第01話 プロローグ
なんでこうなったんだろうな・・・今日は最高の日になるはずだった。
若い時から釣り業界に関わってきて業績を認められた人に贈られる釣り竿。
これは釣り具会社Aが認められた人と共同開発してくれる匠シリーズと言われるものだ。
今までに贈られた人は片手で足りるぐらいの超レアものだ。
約半年の開発を得てついにそれを手に入れたのが2日前。
前もって天気予報を確認し、いつもお世話になってる船を予約してその竿をついに使う日が来た。
当日の夜明け前にもう一度天気を確認。
問題はなさそうだ。
港へ着き、船頭さんにご挨拶。
『今日もおねがいします。』
『おう、よろしくなー、もう準備できてるからいつでもいけるよー』
荷物を積み込み出発。
大海原を2時間かけて走り目的の島というか岸壁?に到着。
『じゃあ、晩の18時に迎えにくるからねー、もしなにかあれば携帯にでも連絡をー』
いつものやり取りを終え帰っていく船頭さん。
潮の流れなど見てとりあえずの位置を決めて準備を始める。
まずは撒き餌を作り撒いて魚を寄せてくる。
その間に竿の準備、匠シリーズをみるとどうしてもニヤニヤしてしまう。
海面にエサ取りとおもwれる魚がウヨウヨ寄ってきている。
竿の準備ができエサのオキアミをつけ一投目投入。
エサ取りの活性が高いため沈めきる前にすぐにアタックしてきた。
20cmくらいのグレだろうか?元気よく引っ張るが竿がうまく勢いを吸収してくれる。
表面に浮いてきたのはやはりグレ、タモをいれて回収。
メジャーで計ると記念すべき一匹目は22cmのグレだった。
私はキャッチ&イートなのでクーラーボックスへ収納。
その後もエサ取り魚を数匹釣りそろそろ大物でもと若干仕掛けを変更した時だった。
ウキがグンっと沈み合わせるととてつもない感触がきた。
リールがジーーーーっとドラグ音を響かせる。
これは青魚だ、それもかなりの大きさだ。
魚との格闘して10分ぐらいしてついに諦めたのか抵抗が少なくなり近くへ寄せてこれていた。
『よし、竿がめっちゃいい仕事してくれるわー』
と、気を抜いた時だった。
いきなり魚が暴れだし底へ潜っていく、そして岩へラインを擦り付けられラインブレイクしてしまった。
『まじかー、油断しすぎたわ・・・』
大物を逃がしてしまったのは残念だが、竿のポテンシャルを実感できたのが嬉しかった。
この時興奮してあまり周りを見ずに釣りを再開してしまったのが失敗の始まりだった。
自分がいる所の裏側から雨雲がきており空が真っ暗だったのだ。
気づいた時にはもう遅かった。
まずは大雨が降ってきた。
『ありゃ、雨降ってきた、まあ通り雨かなー』
ここで船頭に連絡する行動してれば何かかわったかもしれない。
そのまま釣りを続行していたら雨は威力を増し海水を巻き上げてくる。
風も強くなり危険な状態となってきた。
『これはあかん、帰ろう』
ついに船頭へ連絡をいれたが
『すまんが雨と風がすごくて船を出すのが危険な状態なんじゃ、落ち着くまでどうにもできん』
『わかりましたー、出れるようになったらお願いします』
冷静に連絡してたが内心はとんでもなく焦っていた。
いる場所が岸壁の為ゆっくり出来るようなところがないのだ。
どうにか雨風が納まる事を祈って我慢してたが強くなる一方、しかも運悪く潮が満潮な時間帯。
釣りのウェアを着ているとはいえ、容赦ない海風や雨によって体温が奪われていく。
『やばいな・・・寒すぎて体の感覚が消えてきた・・・・』
そこからさらに時間たったが天候はさらに悪化。
『だめだ・・・・ねむい・・・』
『あの竿でこれから色んな釣りしたかったなー・・・』
ここで意識が切れていった。
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ペチペチ、ペチペチ
『おい、にいちゃん』
ペチペチ、ペチペチ
『おーい』
何か聞こえてくる・・・。