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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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二人だけのお泊り会➀

8月11日、知香を残して父・博之と母・由美子は長野の実家に帰省した。


今回、知香は初めて一人で留守番する事になる。


『昼間でもしっかり鍵を閉めて誰か来ても不用意に出ないでね。』


しっかりしているといっても中学一年生の娘を一人留守番させるのは不安な由美子だったが『宿題が終わらない』『友だちを呼んで泊まって貰う』といろいろ説得されて折れた。


さすがに先週行ったばかりで続けて同じ場所に行くのが面倒という理由もある。


泊まる友だちとは萌絵の事だが由美子は病院で会ってはいるけれど萌絵の事はよく分からない。


母親の友子とは立ち話をして明朗なイメージがあったがその娘が無口で陰湿だとは思えないし、ましてや知香と萌絵が恋仲になっているとは知る由もないのだ。


『萌絵ちゃんね、おかあさんもスーパーのパートでお盆も休めない様だし向こうが良ければ良いんじゃない?』


二つ返事で許可を出してくれた。



知香は両親を見送ると萌絵の自宅に出向く。


萌絵の荷物が多いので一緒に運ぶのだ。


萌絵の自宅に着くと、もう母の友子はパートに出掛けた後だった。


『ずいぶん多いね。』


玄関に大きめのボストンバッグが4つ置いてあったが萌絵の家から知香の家までこれを運ぶのは容易でない。


普通に歩いても30分かかる萌絵の家から大汗を掻きながら40分掛けて自宅に戻ってきた。


『知香の服作ったの出来たから……。』


服飾部に入って4ヶ月、最初のうちは小物とかを作って練習していた様だがちゃんと洋服を仕立てられる様になっていたのである。


『すご~い。早速着ても良い?あ、その前にカメラ用意するから待ってて。』


萌絵が作った服はロリータでは無く夏向けのノースリーブのワンピースだった。


小さいキャラクターのドット柄で可愛い感じで、もう一着萌絵の分もあった。


『これ、今なら外出歩いてもちょうど良いよ。後で萌絵ちゃんのおかあさんのお店に買い物に行かない?』


『え~?恥ずかしいよ。』


『大丈夫だよ。おかあさん喜ぶと思うよ。』


萌絵は知香と二人だけだと積極的だが一歩人前に出ると途端に内気になる。


『どう、似合う?』


萌絵の前でポーズを取ってみる。


『萌絵も早く着なよ!』


萌絵も自分で作ったワンピースを着てみた。


『おお~、可愛い。』


と思いつつ知香と萌絵とでは何かが違う気がする。


萌絵の方が知香より少し背が低いがそんなに差があるわけでも無い。


(この違和感、なんだろ?)


知香は三脚に載せたカメラのセルフタイマーをセットして萌絵と並んだ。


『じゃ買い物行こっ。』


外に出るのを渋る萌絵の腕を強引に引っ張って連れ出していく。



8月の昼間の日差しは辛く、紫外線も強い。


『気持ちいい~。』


冷房の効いた店内は天国の様に感じる。


『今日の晩ごはんはハンバーグね。ひき肉と玉ねぎ買うついでだからお昼はミートソース作ってスパゲティにしよう。』


『え~?自分でミートソース作るの?』


母がスーパー勤めという事もあって萌絵の中ではスパゲティはレトルトのものを温める感覚しか無い。


好きなお菓子や飲み物も籠に入れてレジに持っていく。


『あ、おかあさん居るよ。』


どこのレジも列が出来ているが萌絵の母・友子のレジの後ろに並んだ。


『あら、来たの?知香ちゃん、今日明日は宜しくね。』


友子は話しながら手は次々に商品をスキャンしていく。


『これ萌絵が作った服よね?良く出来てるわ。姉妹みたい。』


ちょっと恥ずかしかったが悪い気はしない。



お昼を食べ終わり、少し休んでから勉強……のはずだったが、


『えー?何も持って来てないの?予習やろうって言ったのに。』


『ごめん、服いっぱい詰めたら入らなくって…。』


勉強嫌いな萌絵の優先順位は服なのである。


『ま、良いか。と言っても何しようか?外は暑いし、ウチの中でやる事と言っても……。』


『水着も持ってきたよ。』


友子が買ってくれた揃いの水着だ。


『でもプール行くわけじゃないし……。』


『写真撮ってくれないの?』


断ると面倒なのでそそくさと着替える。


外から見られると困るのでカーテンは閉めておいたがそう言う時に限って訪問客がインターフォンを鳴らす。


『出るの?』


『親は留守だと言っておけば大丈夫でしょ?』


知香はカーディガンを羽織りインターフォンに出た。


『こんにちは、麗ですわ。』


(麗さん?なんで?)


『リカルドさんが連れて来てくれたの。』


『トモカ、ゲンキデスカ?』


こんな格好で出るのはまずいが暑い中待たせる訳にも行かない。


『もし宜しければ美味しいお菓子を一緒にどうかと思いまして。先日、お盆はお一人でお留守番と聞いたものですから。』


『麗さんをお招きする様な広い家じゃないんですが…。バリアフリーじゃないし。』


『あら、ワタクシは大丈夫ですわ。リカルドさんも居りますし。』


仕方なく水着姿のままドアを開けた。


『あら、可愛い水着ですわね。』


車イスから知香を見上げて麗は言った。


『すみません、こんな格好で……。』


知香は居間に案内するが焦るあまり萌絵も同じく水着姿で待っているのを忘れていた。



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