
何か良いことを言った方がいいのだろうがここはブラウンさんの熱意にまかせておく。
キシさんはブラウンさんの演説を聞いた後にこちらをジーっと見ている。
『はじめ殿、先日の海産店以降もこちらに多数の問い合わせが来ています、経営的な事はあなたの手から離れ気味で気づいてないかもですが、魚の塩焼き定食を始めると売り上げが跳ね上がったそうです』
ん、これはどういう流れだ・・・とにかくだまって聞いている。
『その漁船によって新たな食材の確保などの可能性があれば、さらに売り上げは拡大していくでしょうし、未来に向けた投資として・・・・予算も出しますし製作許可しましょう』
おーーー!まだまだ船なんて先の事だとおもってたのにまさかの作製許可きたーーー!
ブラウンさんなんかうおーーって雄たけびあげて喜んでる。
『さきほどは問い合わせと言いましたが、陳情と言った方が正解かもしれません。もっと海産日を増やしてほしいや、第一都市だけではく第二、第三都市にもお店を開店してほしいなどとね、この良い勢いを利用しない手はないのでね、もっといろんなことを拡大していくべきだと先日王とはなしてた所なのですよ。』
『それに合わせて料理人や漁師となる人材の確保にも今動いてるところなのですよ』
知らない間に大事になってたんだなー。
しかし船が出来るとなるとあおものだったり底物だったり楽しみが一気に広がるな。
俺とブランさんでキシさんへお礼を言うとキシさん仕事へ戻って行った。
『では、はじめ殿、漁船の事をもっと詰めていきましょう』
こちらも魔道車同様、電源なしで使い放題の物などをいかに効率よく積むかを話し込む。
まずは基本として海原を駆ける為の強力な動力、楽をするために自動巻き付きイカリ、安全のためのライト類の3点は必須だ。
あとは大きめのスペースがあれば魔道道具を色々積み込めるだろう。
その後もあれが便利なのではとブラウンさんと話し込んだ結果、出来上がった僕の考えた最強の漁船はクルーザーというものに近くなってしまった。
しかしこれなら遠出もできるし、泊まりで出かけることも出来るなどとても便利ではあると考えられる出来だ。
『良いですな!これはとても作り甲斐がありますぞ!』
内心やり過ぎかもと思ってたが、ブラウンさんはやる気十分なのだから良しとしよう!
サイズも若干大きめだし出来上がったらこれで子供達を釣りに連れて行ってやりたいものだ。
後はブラウンさんにまかせて俺は子供達へカニ釣りの予定を伝え家に戻て来た。
仕事を終えてまったりしていたルカとサージャがいたので今日聞いた拡大話の事を聞いてみる。
『ええ、聞いていますよ、拡大に向けて料理人確保ができたら育成などやっていかなければなりませんしね。』
『そっかー、そうなるとここは君らに渡してこじんまりした所に移った方がいいのかな~?』
『んーここだと大人数でやるって感じじゃないですからねー、ここはこのままで他に大店舗とか作るんじゃないですかね?』
『そっちの方が便利ではあるかー、まさかこんなにいきなり繁盛するとはおもってなかったからなー』
しばらくは大丈夫だろが、いずれは移り住むことになるんだろなと思い考え込む俺だった。




