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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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はずみの気持ち

俊之が運転する車の中は当然の如く一郎が話題の中心になっている。


『[いちか]も可愛いよね。ともかに負けてないよ。』


『だから俺は違うって!』


優里花は男子を茶化すのが得意だった。


『でもこうして見るとホントともちにそっくりよね。』


雪菜も助手席から振り返りながら話す。


『どうせなら[いちか]と[ともか]で売り出しちゃえば?』


優里花は止まらない。


『漫才?でもさ、はずみんたち、知香をチカって呼んでるじゃん、いちかとチカじゃ紛らわしくない?』


ありさが先程から黙っているはずみに聞いた。


『……そうだね。』


一郎の隣に座っているはずみの様子がいつもと少し違う。


口数が少ないしいつも冷静なはずみの筈がどうも落ち着きが無い。


後ろの優里花とありさにはその表情は分からなかったが、雪菜ははずみを見てなんとなく察した。


雪菜ははずみと知香の家で久しぶりに会った時の事を思い出してみた。


確かに、はずみは知香と同じ班だったから通知表などを届ける理由があった訳だがその後ずっと変わらないスタンスで知香と接している。


もしかしたらはずみは[知之]を密かに好いていたのかもしれない。


[知之]が女の子になりたいと言った瞬間にその恋が終わったとして、目の前の一郎に知之を重ね合わせていても不思議では無い。


今は知香と同じ女性の格好をしている一郎だけど一郎本人は男なのだ。


知香となって失った男としての[知之]の部分をを一郎に感じているのなら、はずみが一郎を好きになるのも理解出来る。


雪菜は小さい頃から知之/知香とは唯一無二の親友であり、近すぎて恋愛感情が生まれないもどかしさがあるけれどだからこそ周囲のそんな感情を感じ取れるのかもしれない。


『はずみん、せっかく隣に居るんだからさ、優里花ばっかりに喋らせないでなんか一郎くんに言ってあげたら?この車の中では6年の時ともちと同じ学校で同じクラスだったのはずみんだけなんだから。』


一郎とみんなの共通の話題は知香だけである。


『ともは、あんなによく喋って行動的なのか?』


逆に一郎からはずみに聞いてみた。


『ううん、男の子の時は誰とも喋らなかったし友だちも居なかったよ。学校行かなくなってチカんちに行ってチカが女の子になりたいって言ってから急にお喋りになったの。』


『長野に来て一緒に遊んでいてもいつも俺に付いて来るだけだったしな。』


昔の一郎と[知之]を想像してみる。


同じ顔の二人がどんな事をしていたのだろう。


『雪菜ちゃん、悪いけどともに次のサービスエリアで休むからって電話してくれないかい?』


俊之が助手席の雪菜に指示を出して電話を掛ける。


『もしもし、そっちはどう?……次のサービスエリアに寄るって。……じゃあね。』


立ち寄ったのは横川のサービスエリアである。


『う~ん。』


背伸びをする知香。


『私、麗さんと一緒に多目的トイレ使うから。』


『お任せして良いのですか?』


本来は中野さんの仕事である。


『いつも学校でやっていますから大丈夫です。それに今日はもう一人居るし。』


知香は一郎の顔を見た。


『え?俺?』


『いっちゃん、その格好で男の子用使う気?それとも女子トイレに入る?』


一郎は自分が女装している事に気付いた。


『三人一緒に入っても広いし、麗さんもいっちゃんなら大丈夫だって。』


周りの目を気にしながら車イスを押して歩く一郎。


『一郎くんの事、気になる?』


女子トイレに一緒に並んでいた雪菜がはずみに囁いた。


『え?何の事?』


はずみは明らかに動揺している。


『はずみんの慌てる姿って滅多に見られないから貴重だよね。』


『もう、きな子は……。』


『一目惚れかぁ。遠距離だけど、良いんじゃない?とりあえずメルアド交換でもしてみれば?』


『分かっちゃうかなぁ?』


『バレバレだよ。全然いつものはずみんじゃないもん。』


雪菜は指摘する。



みんなで揃ってフードコートで昼ごはんを食べる。


お嬢さまはフードコートで食事などした事は無いだろうが、普通の中学生はレストランよりも親しみがある。


『自販機で自分の食べたいものを買って番号を呼ばれたら取りに行くんだよ。』


知香はある意味カルチャーショックの麗に説明をした。


もっとも車イスでは無理があるので中野さんが全てやってくれる。


『はずみん、元気無いみたいだけどどうしたの?』


トイレから戻ったはずみの様子がおかしい。


『実はね……。』


雪菜が知香に耳打ちする。


『え~?ちょ、はずみん、そうなの?』


『きな子、なにチカに言ってんの?』


はずみが雪菜に怒る。


ほんの少し前に話したのに直ぐバラされては信用出来ない。


『ともちには言わなきゃダメでしょ?ともちなら二人の間に入れる存在だから活用しなきゃ。』


『私って便利屋なの?』


そうは言ったが親友と従兄弟の仲を取り持つ事は良いと思う。


『なんであんなのに一目惚れするかなぁ?』


知香は従兄弟故にそう言うが、雪菜は知香と一郎が似ているのが問題だと思った。











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