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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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[チェンジ] 撮影会

その晩、知香は小田に電話をした。


『知香さん、あなた面白い事考えるわね。良かったらそのシーンも撮影したいから日にちが決まったら連絡くれるかな?』


小田もその気になった。


『もし、本格的にやるのなら、メイクもちゃんとやるべきよね。そのへんはどうかな?』


知香は多少必要とは思っていたが学校内だし、難しいと考えていた。


『良いよ、学校の方は私が許可貰ってあげる。メイクも知り合いでプロの卵が居るから声を掛けてみる。』


どんどん本格的になってきた。



最初はただ制服を入れ替えるくらいでしかなかったのに事が大きくなってしまった為、放課後の短い時間では無理と判断して撮影は土曜日に行なう事となった。


土曜日なら一部の部活の生徒以外は学校に居ないので撮影に支障がない。


モデルは2年生の松田弘樹と加藤恵美、撮影は知香であるが、写真部に話をしたところ副部長の和田加奈が乗り気で手伝ってくれることとなり、部の備品である照明機材を持ち出してきた。


顧問の森田先生と保健室の浅井先生が監督し、美久もレフ板を持って手伝ってくれる。


午前九時過ぎに小田とメイクアップアーティストの卵という中川杏奈を合わせて9人が学校に集合した。


『お忙しいところ今日は申し訳ございません。宜しくお願いします。』


まず浅井先生が挨拶をした。


誰のためにという訳ではなく、其々の思惑が集まった結果こんな企画となり集まってきたのである。


それなのでみんな初対面だったり顔は見た事はあるが初めて話をする人が多い。


『すみません、今日は宜しく。』


[モデル]の松田が恵美に挨拶した。


『宜しく。』


二人は隣のクラスではあるが会話などした事は無い。


そんな二人がそれぞれの制服を貸し借りする訳である。


メインの撮影場所は恵美のクラスである2年B組、準備は松田のC組の教室が使われた。


まず、冬のセーラー服を着た松田が中川杏奈の前に座った。


まずは化粧水を肌に当てられにきび顔が引き締まる。


『弘樹くんはちゃんとケアしたらもっと可愛くなるよ。』


ファンデーションを塗られ、ニキビが消える。


シャドウとアイラインで目元がぱっちりし、チークで輪郭を際立たせる。


あくまで中学生という事でリップは自然色に近いものにしてウィッグを被ると可愛い女子中学生が鏡の向こうに現れた。


『これが自分……?』


弘樹は陶酔している。


『自分もやるんですか?』


恵美は素顔で撮影するものだと思い込んでいた様だがもともと可愛い顔付きなので凛々しい感じの男装メイクにすると杏奈に言われた。


ベースはつやを抑え、チークは控えめ、アイラインを切れ長にすると今どきのイケメン男子の感じに仕上がった。


『どうかな?』


杏奈の問いに鏡を見た恵美は無言で頷いた。


『卒業式こうすれば良かったんじゃない?』


美久は知香に呟いた。


小学校の卒業式、知香は男子として参列したがその時はもうかなり無理があったのを美久は思い出した。


撮影はまず教室で一人づつ勉強をしたりいろいろな仕草をしてもらった。


森田先生や加奈に指導を受けながら、知香はアングルを変え表情に指示を出していく。


後ろでは知香が撮影をしているところを小田が撮影している。


次は二人一緒のシーンだ。


ノートを見せ合ったり、寝ているところを起こしたりという場面を設定してみた。



一度夏服に着替えてもらい、別のパターンで撮影をこなした後は教室を出て階段の踊り場に行ってみる。


窓からは夏の日差しが入るため光の調節が難しいけれど森田先生からの指導で良い感じに撮れている様だ。


『壁ドン、お願いします。』


松田が壁を背にして恵美が両手を壁に付けてみる。


(萌絵とだったらどっちがドンする方かな?)


知香は自分が壁ドンをした時を想像してみながらファインダーを覗くと、良い雰囲気だ。


(この二人、くっついちゃったら面白いかも?)


ファインダーの中のお互いを見る目はまんざらでも無さそうに思える。


さらに屋上、中庭と撮影場所を移して様々なシーンを撮影して、昼頃に撮影は終了した。


松田と恵美がメイクを落とし、撤収まで一時間近く掛ったのでみんなお腹が空いている。


『みなさん、今日は忙しいところありがとうございました。この後スノーホワイトでお昼の予約をしていますので、打ち上げをしたいと思います。』


突然知香が雪菜のところに行くと言い出した。


焦ったのは森田先生と浅井先生だ。


なんの前触れも無く中学生に金を出させる訳にはいかないし教師の給料でこれだけの人数を賄うのは辛い。


『ここのお食事は作品の制作費で落としますからご心配しないで下さい。』


どうも小田の方で手配していた様だったので二人はほっと顔を見合わせる。



一行がスノーホワイトにやって来ると雪菜がお店の制服を着て手伝っていた。


『あら?志田さん!』


保健委員で馴染みの浅井先生が最初に声を上げた。


『ここが志田さんの家のお店なんですね。制服似合っているよ。今日はお世話になります。』


すでに撮影で一緒になっている小田も挨拶をした。


『もう、みんなが来るって話をしたら土曜日で忙しいんだから手伝えって事になっちゃったんだから!』


『でもみんなきな子の制服姿褒めてるんだから許してよ。』


美久が冷やかしとも取れる慰めを言う。


『ともち、何枚くらい写真撮ったの?』


『400枚近いかな?下手な鉄砲何とやらで……。』


デジタルとはいえ午前中の短時間で撮るのはなかなか大変だと森田先生は言う。


そのうちどれだけ納得出来る写真があるかが問題だ。


席に着いてカメラの液晶画面を見ながら知香たちが批評し合っていると、向かいで隣り合わせに座った松田と恵美が二人だけの世界を作っている様だった。


たぶん、これからは二人プライベートで制服を交換し合う仲になるだろうと知香は思った。

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