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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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選挙の行方

金曜日、最後の候補者が校内放送に出演して千夏からインタビューを受けていたが、同じ書記候補でありながら知香はその放送を聴く事は無かった。


この二週間、やれる事はやり尽くして相手の事を考える余裕は残っていないのだ。


『いよいよ投票だね。』


『もう疲れた。選挙なんてもう出ない。』


給食が終わって久しぶりに萌絵と二人の時間だったが、知香には珍しく愚痴ばかりだった。


『そんな事ばかり言ったら票入れないよ。』


『良いよ。執行部に入ったら萌絵と会う時間少なくなるから。』


萌絵は真剣に知香以外の候補者に入れようか考えているみたいだ。



投票は午後の授業を一時中断してクラス毎に投票箱が置いてある生徒会室に行って選挙管理委員の立ち会いのもと投票をする。


一年から三年までの全クラスの投票が終わると開票作業が始まり夕方には終わり、結果が分かるのは月曜日の朝である。


『別に落選したってかまわないんだけど待っている間ってやだね〜。』


『ここまで頑張ったんだしそんなこと言わないでよ、ともちは絶対当選するよ。』


『そしたらありちゃん、学級委員お願いね。』


学級委員が執行部役員になった場合、兼務するか副学級委員が昇格すると矢沢から説明はされていた。


しかし、もともと副委員は学級委員の代行としての役目があるので兼務する事は過去ほとんど無い。


『えー、私じゃクラスまとまらないよ。』


『大丈夫だよ、私が居なくなる訳じゃ無いし今までだってしっかりやってたじゃん。』


ありさは無責任に推薦するくせに自分の事になるとからっきし弱気になる。



月曜日は久しぶりに麗の自宅に迎えに行く。


『麗さん、おはようございます。』


『おはようございます、知香さん。二週間が長かったですわ。』


『そうだよ、ともち。麗さんてば知香さん知香さんって毎日言ってたよ。』


『雪菜さん、そういう話は宜しいですわ。』


みんなで登校すると日常が戻った感じだ。



学校に着くと、掲示板に人だかりが出来ていた。


『執行部役員の発表ですわ。』


知香たちが近付くと、人だかりから拍手が上がった。


『新しい書記の白杉だ。』


『白杉さん、おめでとう。』


『知香さん、頑張ってね。』


祝福の声が届き、知香は自分の当選を知ったが生徒会の書記ってそんなに凄いのかと驚いてしまう。


掲示板に票数も記されていたが全校生徒317人中267票が知香に集まる圧勝であった。


会長はやはり過半数で児玉清和が当選し、問題の副会長には樋田ひな子が高野紀子を抑えてこちらも過半数を超えた。


『知香さん、良かったですわね。』


麗も祝福してくれた。


『ありがとうございます。皆さんのおかげです。』


いつもの様に職員室で昇降機の鍵を受け取り、麗のもとに戻って昇降機に乗せる。


いつもと違うのは誰彼とも無く声が掛かる事だ。


もともと知香はLGBTの生徒として校内でも知られていたが、話をした事もない見知らぬ生徒に声を掛けられる事は無かった。


ただ、生徒会役員となると学校の顔でもあるので勝手に身近な存在にされた気がする。


麗の教室に到着すると、いつもなら冷たい視線が返るだけだったはずが、知香に対して温かい声が返って来た。


『白杉さん、おはよう。それと、当選おめでとう。』


千夏が知香のもとに寄ってきた。


『ありがとうございます。』


『じゃ、ここから麗は私が連れて行くから。いつもありがとうね。』


『え?』


驚いたのは麗だった。


今まで、クラスメイトの誰もが近寄りもしなかったのに、突然麗と呼ばれ車イスを押してくれるのだ。


『何キツネに抓まれた様な顔してんのよ。麗、白杉さんと仲良いんでしょ?この前白杉さんに話聞いて少し麗の事分かったの。今までごめんね。』


知香の友だちに悪い人は居ないと千夏は思ってくれたみたいだが見ていた知香は内心喜んだ。


(これでクラスの他の人たちとも分かり合えたら良いな。)


一年A組の教室に着いて、また祝福の嵐だ。


『おめでとう、ともち。』


『来年は生徒会長だな!』


確かに同じ一年生の紀子が副会長になれなかった為、知香が次の生徒会長に一番近い位置という事は火を見るよりも明らかである。


『そんな事考えて無いから。樋田先輩だって会長じゃないし。』


現書記のひな子も会長では無く自ら副会長に立候補したのだ。


どちらかと言えばひな子同様先頭に立つタイプで無いと自任している知香の頭の中には次期会長の線は無い。


自分が副会長に立候補したとすると、紀子も立候補して会長になって自分が副会長だったらかなり面倒くさいとは思う。


『ごめん、考えたくない!』


ちょっと先を読みすぎてしまったが、副会長になれなかった紀子はどうしているだろう?


『なんか人が変わったみたい。今まで凄く明るかったのに声も掛け辛くって。』


紀子と同じⅭ組のはずみに聞くとそんな答えが返ってきた。


『チカが悪い訳じゃないし気にする事は無いよ。』


そうは思うけれど、面倒くさい事にならない事を願うだけである。



放課後、知香は生徒会室に出向いた。


『白杉さん、一年間宜しくね。』


まずは書記の仕事を覚えなくてはいけないが現書記のひな子がそのまま居てくれるのは助かる。


『私の方こそ、何も分からないので宜しくお願いします。』


現執行部と新執行部の引き継ぎは基本的に文化祭までの一週間で

行なう事になっていて、新会長の児玉も書記の知香も今は何も分からないからひな子の存在は大きい。


『一緒に頑張りましょう。』


そんなひな子のありきたりの言葉が知香には心強く思った。

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