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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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田舎の夏休み③

花火が終わり、浴衣姿のまま部屋に戻ってきた。


大部屋なので麗を除いて全員が一緒だ。


『なんかさ、修学旅行みたいだね。』


ありさが言った。


『私、こうしてみんなと一緒に寝るの初めて。』


知香は女の子同士で寝るのも初めてだが去年[知之]も修学旅行には参加していない。


『チカは何処からみても女の子だから修学旅行も大丈夫だよ。』


小学校で行けなかった修学旅行だが中学では行ってみたい。


でもみんな同じ部屋でも大丈夫か心配ではある。


『麗さんも同じ部屋で寝られたら良かったのにな。』


三年生の麗はクラスメイトに対して心を開けないので修学旅行には参加していなかった。。


『恋バナでもしようか?』


優里花が口火を切ったがさっきはずみに見せ付けられたばかりである。


それもあるけれどさすがに萌絵も居る所で萌絵との仲をバラす訳にもいかない。


雪菜を見るとニヤニヤしている。


でも雪菜は好きな男子とか居るのだろうか?


気になるけれど聞くと墓穴を掘る事になるから無理だ。


『怖い話の方が良いんじゃない?』


本が好きなのぞみが別の話題を提供してくれたが


『怖い話、やだ〜!』


直ぐ妹に却下された。



翌朝、起きると浴衣がはだけている。


他のみんなはまだ起きていない様なのできっちり直してトイレに向かう。


みんなは女の子と認めてくれると言っても身体はまだ男のままだ。


団体行動の時、こういう所は気を抜いてはいけないと改めて気を引き締める。


『おはよう、早いね。』


『おはよう。』


次に目が覚めたのは優里花だった。


やはり浴衣がはだけていて、少し胸が覗いている。


(だいぶ大きいんだな。)


普通の男の子なら興奮してしまうかもしれないが知香はアンチアンドロゲンの影響でその様な感情も身体の変化も無い。


仕方が無いとはいえ自分の胸とどうしても比較してしまうのだ。


Tシャツとショートパンツというラフな格好に着替えて朝ごはんの支度をしている佐知子のところに行く。


『おばあちゃん、おはよう。手伝うよ。』


『おはよう。そこにあるの持って行ってくれる?』


昨日牧場や農家で仕入れた卵や輪切りになったトマトなどが皿に盛ってあるのでそれを食卓に運ぶ。


たまに民宿に外国からの家族連れが来る程度なのでこれだけの人数の朝食を用意するのは久しぶりらしい。


一郎は自宅に帰ったが祖父母とリカルド、知香たちを合わせると14人も居るのだ。


焼けたアジの干物をテーブルに運んでいるうちに他のみんなもやって来る。


『良い匂い。』


焼けた魚とみそ汁の香りが混じりあっていかにも日本の朝食らしい。


『いただきます。』


全員が席に着いて食べ始める。


『ワタクシは朝はいつも洋食ですのよ。』


知香は普段このような和食の朝ごはんを食べる麗の姿を想像出来ない。


『ウチもパンだね。』


のぞみが続いて言うが最近は朝はパンの家庭の方が多い。


『いずみ、トマト美味しいよ。』


『輪切りのトマトを一口食べたのぞみがいずみに勧める。』


『いずみがトマト嫌いなの知ってるくせに。お姉ちゃん嫌い!』


いずみはトマトが苦手らしい。


『でもここのトマト、本当に美味しいからちょっとだけ食べてごらん。』


夏に実家を訪れる度にここのトマトを食べている知香は一年中スーパーで売っているものとは全然違う事を知っている。


『チカねぇが言うならちょっとだけ…。』


『なんで私はダメでチカなら良いのよ?』


怒るのぞみをよそにいずみがトマトを恐る恐る一切れ食べてみる。


『美味しい!』


不安げな顔が一転して美味しい笑顔になった。


『でしょ?』


知香とのぞみが声を揃える。


『このような朝食も良いですわね。』


麗も中野さんが撮り分けてくれたトマトを一口食べる。


『いずみさん、美味しいですわ。』


『でしょ?』


いずみが知香とのぞみを真似して言ったので食卓はみな大笑いをした。



食事が終わるとちょうど一郎がやって来た。


一郎もはずみもちょっとよそよそしい。

 

『今日はお猿さん見に行くよ。お猿さんが温泉に入ってるんだ。』


俊之がいずみに説明し、知香も補足する。


『地獄谷って言うんだよ。』


『地獄でお猿さんが温泉?』


楽しい様な怖い様な複雑な顔でいずみは話を聞いている。


『チカねぇは行った事あるの?』


『うん、二回行ったよ。お猿さん、可愛いけど目を合わせると襲われちゃうから気を付けようね。』


『うん。』


昨日の一行に祖母の佐知子とリカルドも加わったので車の中はかなり狭い。


猿が温泉に入る事で世界的にも有名な地獄谷野猿公苑は湯田中渋温泉郷にあり、俊之の民宿からは車で一時間程で着く。


駐車場は温泉郷のひとつ、上林温泉にあるが、ここからは未舗装の道を30分程歩かなくてはならず車イスも使えない。


『ワタクシたちはここでお待ちしておりますわ。』


麗は中野さん、上西さんと共に待っていると言ったが


『ワタシガオブッテイキマス。』


リカルドが言った。


『かなり歩くよ、大丈夫なの?』


リカルドが怪力なのは分かるがさすがに往復一時間は無理だろうと知香は心配する。


『ダイジョウブデス。コレヲツカイマス。』


リカルドがアルミで作られた背負子を車から出した。


『タマニコレヲショッテヤマノウエマデヒトヲハコブアルバイトシテマス。』


(何処でそんなアルバイトを探して来るんだろう?)


知香はリカルドをますます不思議な男だと感じた。



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