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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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水着と宿題

一学年の終業式の日を迎えた。


高校受験の麗にとっては殆ど勉強漬けとなっている。


『息抜きが出来るのは知香さんのご実家に行く三日間だけですわ。』


ケガをしてから友人と呼べる人が学校内に居なかった麗の為に、その三日間だけは許可を貰ったそうだ。


『おじいちゃんに話をしたら、バリアフリーじゃないけどイタリアから来た男の人が抱いて運ぶから良かったら麗さんも泊まって欲しいって。』


リカルドの事だ。


『宜しいのですか?』


『逆にウチみたいな古民家に泊まって貰うなんて恥ずかしいです。』


お嬢様が泊まるほど綺麗な建物では無い。


『そんな事ございませんわ。ワタクシ、知香さんには感謝していますの。知香さんがいらっしゃらなければ友だちが居ないままこの学校を卒業してしまう所でしたから。もし一緒に泊めて戴けるのならこんなに嬉しい事はございません。』


車イスを押しながら知香は返答する。


『私は何もしてません。みんな麗さんの気持ちを分からないだけなんです。』


雪菜たちも頷いている。


『麗さんは何処の高校を受験するんですか?』


『さいたま曙高校ですわ。』


知香の問いにさり気なく答える麗。


『そこって偏差値70以上ですよね……?』


雪菜が驚いて聞いてみる。


一緒に歩いているみんなも同じ顔をして麗に注目した。


『今年三中で受験するのはワタクシだけでしょうね。知っている人が居ないのは都合が良いと思いますの。』


『思いますのって、それだけの学力があるから受けられるんですよね。凄いなぁ。』


麗は普段自宅に家庭教師を招いて勉強をしている。


『私はまず受け入れてくれる学校を探さなきゃ。』


知香たちの受験はまだ先であるが、知香には学力以前に問題があるので不安がっている。



中学で初めての通知表を貰った。


五教科は4〜5が並び、苦手な音楽などは3だった。


保健体育も実技だけでは厳しいと思っていたがかろうじて3をキープした。


(こんなものだよね。)


苦笑いしながら納得をして席に戻った。


雪菜は数学の方が得意な様で5だったがその分国語は3だったりバラついている。


『きな子らしいなぁ。』



問題は萌絵だった。


目を覆う程酷い。


『夏休み、一緒に勉強しよっか?』


『……そんな…。』


夏休みになっても週半分は萌絵と会うだろう。


宿題もあるし少しでも学力向上に役立てればと知香は考える。


『差し当たって長野に行く前に出来る宿題は終わらせよ!』


萌絵はげんなりしている。


長野に行くのは来月の2日から4日の予定なので7月いっぱいで宿題をやり終えなければいけない。


『先にやった方が楽だよ。』


『……うん、分かった。』


雪菜にも一緒に勉強しようと誘ったけれど、


『二人だけの楽しみを奪っちゃダメだからね。』


と変に遠慮された。



翌日から勉強三昧である。


朝から萌絵の自宅に向かうと萌絵の母・友子が出迎えてくれた。


普段スーパーのパートをしているが、今日は休みらしい。


『おはようございます。』


『おはよう知香ちゃん、一緒に勉強なんて悪いわね。』


『良いんです、私も宿題早めに終わらせたいし。』


一石二鳥という事である。


『また一緒に服着てみせてね。』


萌絵はロリータ服の写真を友子に見せた様だ。


もっとも、萌絵がロリータファッションを好きになったのは友子が原因である。


萌絵が玄関に下りてきて部屋に通された。


『今日は数学からね。』


最初のページを捲ると難しいけれど解けない問題では無い。


問題を進めていくと、萌絵が隣に寄ってくる。


『ここ、どうやるのかな?』


萌絵は最初の問題から躓いている。


『これはね……。』


教えているうちに萌絵が知香との距離を縮めてくる。


頬同士が時折くっついて息も荒くなる。


(やりづらい……。)


これは萌絵の分をこなすだけで精一杯だ。


最悪自分の分は自宅に帰ってからやるしか無い。


とりあえず知香は萌絵に一問づつ教えていった。


『ふぅ〜っ。』


ひと息つくと友子が飲み物を持って来てくれた。


『暑いから少し休みなさい。』


優しい母である。


接客の仕事をしている事もあって萌絵とは違って明るい感じだ。


『知香ちゃん、いつもごめんなさいね。』


『大丈夫です。私も男の子だった時萌絵ちゃんみたいにあまりお喋り出来る友だち居なかったから。』


思い返せばインフルエンザで病院に行った時に萌絵と初めて会話をして友子とも会っていた。


その時はもう女の子だったのに待合室で[白杉知之]と呼ばれて注目を浴びたのである。


『それにしても相変わらず可愛いわね。初めて会った時はびっくりしちゃった。』


病院ではマスクをしていたからはっきり顔は分かって無いとは思うが、その後も何度か会って話はしている。


『今、テレビの撮影やっているんですって?』


萌絵は自ら顔出しNGと言ったけれど話はしているみたいだ。


『引っ込み思案だからごめんなさいね、私だったら即OKするんだけど。』


友子は笑いながら言った。


なるほど、やっぱり母娘でも性格は違うものだ。



なんとか午前中いっぱい掛かって一日の目標まで到達し、お昼は萌絵の家でごちそうになった。


『知香ちゃん、勉強教えて貰ったお礼って言ったらなんだけど。』


(なんだろう?)


『萌絵から水着の話を聞いてね、こういうワンピースなら大事なところ隠せると思って。萌絵とお揃いなんだけど。』


なるほど、下がひらひらのスカート状になっている。


『でもこれ、戴けるんですか?プールにも行けないのに。』


『海に行くチャンスはあるでしょ?後、また一緒に写真撮って見せて欲しいの。』


萌絵に可愛い服を買っていたのは萌絵の性格を変えるだけでは無くそれを見て自分が楽しむ為でもあったのだ。


『ありがとうございます。後で写真撮って萌絵ちゃんに渡します。』


結局水着は着る事になった。

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