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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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こうちゃんの女装➀

文化祭の二日目である。


昨日の夕方に深夜までやっている雑貨店に行って康太用のウィッグを買っておき、康太に着せる洋服と合わせて用意した。


康太にはなるべく早く生徒会室に来る様に伝えてある。


いつもの様に麗の車イスを押して行くが、昨日は知香自身が生まれて初めて車イスに乗って気分が違う。


小さな段差も極力ショックが無い様に気を付けている。


『いつも通りで構いませんわよ。』


麗には分かってしまった様だ。


学校に着くと、既に階段の下で麗のクラスメイトが待ち構えていた。


『おはよう、今井さん。』


『おはようございます。』


クラスメイトの中に千夏も居る。


『白杉さん、今日からここでバトンタッチするからね。今までありがとう。』


昨日言われた通り、階段から上は三年生が麗を連れて上がる事になった。



生徒会室で今日の予定を確認する。


知香は昨日ニ、三年生の教室を回ったので今日は一年生と各部活の見回りを担当する事になる。


午後一番に各階に置いてあるポストを回収し、アンケートの結果を集計して3時の表彰式に発表しなければならない。


その為見回りは午前中に終わらす事になるから個人の時間はほとんど無い。


康太に早めに来る様に伝えたのは朝一番で無いと見動きが取れないからである。


9時になり、一般の来場者が次々に学校に来ている。


知香がやきもきしていると、康太が母親を連れて生徒会室に現れた。


『はじめまして、上田康太の母です。』


康太はカミングアウトしてしまったのか?


『実は昨日、康太が大勢の人の前で白杉さんの様に女の子になりたいって言ったとか聞きまして、康太に糺してみたんです。』


知人が密告ったのだろう。


『そうしたら今日は白杉さんが服を貸してくれると言ったので失礼ながらお伺いした訳です。』


そこまで話したのなら仕方が無い。


『昨日、保健室の浅井先生と一緒に康太さんにお話を聞きました。康太さんの気持ちはまだ固まっていない様ですが、女の子になりたい思いはかなり強いみたいです。私も悩んで結論を出して両親に話をしましたから康太さんにはちゃんと結論が出るまで焦らない様に話をしました。』


『康太がそんな事を言ったのですか?』


『今お話した通りです。ただ、私の様になれとは言ってません。後悔しない様に自分で考える事を伝えました。』


康太の母は知香の言葉に若干安堵した。


『でも康太さんが結論を出した時は出来るだけ話を聞いて欲しいんです。私もそうですが、この先決して一人じゃ生きていけません。私も親や先生、友だちに支えて貰って初めて頑張れるんです。』


康太の母はしばらく黙って考えた。


『分かりました。康太が結論を出すまで待ちます。その時はどういう結論でも親として支えてあげたいと思います。』


とりあえず母は理解してくれた様だ。


話の途中、康太は知香の持ってきたブラウスとスカート、カーディガンを着て準備した。


『まぁ!』


母は息子の女装姿を見て驚いた。


『とりあえず私は生徒会の仕事で見回りに行かなくてはならないんですが、康太さんも一緒に連れて行って宜しいでしょうか。』


『白杉さんにお任せします。中学一年生でそんなにしっかりされているのに驚きました。これからも康太の相談相手になって下さい。』


康太の母からお墨付きを貰った。


『じゃ、こうちゃん、行こっか。』


『ちょっと恥ずかしい。友だちに会ったらどうしょう?知香さん、初めて女の子の服着て外出た時どうだったんですか?』


『お正月の初詣だったけど、全然平気だったよ。クラスの子とその妹に会ったけど。』


知香は以前から男の姿の方が恥ずかしいと思っている。


廊下を歩くと何人もの知らない生徒から声を掛けられ、笑顔で応える知香。


『知香さん凄いですね。』


『え?何が。』


『だってみんなから声を掛けられたり手を振られたりされてますよ。』


『この腕章のおかげじゃない?』


知香はこういう時だけ鈍感になるが康太は直ぐに見抜いた。


(いろいろな意味で凄い人だ。)


『A組は昨日行ったから良いよね。』


と素通りするが、見つからない訳が無い。


『チカ、少しくらい教室寄んなよ。』


のぞみから声を掛けられた。


今日は妹のいずみも来ている。


『お、昨日の六年生だね。チカの妹みたい。』


『チカねぇの男の妹?』


表現がいずみらしくて面白い。


『ほら、さっき初詣で会ったって言った姉妹。大森のぞみさんといずみちゃん。』


『六年の上田です。ぼくも青小だよ。』


『こうちゃんって呼んであげて。いずみちゃんは四年生。どっちが友だちたくさん出来るか競ってるの。』


知香がお互いを紹介する。


『チカねぇの妹なら友だちじゃ無いよね。青小だからいずみの友だちだよ!』


いずみはまた可愛い屁理屈で友だちを増やした。


『お姉ちゃん、チカねぇとこうちゃんと一緒に行って良い?』


『チカはお仕事で回ってるから迷惑だよ。』


『のぞみん、一人も二人も変わらないし大丈夫だよ。ありちゃんより迷惑じゃないし。』


『ともち〜、聞こえてるよ。』


扉の脇からありさが見ている。


『聞こえる様に言ったんだもん。』


まだ昨日の恨みは忘れない。


『じゃこうちゃん、いずみちゃん、行こうか。』


知香は二人を連れてB組に向かった。



こうちゃんといずみちゃん、可愛い妹たちです。

令和が始まりました。もう一つの作品と一緒に宜しくお願いします。

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