第36話
ジンさんの元へ行き何事かと聞いてみる。
苦笑いしつつどうぞお戻りくださいと通してくれる。
玄関を開け入るとビャクとフェンリル一家が座って待っていた。
『やっと帰ってきたのだ、おかえりなのだ』
なんだビャクが来てたのか、馬車はフェンリル一家も連れてきたからなのかな?
ワタツミは一家に混ざってヒャンヒャン言っている。
とりあえず買ってきた食材をしまう為台所へ向かおうとリビングに入ると、そこには王様、王妃様、キシュウさんがいた。
俺が何事?と固まってると
『おう、おかえり、何やらすごいのを仕留めたらしいな、報告を聞いて気になってな』
とガッハッハと笑っている。
えーそれで来ちゃったの?どこで聞いたんだろ?ナギさんから報告でもあったのかな?
まさか影で監視とかしてないよね?
なんかすごいフットワーク軽いな。
城をあけてきて大丈夫なんですかと聞くとキシさんにすべて押し付けてきたそうだ・・・。
キシさん・・・がんば・・・。
どういった物なのか興味津々なので先日頂いたデジカメで撮った写真を見せることにする。
まずはアジからだ、こちらが先日食べたアジフライの元の魚ですと言うとほうほうと頷いている。
ビャクは私も釣ったのだと自慢している。
次は甲イカだが、大丈夫かなーと写真を見せる。
これはまた珍妙なと言ってるが忌避感はなさそうなので安心した。
最後に巨大アオリイカの写真を見せると先ほどのと似てるなと感想を言われた。
何枚かの写真を見て行き、比較用?にワタツミと一緒に撮った写真をみるとギョっとしている。
『はじめ殿、これは・・・』
さすがに巨大アオリイカはインパクトがすごかったみたいだ。
元の世界にも同じ生き物がいることを説明し、おいしく食べれいろんな料理につかわれてますよと説明すると、そういったものなのかと納得してくれた。
『ふむ、では今夜も楽しみにしておるぞ』
と言うと王妃様と写真をみて色々語り始めた。
ん、どういうこと?と思ってるとキシュウさんが近寄ってきて
『その、新しい食材ということでビャク様が食べたいのだと言い、それに王達も便乗しまして・・・』
と苦笑いだ。
えーと・・・このままここで食事されて行くってことかな?と聞くと頷かれた。
じゃあ急いで準備を始めないとなと食堂へ向かう。
食堂ではタエさんが待っており手伝いをしてくれるとのこと。
ではアジの南蛮漬けを全てまかせようと説明する。
買ってきたタマネギ、ニンジン、ピーマンを長細目に切ってもらう。
切っておいたアジに片栗粉をまとわしてサっと揚げる。
あとはそれを酢につけるだけだ。
とりあえずそれを任せ、おわったらまた声をかけてくださいと俺は七輪を使う準備をしに行く。
火をおこし終え、お祭りの定番焼きイカを作ろうと台所へ戻る。
甲イカの身に木串を打ち込み砂糖醤油を作る。
その後にアジを焼くので塩をまぶして水抜きしておく。
イカを焼きに戻ろうとしてるとビャクがやって来て
『私も何かしたいのだ』
とお願いしてくるので一緒にイカ焼きを作ることにした。
すでに炭火は落ち着いてきており網もいい感じに焼けているようだ。
ビャクに熱いからやけどに注意して木串を持って載せてごらんと言うと言われた通りにやっている。
ジューーとイカの焼けるいい匂いがしてくる。
串を打ってるとはいえ焼けることでイカの身がウネウネと変形するのをビャクは真剣に見ている。
焼き過ぎると固くパサつくのでまずは両面を半生ぐらいまで焼いていく。
そこでビャクに砂糖醤油を渡しハケでぬってごらんと説明する。
今度は砂糖醤油の焼けるいい匂いがしてくる、まさに祭りのあの匂いだ。
『うー、すごく良い匂いなのだ』
とビャクも感じたようだ。
3度ほど塗りを繰り返してイカ焼き完成だ。
台所へ戻るとタエさんもちょうど南蛮漬けができあがったようだ。
次に頼みたいのはイカの天ぷらだ。
切り分けておいたアオリイカを出しそれを一口サイズの短冊切にしてもらい天ぷらにしてもらうよう頼んだ。
イカは身に含まれた水分で油が撥ねやすいのでそれだけ伝えておく。
俺とビャクはアジの塩焼きへと戻る。
ビャクがこのアジは自分が釣ったのかと聞いてきたので、それは昨日すべて食べちゃったから今日釣って来たんだよというとまた行きたいのだとお願いしてる。
『釣りとは違うけど、今日あたらしい道具を買ったからそれで海の生き物を今度取りに行こうな』
『うん、行くのだー!』
とピョンピョン飛び跳ねている。
アジを焼き終え戻ると天ぷらも出来たようなので料理を運んで行ってもらう。
その間に俺は最後の一品のイカの煮付けを作って行く。
鍋に少し油をひき、甲イカのゲソとアオリイカの身を入れて炒っていく。
こちらも火を入れ過ぎると固くなるので少し炒ったらイカ肝をいれかき混ぜる。
そこへ醤油、味醂、酒を1:1:1のなんにでも使える調味料を入れ一煮立たせせ完成だ。
さあ、夕食にしよう!
また評価頂きました。
ありがとうございます。




