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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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生徒会選挙①

『体育祭も無事成功しました。みなさん、ありがとうございました。』


生徒会の定例会で生徒会長の矢沢しのぶがお礼をする。


体育祭が終わり、翌月には今の三年生は引退して新しい生徒会役員選挙が行なわれるので直ぐに準備をしなければならない。


『選挙に関しては各クラスの選挙管理委員が行なうので基本的には生徒会は関わりません。』


不正を防止するためである。


『でも、ここに居る人たちは学級委員として生徒会の仕事を見て来ているみなさんの中から立候補する方が出てくれると助かります。』


あくまで立候補するだけだから当落は分からないし左右する事は出来ない。


しかし、知香たち学級委員が立候補して当選してくれた方が引き継ぎし易いという事だ。


『当選したら学級委員の方はどうするんですか?』


1年Ⅽ組の学級委員、高野紀子が手を挙げた。


『役員と兼務するか副委員が昇格するかをクラスで話し合って下さい。』


10月18日が選挙当日でその前の週の7日が告示となる。


基本的には一・二年生全員に被選挙権があるのでクラス全員が立候補しても構わないし一年生が会長になる事も可能である。


ただ、慣例で二年生が会長・副会長で一年生が書記というパターンがほとんどだ。


副会長も大体二年生が就く事が多いけれど一年生が副会長になった事もあるらしい。


二年生で現在書記を務めている樋田ひな子が会長に立候補すると思ったが必ずしもそうではない様だ。


『俺、会長に立候補しても良いですか?』


二年B組の学級委員である児玉清和が手を挙げた。


『私も児玉くんを会長に推薦して私は副会長に立候補します。』


樋田ひな子はあまり争いを好まない性格の様だ。


『あの、私も副会長に立候補したいのですが。』


高野紀子が手を挙げた。


ひな子自身が争いを好まなくても巻き込まれる事もある。


『構わないですよ。生徒会で同じ役職に二人候補者が出るのは好ましくありませんが強制は出来ないので。』


本音は争ってほしくは無いが本来自主性を重んじる生徒会の趣旨に反してしまう。


一方、生徒会を二分してまで紀子が副会長に立候補するのはひな子相手なら勝算ありと思ったのかもしれない。


今まで一年生で副会長に就いた場合、翌年例外無く生徒会長に就いているので紀子は一気に勝負に出たのだろう。


『書記に立候補する人は居ますか?』


そうなると本来一年生の定位置で翌年会長への足掛かりとなる役職の書記候補をどうするかである。


『高木くんやれば?』


知香は高木を推してみる。


『俺、字は下手だしあまり人望ねぇから良いよ。』


本人は自覚している様だ。


『白杉やれよ。お前、字上手いだろ?』


字が上手いくらいで翌年の生徒会長候補に祀り上げられてはたまらない。


『私は良いよ。字が上手ければ出来る仕事じゃ無いし。』


『ともちなら出来るよ。ネームバリューもあるし。』


ありさが高木に同調して知香に勧めるが確かに知香の事を知らない生徒はこの学校には居ない。


『これ以上目立ちたく無いよ。』


『あら、白杉さんって男の子とかLGBTとか関係無くて人を引き付ける力がある気がするんだけど。私も白杉さんの事好きよ。私からもお願いします。』


しのぶは初めて会った時にも知香に好意的なコメントをして貰ったけれどそこまで買ってくれているとは思わなかった。


『分かりました。会長にそこまで言われたら断るわけにはいきません。書記に立候補します。』


後には引けなくなってしまった。



会議が終わり、一年A組の3人は一緒に帰る。


『ありちゃん、書記になったら学級委員頼むからね。』


『げっ!ともち学級委員と兼任しちゃえば良いじゃん。』


ありさは知香を生徒会役員に推薦しておきながら自分の事は何も考えていない。


『もしかして、何でもかんでも私に丸投げしてない?』


『白杉は便利屋なんだよ。諦めろ。』


高木の言う便利屋は扱いやすいという意味なのだろうか。


『私、去年は引き篭もりの不登校だったのに。』


思い起こせば去年の二学期は学校に行く事も嫌になっていた。


夏休み明けの最初こそ登校していたが体育の授業がある日は休みがちになり、黒川とやり合った日以降は不登校となったがそれからまだ一年も経っていない。


『だからこそやる価値があるんじゃねぇか?』


高木の一言は知香に響いた。


『俺もお前の事はただの自分勝手なヤツだと思ったけど会長が言ってた様になんか人を引き付ける力がある気がするんだよな。』


『いっその事、会長か副会長に立候補すれば良かったんじゃない?』


ありさはいつも無責任な発言をする。


『やだよ、ただの目立ちたがり屋じゃん?』


本来は先頭に立つ性格では無い知香は自分の身を弁えている。


『でも高野ってそんな感じだよね。』


一年生でありながら副会長に立候補した紀子にありさは不快感を覚えている様だ。


『樋田さんって前に出るタイプじゃ無いけど良い人だよね。個人的には副会長には樋田さんになって欲しいって思うよ。』


ありさの言う通り、ひな子は生徒会にありながら自己主張をするようなタイプでは無い。


『ともちだって一緒にやるんだったら高野より樋田さんの方が良いでしょ?』


『まだ書記になった訳じゃ無いから!』


ありさの中ではもう知香は生徒会の役員になっている様である。


(なんでこうなるのかな?)


知香は成り行きで立候補する羽目になった事に疑問を持った。


『知香さ~ん!』


突然、後ろから知香を呼ぶ声が聞こえ、振り返ると紀子が追いかけて来た。


『一緒に帰ろうと思ったのに先に行ってしまうなんて冷たいんじゃない?』


こっちは一緒に帰るつもりは無いのにずいぶん勝手な言い草だ。


『私、知香さんが書記に立候補するって言ってくれて嬉しかった。一緒に頑張りましょう。』


(それって共闘って事?)


紀子が書記に立候補していれば知香は今まで通りだったのにひな子を押しのけて副会長に立候補したおかげで面倒な争いに巻き込まれてしまった。


知香は共闘する気はさらさら無い。


『でも私、樋田先輩にはお世話になっているし、表立って敵対なんて出来ないよ。』


『知香さんは今のままで良いの?』


(この人、何を言いたいのだろう?)


あまり関わりたくない人物であるとだけは分かった。






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