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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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高木の想い②

『高木くん、凄いと思う。』


ひと通り高木の話を聞いて知香は感心した。


『でも反発しただけじゃ変わらないんじゃないかな?』


『オメェに分かるかよ?』


高木は知香に反論した。


『私だって自分の気持ち親に伝えるの凄く悩んだし。』


『オメェは親から自分の事否定された訳じゃねぇだろ?』


散々人の事否定しておいてとは思うがそれは口に出さない。


代わりに木田先生が聞いてくれた。


『高木くんはどうして白杉さんの事を嫌うのかな?』


『……俺は人でも動物でも命を救うのが医者だと思ってた。でもコイツみたいに健康なのがわざわざ自分の身体に傷付けて女になりたいとか言うのが許せねぇんだよ。』


正論だとは思う。


『そりゃ私も親から貰った身体に傷を付けるのはどうなのかなって考えたよ。でも、考えた答えだから。もし男の子のままだったら生きるのを止めたかもしれない。』


木田先生が知香の言葉を補足する。


『ねぇ高木くん、先生も小学校の時の男の子だった白杉さんって見てはいないんだけど今みたいに明るくなくて誰とも喋らなかったみたいなの。お医者さんって身体を治す事も当然だけど心の病気も治す事も出来るでしょ?LGBTの人たちも心の病気だとしたら白杉さんもお医者さんに行って救われた一人じゃないかしら?』


確かに心の病だと思う。


『私、いくら頑張っても元男の子っていう過去は消せないと分かってる。だから前を向く事しか出来ないの。手術して子供が作れる身体になるとかは無理だけどそれが自分の生きる為なら仕方無いと思ってる。だから変態とか言われても構わないよ。』


『……』


高木は何か言いたそうだが黙って聞いている。


『私は高木くんが夢に向かって頑張る人なら応援するよ。親の反対なんか蹴散らしちゃえって思ってる。』


知香は頬のガーゼを取った。


キズは全く無い。


『オメェ、騙したな?』


神妙な顔をしていた高木が我に返った。


『ちょっとした演出だよ。でも顔は止めてよね。』


『分かったよ。ホントに変な奴だな。』


高木は呆れた顔で知香を見た。


『良かった、変態から[態]が無くなったよ。』


木田先生も笑っている。


『良かったね、高木くん、白杉さん。あなたたちがクラスの代表なんだから体育祭も文化祭も協力して頑張ってね。』


『はい!』


二人は声を合わせた。



学校を出て、二人は途中まで一緒に帰る。


『手術の事なんだけどさ、前に二年生の先輩から同じ様な事言われたんだ。』


知香は加藤恵美に言われた話を思い出しながら言った。


『その人は男の子になりたい女子なんだけど親から貰った大切な身体を傷付けたくないって言ってた。』


『白杉はそれでも手術しなきゃいけないのか?』


オメェから白杉に昇格した様だ。


『うん。今の自分があるのは自分で考えて決断したからだと思うの。それが無かったら殻に閉じ籠ったままだったから。』


恵美は恵美、知香は知香の生き方がある。


『高木くんも親に反発してまで自分で決断したんでしょ?だから応援したいの。』


『分かったよ、俺も応援するから。』


『嬉しいな!……そうだ、裏口入学って犯罪だよね。』


知香はふと思い出した。


『そうだな。』


『もしさっきの話がホントだったら高木くん、おとうさんやそこの学校の犯罪を防いだって事になるよね。』


『あ……そういう事になるかな?』


『それって凄くない?』


当然本人にも降り掛かってくる問題である。


裏口入学がバレたりしたら将来の夢どころじゃなくなる。


『ま、そうかもな。』


『おとうさん助けたんだから今に分かってくれる筈だよ。』


『いや、あのオヤジの事だから別の悪い事でいつか捕まると思う。』


(自分の親の事をそこまで言うかな?もしかして、そんなに悪い事してるの?)


知香は高木家の中にこそ深い闇があるのではと思った。



体育祭までは二週間足らずなので、まだ暑い9月初めではあるが体育の授業はプールでは無く練習である。


『行くぞ〜、幼なじみ!』


『おう!』


一年生の団体種目である二人三脚は出席番号順と決められている。


男女や身長差は関係ないのでかなりアンバランスになるペアも少なくないが、おかげで知香は雪菜と組む事が出来た。


『おいちにっ、さんし……。』


運動は得意では無いがさすがに二人の息は合っていて結構早い。


『これなら他のクラスに負けないかもね。本番も頑張ろう!』


問題は1500メートル走だ。


各クラス4人づつの出場だが知香を含めて速そうな選手は居ない。


実際に走ってみたが、辛うじて完走というレベルだ。


『不人気種目だからなぁ。こいつは期待出来ないね。』


『でも他のクラスも同じかもしれないよ。』


そうであって欲しい。


とにかく、学級委員としてみんなの足を引っ張らない様にしなければならないと知香は思っていた。



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