第20話
七輪の火が落ち着いてきたので焼く準備にはいる。
火が落ち着くのを待ったのは、火が大きいと中まで火を通しているとパサパサになってしまうからだ。
牛など半生で行ける肉だと高火力で焼いた方がウマい場合もあるけどね。
水気が取れたアジに塩をまぶして網の上へ置く。
ジュ~と焼けるいい音と共に煙が昇って行きいい匂いを届けてくる。
腹回りを見るとすでに脂が浮いて来ており、割いた腹の中では脂が溜まって泡が出ている。
これはウマそうだ・・・。
脂のおかげで身がアミにくっ付くことなくひっくり返せる。
焼き目も綺麗についている。
位置を調整し初めに載せた魚たちを焼き上げた。
残りのアジを焼き始めたが、もう我慢出来ないと思い一匹摘まんでみることにした。
焼き加減にこだわったのもあり、身はシットリと焼きあがっており簡単にほぐすことが出来る。
『では、いただきます』
アジの身を口に入れる。
前処理をちゃんとした為臭みなどは一切ない、そして脂の甘さがハンパじゃない。
数度の咀嚼後飲み込む。
『うま・・・・これすごいな・・・ブランドアジとかでも敵わんウマさだわ』
人の手がまったく入らない海だから、間引いたりしなくても栄養やエサが豊富でこういった魚が育つのかなーと考えつつ一匹平らげた。
残りの魚を焼き終わり、使った炭も残りわずかまで消費していた。
とりあえず七輪の空気窓を閉め、出していた炭袋などを倉庫へ終い台所へ戻る。
『終わりましたか?こちらも準備出来ましたので夕食にしましょう』
『じゃあ俺がキショウを呼んできますね』
キショウの仕事部屋の位置を聞き呼びに行く。
部屋へ行きノック後に夕食だよーと呼ぶとガラっとドアを開け
『はーい、お腹すいたよー』
とニコっと笑っている。
キショウと揃って食事処へ行くと、キショウとタエさんの席にはご飯、お味噌汁、肉野菜炒め?、漬物が準備されており、俺の所にはそれ+焼き魚が置いてあった。
キショウが興味津々に焼き魚を見ている。
3人とも席へつくと
『では、いただこう』
とキショウの音頭のもと再度いただきますと挨拶をし食事を開始する。
タエさんの料理もウマいが今日の主役はやはり焼き魚だ。
焼き魚と白米のコンボは最高だ。
機嫌良く食を進めてる俺を見てキショウが訪ねてくる。
『すごく嬉しそうだけどそんなに美味しいの?』
『ああ、おれは肉より魚が好きだしなー、実はさっき焼いた後我慢できずに一匹食べたしな』
と笑いながら俺が答えると
『そんなにおいしいなら少し食べてみたいな・・・』
期待顔でこちらをジーっと見てくる。
んー、一応安全確認の為とビャクにも言った手前食べて一晩は様子見たいんだがなーと困って思案してると、キショウが顔前で手を合わせてお願いポーズをしてくる。
『そうなるとキショウ様はしつこいですよ・・・』
ボソっとタエさんが答える。
『だってあんなにおいしそうに食べてるんだよ!食べたい、食べたい!』
と駄々っ子状態で参ってしまう。
『さっき食べて時間も経ったし即効性のフグアイはないみたいだが・・』
と言うとキショウはパーーっと笑顔になる。
タエさんが仕方ないですねと言い、皿を一枚取ってきて
『すいません、はじめ様、少しでいいので分けてやってください』
と苦笑いだ。
皿と一緒に新しい箸を貰い、新しいアジの半身をほぐしてキショウに渡してやる。
興味もああるが恐怖もあるのだろう。
少しだけ箸にとり口に運び咀嚼すると、初めは驚き目を見開くがすぐに笑顔になり次々と食べていく。
キショウは無言のままだが皿をこちらへ出しキラキラ笑顔でおかわりを催促してくる。
残りの半身をほぐし渡してやると笑顔で食べ始めていくキショウを俺は微笑ましく見るのだった。




