表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
65/304

田舎の夏休み②

日暮れ時と言っても8月始めはかなり明るい。


炭火を起こし、薪をくべて鉄板を温める。


たらいに水を張って氷を入れ、ジュースや大人の為のビールもたくさん入れた。


『おじいちゃん、ずいぶん頑張ったね。』


知香が俊之に話し掛けると


『そりゃともが友だちを連れて来るなんて初めてだからな。しかもこんなにいっぱいだし、頑張らない訳は無いだろう。』


祖父の心遣いに感謝である。


充分に鉄板が熱くなってきたので油を挽いて肉野菜を投入する。


『じゃ、乾杯しよ!』


『乾杯!』


大人たちはビールを、子供たちはジュースを持って乾杯した。


鉄板の上の肉がじゅうじゅう音を立てながら焼き上がっていく。


『おおーっ。』


優里花は臨戦態勢だ。


中野さんはまず麗の分の肉野菜を取って車イスに座っている麗の前に差し出す。


『自分で食べられますわ。』


『熱いので気を付けて下さい。』


お嬢さまだからバーベキューとかは食べる機会など無いと思って聞いている。


『麗さん、バーベキューとかはやりますか?』


『まだこんな身体になる前にセブやプーケットで食しましたわ。』


レベルが違うみたいだ。


いずみの分はのぞみが取り分けている。


知香は萌絵と隣り合わせである。


『どう、美味しい?』


『……うん、でも……あんまり知香とお話出来ない。』


これだけ人が居るので仕方が無い。


それでも知香と萌絵の仲を知っている雪菜と麗は気を遣ってくれているのだ。


『この機会にみんなとも話が出来る様になれば良いけどね。』


萌絵は小さく頷いた。


はずみは雪菜とありさに挟まれた形で食べている。


一郎は焼けた肉をトングでみんなに取り分けてその都度新しい肉を焼いている為忙しそうだ。


『いっちゃん自分の分ちゃんと食べてる?みんなそんなに食べられないよ。』


一生懸命サービスをしているが周りはみんな女の子だ。


そんなに取り分けられても困る。


ただ、はずみからの視線を反らす為に焼肉奉行に没頭している様にも見える。


(不器用な所、可愛いなぁ。)


密かに知香は一郎とはずみが上手くいって欲しいと願った。



食事が済み、みんなで片付けを済ますと佐知子がみんなを手招きした。


『これから花火でしょ?みんな着替えて。』


通された部屋にはいくつもの浴衣が用意されている。


リカルドが麗を抱いて中野さんと一緒に来た。


『二人の浴衣もあるから着替えて。あ、リッキー、後で呼ぶから早く出て行って!』


リカルドが部屋を追い出され、佐知子と中野さんが二人掛かりで麗を着付ける。


『ワタクシまで宜しいのですか?』


『何言ってるの?ここまで来たのに。みんな一緒じゃなきゃ。』

 

佐知子は籐のイスに座らせられた麗の帯を締め、胸のところで結ぶ。


『浴衣なんだから前で結ぶのもありでしょ?少し可愛くアレンジしたけど。』


これなら車イスに座っても邪魔にならない。


『ありがとうございます。』


麗は心から感謝した。


『ほら、中野さんも。』


『え?私もですか?』


『当たり前でしょ?上西さんに見せてあげなさい。』


(え?中野さんと上西さん?単に仕事仲間という訳じゃ?)


中野さんが急に顔が赤くなったので図星の様だった。


家に来て僅かな時間で分かるとはなんという祖母だ。


女子全員が浴衣に着替え終わり、再びリカルドが呼ばれた。


リカルドも男用の浴衣を着ていて、部屋に入るとそのまま麗を抱き上げた。


『ウララサン、ウツクシイデス。』


麗は抱かれたまま顔を赤くした。


女性が全員浴衣姿で外に出ると、男性陣も全員浴衣を着て待っている。


『はずみん、目がハートだよ。』


雪菜が知香に言った。


はずみに目をやると浴衣姿の一郎を見るはずみがメロメロ状態の様だ。


花火が始まり、それぞれが好きな花火を取って火を着ける。


花火の合間に知香は写真を撮りまくった。


『ほら、いっちゃん。こっち来て。』


一郎とはずみのツーショット写真も撮った。


二人ともがちがちに固まっていて面白い。


『ねぇ、なんか二人お似合いじゃない?』


わざと雪菜に振ってみる。


『そうだねぇ、二人付き合っちゃえば?』


雪菜の返事は棒読みでわざとらしい。


『え?』


お互いの顔を向いて驚く一郎とはずみ。


『ば、ばか言うなよ。』


一郎の顔は真っ赤だ。


『……あ、あの……、バカな事ですか?』


はずみも真っ赤な顔で言った。


『私……じゃダメでしょうか……?』


遂にはずみが行動に移した。


『……い、いや……、だ、ダメじゃない……けど……。』


急に女子から告白されて焦る一郎。


『……ごめん、まだ今日初めて会ったばかりだし、まだ君の事良く分からないから。』


そりゃそうだ。


朝に初めて会って一日一緒に居るとは言え早計過ぎる。


それにはずみは一郎と[知之]を重ね合わせているだけかもしれない。


『メールとかからでも良いんじゃない。どうせ、いっちゃん好きな子居ないんでしょ?』


差し出がましいとは思ったが知香は間に割って入った。


『……それで、良いかな?』


一郎の返事にはずみは黙って頷いた。


どのみち遠距離恋愛になるのだろうしこれで良かったと思う。


下手に焦って失敗したら知香自身が二人に気まずくなる。


『じゃ、特大の一発上げよ!』


最後に残った一番大きな打ち上げ花火にリカルドが火を着け花火が舞い上がる。


その時一郎とはずみがしっかり手を握っているのを知香は見逃さなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ