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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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リカルドの秘密

祭りも終わりに近付き、花火大会の前はみんなでゴミ拾いというプログラムがある。


『ちゃんと自分たちで出したゴミは自分たちで片付けるって凄いじゃん。』


面倒な事もみんなでやると楽しくなる。


ゴミ拾いが終わるといよいよ花火大会だ。


スターマインや7号玉の打ち上げ花火が夜空を彩る。


『やっぱり大きい花火は迫力が違うねぇ〜。』


昨日の花火とは違う美しさを堪能し、祭りは終わった。


一日動き回ってみんな疲れてしまったのか部屋に帰ると余韻を楽しむ事も無く寝てしまった。



再び朝が来た。


あっと言う間の二泊で名残惜しい。


朝食を終えると佐知子の見送りを受けて、車に乗り込む。


『あれ?なんでリッキーが居るの?』


来る時には乗っていなかったリカルドが麗の隣りの席に座っている。


『コレカラウララサンノウチニゴアイサツイキマス。』


『は?』


リカルドと麗が良い感じなのは見て分かるが麗はまだ中学生だし出会ってたった3日で挨拶とは理解出来ない。


『面接だよ。』


ハンドルを握りながら上西さんが言った。


『旦那さまは常々自分の後継者を育てたいってお話されていてね。男の子が居ないから最初はお嬢さまにって言っていたんだけど。』


麗の父は市会議員で地元の名士だ。


『こんなザマですから申し訳ございませんわ。』


麗は自分が障害者となった事で後継者になれない事を悔やんでいる。


『結局は将来入り婿となるという前提なんだけど調べさせて貰ったらリカルドくんは正に条件ぴったりなんだよ。』


『リッキーってそんなに優秀なんですか?』


知香は祖父母の所に居付いた日本好きな旅行者としか思っていなかった。


『あれ?知香さん、SNSでもリカルドと繋がっている筈だけどプロフ見ていないのかい?』


慌ててスマホを出してSNSのリカルドのプロフィールを見てみるととある大学卒となっている。


『その大学ってさ、日本で言えば東大みたいなところなんだよね。』


まさか、リカルドがそんな経歴の持ち主だったとは。


『それに加えてお嬢さまに対する献身的な所も旦那さまに報告したら是非連れて来いという事なんだよ。』


つまり、麗の父が認めたら後継者として麗のフィアンセになるレールが引かれるという訳だ。


『でも、麗さんの意思は……』


麗の目を見ていると、聞くだけ野暮だと思った。


『昨日、みんなが寝た後に知香さんのおじいさんおばあさんも混じえて話し合ったんだ。』


祖父母はリカルドの日本での後見人の様なものだ。


『そしたらね、リカルドくんは日本に帰化して永住したいって言ってね。』


『ワタシ、ニホンダイスキデス。ニホンジンニナッテミンナノヤクニタチタイデス。』


『リッキー、私リッキーの事応援するから。』


知香を応援してくれたリカルドを今度は自分が応援したい。


『トモカノオウエンハイチバンチカラニナリマス。トモカガオウエンスルトミンナゲンキデス。』


麗が隣りで頷きながら二人の仲も応援して欲しいという目をしている。


でも、手放しで麗を応援する訳にはいかない。


知香は、リカルドだけでは埋められない心の闇を消さなければ麗を満たす事が出来ないと思っている。


(バスケに未練は無いのかな?)


車イスバスケットボールに関しては知香も聞いた事があるがやってみたいとは思わないのだろうか?


明るい未来が見え始めた麗だけに下手にへそを曲げられる訳にもいかないし、とりあえずは知識を付けなければ力にもなれないだろう。


それよりもリカルドだ。


そんな経歴があってYOUは何しに日本へ来たのだろう?


『……ねぇ……』


萌絵が呼んでいる。


『何回呼んでも返事してくれない。』


今回は二人きりの時間が無く知香も慌ただしかったから萌絵はあまり面白く無かったかもしれない。


『ごめんね、ちょっと考え事していた。』


別に萌絵の膨れ顔が見たくて無視している訳では無いけれど、怒った顔が可愛いのだ。


『せっかく頑張って宿題やったのになんか面白く無い。』


(別にサービスしなきゃダメかな?)


『萌絵はお盆どうするの?』


本来はお盆休みに長野に行く事が多かった知香だが、お盆の前に来てしまったので今夏は親に付いて行かず家に居るつもりだ。


『おかあさんスーパー休めないから家に居るけど。』


『じゃ、ウチに泊まりに来ない?おとうさんたち長野に行って誰も居なくなるから。』


萌絵と二人きりだと危ない気もするが、半分は期待してしまう。


『うん、帰ったらおかあさんに聞いてみる。』


『でも勉強もやろうね。』


萌絵の顔が一瞬曇った。



途中で軽井沢に寄ってお土産を買ったりしたので帰りは夕方になった。


『リッキーは一週間くらい居るの?』


『シバラクテストデス。オセワニナリマス。』


『お嬢さまの顔を見たら旦那さまも合格って言うだろうね。』


上西さんが太鼓判を押した。


『上西さんと中野さんの話もしなければなりませんわね。』


『お嬢さま、それはもう少し後でも……。』


『善は急げですわ。』


麗はこれからは受験勉強で忙しいしリカルドも大事な一週間になるだろう。


しかし、上西さんたちも含めて今井家の未来は明るいようだ。



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