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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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見守り隊のクリスマス②

土曜日になり、商店街の空き部屋に知香たちは集まった。


『結構広いね。』


柱があるので多少使い勝手が悪いが、40人くらいは座れるスペースがある。


『柱はしょうがないね。人数はどれだけになる?』


見守り隊で普段預かるのは10人程だが、他に5〜6人の小学生が参加するらしい。


一方、中学生組はいつもの9人が全員揃う。


小学生組には六年生の康太も参加する事になり、準備の手伝いにも来ている。


『こうちゃんさ、みんなの前でこのみちゃんになってパーティーの司会してみない?』


突然知香が提案した。


『え~?』


康太本人のみならず、準備していたみんなが驚いた。


『ともち、それはまずくない?』


中学の文化祭では大胆なカミングアウトをして女の子として校内を歩いたが、小学校で知っているのは一緒に行動をしたいずみくらいしか居ない。


『全然平気なのともちくらいなもんだよ。』


『大丈夫。こういう場所で自信を付ければだんだん慣れるから。萌絵から服借りてるし。』


翌日には[このみ]として新幹線にも乗るのだ。


『でも司会なんて、僕出来るかな?』


『ちょっとハードル高くない?』


康太は尻込みし、みんなも否定的だ。


『このパーティーの主役は小学生だから、司会も小学生の方が良いと思うの。こうちゃんはただ一人の六年生だから、当然じゃない?』


『だからと言ってみんなの前でこのみちゃんになるなんて、ともちとは違うんだよ。』


ありさはそう言うが自分にはいつも人に大役を押し付けるくせにと知香は思う。


『頑張ってやってみる。』


康太の決意にみんながほうと声を上げた。


『じゃ進行表と台本作って置くから。今日中に仕上げて明日持って来るね。』


何だかんだ言われても、最後にはいつも知香が仕切る事になる。



翌日の日曜日、再びみんなが集まり知香は進行表をみんなに配った。


パーティーでは中学生も席には着くが、小学生を楽しませる為にそれぞれ役目が与えられている。


『ちょっと、何で私がサンタの格好するの?』


最初に雪菜が騒いだ。。


雪菜自身はコスプレとかは苦手なので逆手を取ってサンタ役を押し付けたのだ。


『良いでしょ?私もやるんだし。』


知香と、何かにつけいつも人に押し付けるありさもサンタ役だ。


『私もサンタなの?』


『頼みますよ、学級委員さん!』


サンタと言っても女性用でスカート姿だ。


もちろんセクシーなものでは無い。


他には美久が写真撮影、優里花が音響担当、奈々は康太のサポート、のぞみがゲーム司会、はずみがプレゼント交換司会と役割りが振られた。


『あのー、知香さん?』


康太が尋ねた。


『何、こうちゃん?』


『ホントにこれ、やるんですか?大体これってよく知らないし。』


『私もリアルタイムで見てないからよく分からないよ。でもこういうのはノリだから多少適当でも大丈夫。』


卒業パーティーで萌絵が知香と一緒に司会をして犠牲になったのはこの場に居る中学生全員が知っている。


『なんか思いっきりスベりそうな気がする。』


康太には嫌な予感しか無かった。



二学期最後の登校日となった。


今日はクリスマスイブでパーティー当日でもある。


『知香さん、みなさん、今日までありがとうございました。』


車イスに座った麗がお礼の言葉を発した。


『三学期は入試もありますし、みなさんとご一緒に登校させて戴くのは本日でおしまいにしたいと存じますの。』


『麗さん……。』


『みなさんのおかげでワタクシもクラスでお話相手が出来ましたしいろいろな事を教えて戴きましたわ。』


『そんな事……教えてもらったのは私たちの方ですから。』


知香は麗に反論するが麗はやんわり否定する。


『いえ、みなさんを見ていると本当に昔のワタクシは傲慢で我が儘でしたわ。今でも治りませんが。』


麗はくすりと笑う。


『特に知香さんの明るさと行動力には学ばなくてはならないと思いますわ。他の人と違う障害を持っているなんて微塵も感じませんもの。』


『私たちもともちのおかげで麗さんと仲良くなれたし、感謝しています。』


雪菜が入学して直ぐの当番で困らされた事を思い出しながら言った。


『保健委員の当番も三学期はなさらなくても大丈夫ですわ。後ほど浅井先生には申しておきます。一月からは中野さんが来て下さる事になっていますの。』


試験などで登校が飛び飛びになる事があるので保健委員にこれ以上迷惑を掛けない為だ。


『寂しいですね。でも受験頑張って下さい。』


自分たちも三年になれば受験はやって来る。


やっぱり春には麗の笑顔を見て自分たちも励みにしたいと思う。


『無事合格した暁にはみなさんを家にご招待しますわ。』


『楽しみに待っています!』


三年生に車いすを押す役目をバトンタッチして知香たちは麗と別れた。





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