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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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体育祭②

お昼は母・由美子と一緒に作ったお弁当を食べる。


由美子も来ているが雪菜や萌絵の母は土日も仕事なので来ていない。


『へえー?ともちも作ったんだ。今日は玉子焼きだけじゃないんだ。』


雪菜が感心して知香の弁当を見る。


校外学習の時は玉子焼きを2パック分作ったのだ。


『あれからもっと練習したんだよ。ね、おかあさん。』


『雪菜ちゃん、知香は今煮物に挑戦しているのよ。いずれはスノーホワイトの隣にライバル店出すかもしれないから宜しくね。』


由美子の冗談が雪菜には冗談に聞こえない。


『良いなぁ。ウチなんかお店やっているのに冷凍ばっかだよ。これじゃあウチの将来は無いかも?』


お弁当を作ったのは料理人の父では無く母であるが雪菜が嘆いた。


『……ウチも、値引きシール貼った昨日の惣菜ばかり…。』


スーパーで働いている萌絵の母はどうしても帰りがけに出来合いの惣菜を買う事が多くなる。


知香は仕事で親が来れない雪菜と萌絵を呼んで一緒に弁当を食べようと思っただけなのだが二人とも結構気にしているという事が分かり反省する。


そんな時、麗が知香たちの輪に近付いて来た。


『皆さん、お疲れさまです。』


車イスを押しているのはリカルドだ。


『ユミコサン、トモカ、コンニチワ。』


『中野さんが作ってくれたお重なのですが皆さんに食べて戴ければと思いまして。』


さすがに豪華な料理が並んでいる。


リカルドの後ろからもう一人、男性が現れた。


『麗がお世話になって居ます。今井公造と申します。』


麗の父親でPTAの会長だ。


由美子が慌てて立ち上がり、お辞儀をした。


『あ、そのままで良いですよ。知香さんには本当にお世話になっております。』


立派な体格で如何にも政治家という雰囲気だがさほど偉ぶっていない。


『学校で麗が孤立しているのでどうしたものかと案じておりましたが知香さんや雪菜さん、萌絵さんたちに助けて戴きましてなんとお礼をしたらよいか……。』


『いえ、こちらこそ、娘は特殊なのに良くして戴いて。』


『特殊なのはウチの娘も一緒です。それにしてもびっくりしました。入学前に話は聞いていましたが知香さんはどこから見ても女の子にしか思えません。』


大人たちが話をしているうちに時間は過ぎていく。


『どうぞ、召し上がって下さい。』


中野さんが作ったお重を食べてみる。


『美味しい!』


『中野さんを引き抜けばきな子んちの店なんて目じゃないかも。』


『そうね。スカウトしちゃおうかしら?』


『ウチだって負けないから!』


知香母娘と雪菜の場外乱闘勃発である。


『もう集合時間ですわよ。』


麗の一声で休戦となった。


『A組の勝利の為に二人とも頑張って下さい。』


『……B組だって負けないから……』


萌絵が小さく呟いた。



午後は三年生の騎馬戦から始まり、二年生のダンスと続き、知香たちの応援合戦と最後の選抜リレーとなる。


騎馬戦は男子も女子もかなりの迫力である。


この時点でB組がトップ、A組とC組は20点差で並んでいる。


二年生のダンスの間に知香やありさは大きめの男子から借りた詰め襟学生服を着て、高木たち男子は金髪のウィッグにテニススカートを穿いた。


『高木、似合うぞ。』


『すね毛ちゃんと剃れよ!』


『白杉にレクチャーして貰え!』


クラスの男子カラー様々なヤジが飛んだ。


『うるせぇ!』


からかわれて反発する高木を尻目に


『まさか詰め襟着るとは思わなかった。』


知香は嘆いた。


『ともち、カッコいいよ。』


ありさが褒めるが知香自身はこの様な形であれ男子の制服には抵抗があった。


学級委員としてみんなを鼓舞しなければならないので仕方無く着ているのだ。


一年から三年のA組応援団が全員で輪を作り、中央で手を合わせる。


『行くよ!』


『おう!』


三年生の音頭に全員が応えて定位置に付き、手を後ろに組む。


『ふれー、ふれー、え、え、ぐ、み!』


男装の女子たちが大きな声で鼓舞し、女装の男子たちはボンボンを使って軽快に踊る。


『三三七拍子!』


知香が中央に立ち、日の丸が描かれた扇子を持って音頭を取った。


(みんな、もっと盛り上がれ!)


そのまま選抜リレーの最初の選手たちがスタートラインに立ち、号砲がなった。


応援団と一般の生徒の間をリレー選手たちが駆け抜けて行った。


選抜なのでみんな速く、白熱したレース展開となって応援も熱が入る。


抜きつ抜かれつを繰り返しアンカー勝負となり、テープを切ったのはA組の選手だった。


『やったー!』


見事、A組の逆転勝利だ。


知香とありさと高木で輪になって飛び上がって喜んだ。


『あ』


直ぐに我に返った三人は恥ずかしがった。


『全然役立たずじゃなかったな。悪かったよ。』


だいぶ高木も素直になってくれた様だった。


『ともち、お疲れ!』


『チカ、応援カッコ良かったよ!』


生徒たちの席に戻ると雪菜やのぞみたちから労われた。


『疲れた疲れた。こんなに身体動かしたの久しぶりだよ。』


『普段からちゃんと運動しないと太るよ。』


知香は明日から少し運動しようと思った。


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