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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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見守り隊のクリスマス③

12月24日は二学期の終業式の日であり、クリスマスイブでもある。


普段、放課後見守り隊の世話になっている小学生たちはいつも通り世話になっているお店に向かう。


さくらやにはいずみや双葉の他去年まで学童クラブで放課後を過ごしていた三年生の徳田加奈も居る。


三人はお腹が空いたけれどパーティーの始まる午後一時まで何も食べないで待っている様にと言われているので我慢して時間潰しをしていた。


『ごめんね。美味しい鶏肉とかケーキがあるからもう少し待っててね。』


いつもなら誰かがお腹空いたと言うとすぐにお菓子を出してくれた双葉の祖母の節子が今日だけは我慢を強いるが、三人も分かってくれている。


『一時だ!』


時計と睨めっこしていたいずみが時計を見て叫んだ。


三人は節子に連れられ隣のビルにあるパーティー会場に向かった。


会場はカーテンが閉められて少し暗い。


他の小学生も何人かはすでに席に着いていたが、異様な雰囲気だ。


さらに小学生が集まると、部屋の中の全ての電気が消え、部屋の端にあるスクリーンに映像が流れた。


『パレオだ!』


男子生徒が声を上げた。


流れてきた映像は地元近くを走る蒸気機関車が煙を吐いてゆっくりカーブを曲がりながら向かって来るシーンだ。


『……みなさん、銀河鉄道にようこそ。』


部屋の電気が付いて現れたのは黒いコートに身を包み、長い金髪ウィッグに黒いロシア帽を被った小さな女性である。


『メー○ルだ!』


男子小学生が叫んだ。


このみはかなり背は低いが昔ヒットしたアニメ作品のキャラクターと分かる姿で登場した。


『今日は銀河鉄道に乗って私がみなさんを宇宙の旅にご案内しま……鉄○う?……鉄○うは何処なの?』


恥ずかしそうに一人芝居をするこのみの前に赤いティーシャツを来た奈々が現れた。


『ちょっとアンタ、いつまでこんな事やるつもり?みんなドン引きしてるじゃない?』


『て……鉄○う……。』


奈々に怒られてもまだ芝居を続けようとしているこのみに客席は盛り上がった。


『鉄○うじゃないわよ!今日はクリスマスイブよ。パーティー始めるわよ。』


『わざわざこんな芝居やる為にあの帽子とか用意したの?』


席に座っていた雪菜が知香に尋ねる。


『双葉ちゃんのおばあちゃんが協力してくれたの。映像はうちのじいちゃん。SL好きだからさ。ま、でもウケたみたいじゃない?』


このみが恥ずかしいながらも演技をしっかりこなしたからだ。


奈々のツッこみも普段のままでタイミングが良い。


乾杯をして、出されたオードブルやお菓子をみんなで食べる。


飲み物やケーキも含めると普通なら一人あたり二千円は掛かるだろうが商店街の店主たちがみんなの為にサービスしてくれた。


『こうちゃん、良かったよ。』


席を離れ、このみを労う知香。


『なんか病み付きになりそうです。』


最初からコスプレと言うのもなんだが、このみも人前に出ても大丈夫だと知香は思った。


今はのぞみがゲームの司会をやっている。


『どう?みんな盛り上がってる?』


次のプレゼント交換の準備の為に裏でサンタ衣装に着替えていた知香たちの前に節子が様子を見に来た。


『はい、いろいろありがとうございます。』


『知香ちゃんはこういう衣装似合うねぇ。あの司会のメー○ルの子も知香ちゃんと一緒なの?』


このみも性同一性障害ではないかと聞いている。


最近は単なる女装好きな男の娘も結構認知されているから見た目だけだと分からない事もある。


『病院に行っている訳ではないのですがたぶんそうです。おかあさんは認めているけど複雑なお家なので今のところ中学校は男の子として通うみたいです。』


仮に性同一性障害だったとしても知香の様に簡単に今までとは違う性で学校に通うのは難しい。


知香の場合、やはり家庭や友人の後ろ楯があるのが強いのだ。


『うちとしては最初は男の子で途中から女の子になってくれると儲かるけどね。……あ、今のは聞かなかった事にしてね。』


節子はあくまで冗談だと言った。




平成最後の日、踏切待ちをしていたらパレオエクスプレスが来て思わず心の中で男子生徒の様に叫んでしまいました。

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