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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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生徒会選挙③

ひな子の翌日・金曜日の校内放送は紀子がゲストである。


昼休みの後は生徒総会が行なわれ、総会の後半で立候補者全員が体育館の壇上で演説をする事になっいる。


『一年生でいきなり副会長に立候補されたのはどうしてですか?』


MCの千夏が紀子に尋ねる。


知香も給食を食べながら耳はスピーカーに集中していた。


『私は今の執行部は少し甘いと思っています。例えばですが三年生に車イスの先輩が居ますよね。』


いきなり何を言い出すかと思ったら、麗の話が出た。


『見ていますと一部の一年生に世話役を押し付けて先生や同じクラスの人たちは見て見ぬ振りをしている様に思えます。』


麗の介護は押し付けられた訳じゃ無く、知香たちが好きでやっているだけである。


麗はどうやら出汁に使われている様だ。


『私はこの学校の生徒一人ひとりが平等に楽しく通える様にしていきたいと思っています。』


『そうですか……。』


(あれ?インタビューしている山田さん、不機嫌になったみたい。)


たぶんほとんどの人は気付かないと思うがほんの少し千夏の声のトーンが低くなった気がした。


(山田さんって麗さんを嫌っている人の一人かもしれないな。)


それより紀子はそんな事言って大丈夫だろうか?。


(逆に三年生の反発を喰らいそう。気を付けた方が良いかも。)



昼休みが終わると、生徒たちは全員体育館に向かった。


『これから生徒総会を行ないます。』


生徒総会の後半に新執行部候補者全員の演説がある。


昼の放送とは違って書記、副会長、会長候補の順で演説をする事になっていて、知香は一番最初に壇上に立つ予定だ。


前の日にありさと高木を混じえて演説内容の作戦会議を行なっていたが、果たして上手く行くだろうか?


知香は他の候補者と一緒に壇の奥に座り、深呼吸しながらその時を待っていた。


『それでは新年度の生徒会執行部役員候補者による選挙演説を行ないます。書記候補、一年A組白杉知香さん!』


『はい。』


呼ばれて知香は壇の中央に立った。


壇の下には全校生徒が知香に注目している。


(ふぇ〜。落ち着け、落ち着け。)


マイクの前でもう一度深呼吸をして口を開いた。


『書記候補の一年A組、白杉知香です。』


名前を言った後、一旦目を閉じて直ぐに開いた。


『私はこの学校、市立三中が大好きです。』


作戦会議で最初の言葉を決めていた。


『私は去年青葉台小で不登校になった事があり、三中に入学するまで非常に不安でした。』


入学した頃にはほとんどその不安は解消されていたので多少盛っているが嘘は言っていない。


『皆さんご存知だと思いますが私は性同一性障害です。でも、先生方も先輩方も一年生のみんなも私を普通に受け入れて接して下さいました。そんな三中だから私は好きになり、大好きな先生や先輩、同級生たちと一緒に過ごせるこの一瞬一瞬を大切にしたいと思いました。』


あまり性同一性障害を前面に押し出し過ぎない様にさらっと流した。


生徒全員が分かりきっている事をあまり強調しない方が良いが全く言わないのも不自然だからだ。


『入学して半年でまだまだ分からない事もたくさんありますが先輩たちの想いを継いで次に入る後輩たちにもぜひ三中を好きになって欲しいと思います。その為に微力ながらお手伝いさせて戴ければ嬉しいです。どうぞ、宜しくお願い致します。』


演説が終わると大きな拍手を浴びた。


『なかなか良い演説でしたよ。当選したら一緒に頑張りましょう。』


席に付くと後ろから紀子が囁いた。


(私なんか自分の事でいっぱいいっぱいなのに、この人はずいぶん余裕あるな。もう当選した気でいるみたい。)


紀子はまるでひな子らは相手じゃないと決め付けている様だ。


紀子の演説は昼の放送と同じ様な内容で三年生にとっては聞いていてあまり良い印象は無い気がする。。


(仮に一緒にやるんならひな子先輩とやりたいんだけど。)


知香は副会長にはひな子に一票を投じる事に決めた。


全員の演説が終わったが、投開票は一週間後だし来週には昼の放送がある。


(気が抜けないな。早く終わって欲しい……。)



放課後、知香は写真部に顔を出した。


選挙が終わると直ぐに文化祭が待っているので展示する写真の選定をしなければならない。


『こんにちは。』


『お、書記候補。良い演説だったよ。出来れば写真部の事も触れてくれたら満点だったけど。』


部長の村山が言った。


『バカじゃない?ワザとらしい宣伝とかしたら誰も投票してくれないわよ。どのみち私は知香さんに入れるけどね。』


和田が冷静に言った。


『ありがとうございます。それで、文化祭の写真ですが。』


知香はお礼を言ってから話を本題に移した。


『松田先輩と加藤先輩を撮った時のを使いたいんですが、どうでしょう?』


あの時はライトも使って400枚近く撮ったし、知香自身これは!というものも結構あった。


『良いけれど、あまり際どい写真はダメだよ。』


村山が和田をちらっと見て言った。


副部長の和田は女性の裸体こそ最高の芸術だと言い張っているが中学の文化祭でそういう作品は展示出来ない。


『これとかは大丈夫ですか?』


知香は村山たちに階段の踊り場で撮った壁ドンの写真を見せた。


初々しい二人の表情に上手く窓の光が照らしている。


『うん、これは良いな。』


この写真をメインに数枚を出展する事になった。


『すみません、これから選挙もあるしクラスの準備もあるからなかなかお手伝い出来ないんですけど。』


『選挙が終わったら引き継ぎもしなきゃならないんでしょ?』


和田は知香が書記になるという前提で聞く。


知香が当選するのを全く疑っていない。


『そんな、まだ分からないですよ。』


『白杉さんなら今生徒会長に立候補しても当選するわよ。』


知香は苦笑いをしたが当惑で返す言葉が無かった。

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