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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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文化祭前日

文化祭を前日に控え、クラスも部活も生徒会もみんな慌ただしい。


生徒会で新旧役員が一緒に仕事をするのは唯一の行事で、文化祭が終わると三年生は引退して受験に備える。


生徒会の出し物は毎年決まっていて生徒会室を休憩所に開放して生徒会の仕事をパネルで紹介するのだ。


『毎年同じパネルを使うだけだから壊れてなければそのまま壁に掛けるだけよ。後はお茶とお菓子を準備すればお終い。私たちの仕事のメインは見回りだから。』


前日も各部、各教室を回って行き過ぎた展示が無いか等チェックをする。


知香はひな子に付いて回っている。


『知香さんのクラスの展示は知香さんの発案の様みたいね。』


知香のクラスである一年A組の前を通り掛かった。


教室の扉の上に『着せ替え変身館』と書かれたボードがすでに飾られていた。


『はい。おかしいでしょうか?』


新聞作りで厳しい指導をされた知香はダメ出しされる不安で恐る恐る返事をした。


『いえ、知香さんらしいなって。』


ひな子は笑って答えた。


『こんなの誰も考えないわ。知香さんってホント面白い。』


教室を覗くとあらかた準備は終わっていた。


『お、生徒会副会長と書記のお出ましだ。』


『どう?知香の構想通りでしょ?』


教室前方の窓側に撮影スタジオのスペースがあり、後ろには男女別の更衣室が設けられている。


『衣装も各サイズ揃っているからね。大きな男子に女装したいって言われてもある程度は応じられるよ。』


こんな大きいの誰のだろうかと思うくらいの服もあった。


『写真は俺がやるから安心して良いよ。』


知香と同じ大崎がスタジオ班のリーダーだ。


『え?何これ!』


知香が廊下側に目をやると、大きな写真が二枚貼られている。


二枚とも知香の写真で一枚は最近のもの、もう一枚は小学生の[知之]時代のものだった。


『ビフォーアフターってどういう事?私聞いてないよ!』


『男の子の知香さんも可愛い。』


怒る知香の隣で笑顔を見せるひな子。


『ごめんな。水尾に言われて……。』


大崎が白状した。


黒幕はありさらしい。


『だって、ともちみたいな中学生、他に居ないんだよ。この変身館だってともちの発案なんだし、本人を活用しない訳にはいかないよ。』


ありさの弁明に納得は出来なかったがクラスの総意と言われて折れた。


『良いんじゃないかな?知香さん、クラスのみんなから慕われているんだね。』


知香は照れた。


『写真の横にトランスジェンダーに付いて解説文をホワイトボードに書くんだけどともち、最後にチェックしてよ。』


ありさは全く反省が無い。


『分かったよ、後で下書き見せて。みんな、帰る時はちゃんと後片付けして下さいね。廊下に出しっ放しにしていたら減点になるから。』


知香は最後に生徒会の立場で伝達した。


文化祭では生徒と来場者全員にアンケートを渡し、加点方式で表彰があるが、規定に反していたりすると減点対象にもなる。


『しのぶさんには私からも言っておくから知香さんはなるべくクラスに居て良いわよ。』


教室を出るとひな子が言った。


『それは出来ないです。私も生徒会の仕事を覚えないといけないし、一番下っ端だからやらせて下さい。』


クラスの展示に関してはもう知香の手を離れていると思っている。


ありさがこれ以上暴走しないか心配だが、みんなに任せておけば問題は無い。


『それじゃみんな交代で自由に出来る時間があるから、クラスのみんなと相談して上手くやってね。』


やっぱりひな子は仕事には厳しいが根は優しい先輩だった。



文化祭初日の朝になった。


麗に断って早めに登校するつもりだったが、麗もクラスでやるべき仕事があるから一緒に行こうと言われた。


『麗さんのクラスでは何をするんですか?』


『みなさんに障害者の体験をして貰いますの。車イスに乗って戴いたり目隠しをして杖だけで歩いて戴いたり。』


麗に冷たかったクラスでよくそういう企画が出せるものだと思った。


『最初はワタクシのけ者でしたのよ。でもクラスの全員が冷たい訳では無い事が分かりましたの。』


どうやら反麗派だった千夏が麗と仲良くなって同調する生徒がかなり声を上げたみたいだ。


『ワタクシも車イスの生活の実体験をお話するんですの。』


麗は今までクラスの行事には全く参加していなかったので知香は自分の事の様に喜んだ。


『頑張って下さい!後で麗さんの教室に行きますから。』


前日の見回りは分担制で知香とひな子は一年生の教室しか見ていなかったから三年生の出し物に付いては知らなかったので楽しみが増えた。


知香が教室に入ると装飾は完成していた。


『……また、何よこれ?』


壁に[トランスジェンダー白杉知香来室11時半から]と書かれている。


これでは客寄せパンダだ。


『ありさ〜!』


『みんな待っているんだよ。他のクラスからも問い合わせ多くてさ、こうもしないと収まりがつかなくて。』


在学生なら個人的に話す機会だってあるだろうが、噂を聞いた卒業生や保護者たちが知香の姿を見てみたいと後輩や子供に言って来るのだそうだ。


『分かったから、責任者さん上手く仕切ってよね。』


少し投げやりになった。


生徒会室に向かうと、久しぶりに小田が来ていた。


『知香さん、書記就任おめでとう。でも立候補したとか聞いてなかったから肝心な選挙の映像撮れなかったよ。』


知香はこうした結果になると思っていなかったので小田には報告していなかったのだ。


『今日明日はその分たくさん撮るから覚悟してね。』


知香の頭の中はカオス状態になった。


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