第51話
食事が始まったもののやはり抵抗があるのかエビには躊躇してしまうようだ。
一番ウマいクルマエビを二人にと思ってバナメイエビとウシエビを俺は食べることにした。
サクサク衣にプリプリな甘いエビ、マズいわけがなく俺は笑顔で食い進めていく。
ワタツミに与えてみるとよほど気に入ったのか前足を上げて俺の足をカリカリしてお代わりを要求してくる。
フフフ、うまかろうワタツミよ、たんとお喰いとお代わりを与えてやる。
そんな俺達を見てまず覚悟を決めたのはタエさんだ。
クルマエビの天ぷらを箸で摘まみ口へ運ぶ。
サクっと良い音を立て咀嚼をして飲み込む。
閉じていた目を見開きエビの天ぷらを凝視している。
これはどっちだ?嫌悪感が勝ったのか、おいしさがそれを上回ったのか?
と様子見してると、残っていたエビの天ぷらを微笑顔で食べ進めていく。
そして分けているバナメイエビとクマエビを皿へ取って行ってる、どうやら食べ比べするようだ。
ふふふ、タエさんもエビのおいしさをわかってくれたようだ。
そのタエさんの行動を見てそこまでおいしいの?と覚悟を決めエビ天ぷら食べるキショウ。
『うま、何これ、やばい』
と声をあげ食べ進める。
こちらもバナメイエビとクマエビの天ぷらを取り頬張って行く。
よしよし、これならこの世界でもエビは食べてさえもらえれば受け入れられるなと確信できた。
一度受け入れたのでもう大丈夫なのか、メインの食事を終えて小エビの塩ゆでを出してみると食べ方を聞いてきた。
頭部分をちぎりエビミソをチューチューし、殻を剥いて食べるのを見せると二人とも真似をする。
キショウはエビミソはそんなに好きじゃないようだが身のほうは無言で食べ進めている。
タエさんはエビミソを吸ってこれはお酒にあいそうですねと通な事を語っている。
受け入れられるかわかってなかったので少量しか塩ゆでしてなかった小エビはすぐになくなった。
最後はイシガニの塩ゆでだ。
甲羅をはずすとカニミソがギッシリと入っており、これにはよだれが出そうになる。
食べ応えがある足の付け根部分の殻を取り除いて二人に渡してやる。
二人はそれを頬張ると笑顔になり、エビとはまた違うカニの甘味を二人とも堪能しているようだ。
食べにくい体部分の身をほじくり出し一定量溜まったのでワタツミに出してやる。
キャウ~ンと嬉しそうに鳴きつつカニの身を食べ進めていく、尻尾をブンブンと振っている。
俺は甲羅にミソを集めそこへ身を解し混ぜたものを食べる。
くーこのウマさはたまらんね、と食べてるとミソにはまったタエさんが欲しそうにみてくるので分けてあげるとん~と悶えつつたべている。
キショウには食べ応えがある爪肉部の殻を包丁で割ったのを渡すと黙々と食べ始める
この世界でもカニは沈黙になるんだなとちょっと笑ってしまった。
全ての食事も終えたので感想を聞いてみる。
二人とも最初の見た目で戸惑ってしまったが、あの味を知ってしまうとそんなのどうでも良くなってしまったという。
お店では写真を使って材料説明をするつもりだから最初は忌避感があるお客が多いかもだが、その中でもチャレンジャーな人が出てくるだろうし食べればそのおいしさで受け入れられていくだろうとの事。
タエさんが手をそっとあげて質問してくる。
『こちらのエビというのは大量にとれたみたいですが、こちらのカニというのは捕れないのでしょうか?』
『定期的に捕るることは出来ると思いますが大量には今の所むずかしいでしょうね』
『今のところはですか?』
『ええ、種類は違いますが船でもっと遠洋に大きな罠を大量に沈めるとかやれば大量に採れる場所もあると思います、向こうの世界ではそれで大量に捕るカニ漁師って仕事がありますしね』
ふんふんとタエさんは頷いている。
『まあ、カニは捕れたらしばらくうちだけで消費しましょう』
俺の言葉にぱ~っと笑顔になるタエさん。
よほどカニミソをつけた身が気に入ったのかな?あのミソだけ瓶詰で売ってて酒のあてに買う人も多数いるぐらいだしな。
それからおれはエサを掘りキスを釣り、エビを罠で確保していくローテーションをしていた。
エビをバケツいっぱいに捕り家へ戻ってくると馬車がやって来ていた。
家の中へはいるとキシさんが来ており
『店舗の方が完成しましたので、明日内覧のお誘いに来ました』
あーついに出来たか、しばらくまったり出来てたがこれから忙しくなりそうだ。




