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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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お悩み相談 松田弘樹の場合

校外学習から帰ってから知香と麗の仲は更に強固になっていた。


『麗先輩、おはようございます。』


『おはようございます。先輩は嫌ですわ。』


『では麗さん、おはようございます。』


麗のダメ出しがあって知香は言い直した。


『……おはようございます。…』


『おはようございます、萌絵さん。知香さんと仲良くされて居ますか?』


萌絵も麗に挨拶をすると冷やかしが返ってくる。



学校に着くと、それまでは職員がしていた階段の昇降機の操作を知香が任される様になっていた。


下駄箱で上履きに履き替えるとそれまで知香が押していた車イスを萌絵に任せ、知香は職員室に向かい昇降機の鍵を借りに行き、階段に先回りし昇降機の鍵を開けて待つ。


麗の教室前で別れ、知香たちは職員室で鍵を返し自分のクラスに向かうのが日課となった。


口さがない麗のクラスメイトたちは知香と麗の関係をあざ笑うが、麗も知香も平然としている。



放課後になり、知香は保健室に寄った。


『今井さんを手懐けるなんてホントあなた凄いわね。』


浅井先生が感心している。


『先生、手懐けるって麗さん犬じゃないですよ。』


知香が笑う。


『ごめんごめん。そうそう、今日は松田くん来るからね。』


(松田?誰だっけ。)


と思っているうちに保健室の扉をノックする音が聞こえた。


浅井先生が返事をするとにきび顔の男子生徒が入って来た。


背は高くないが知香よりは高く、150センチくらいある。


(女装をしてみたい二年生?)


前に浅井先生が見せてくれたファイルは萌絵以外名前は教えて貰って無かったが、浅井先生の勘違いであった。


『そこにどうぞ、座って。』


先生に促されて松田がイスに座る。


『あ、白杉さん!こんな間近で見るの初めてだ!』


知香を見た松田は興奮する。


一学年上の先輩だから仕方が無いけれど突然動物園でパンダでも見た様な言われ方をされてちょっと面白くない。


『はじめまして、1Aの白杉知香です。』


知香が松田の隣に座る。


『2Cの松田弘樹です。凄いなぁ、肌も綺麗だ。』


松田の顔は如何にも中学生男子というにきび顔である。


『松田くんは小まめに顔洗って綺麗にしなきゃね。』


浅井先生は松田のにきびを何とかしろと言う。


なるほど、にきびさえなければそこそこ[女装映え]しそうな可愛い顔をしている。


『たしか、セーラー服を着て学校に行きたいって…方ですよね。』


知香が松田に確かめる。


『うん。白杉さんの様にホントに女の子になりたいとまでは考えていないけれどね。』


そういう男子生徒も必ず居るとは思う。


『なんで松田さんはセーラー服を着たいって思ったんですか?』


知香が動機を尋ねる。


『女子の制服姿を見ていてなんで男ってこんな詰め襟の制服なんだろうって考えたら、一度着てみたくなって。』


女子の制服は男子を虜にする魔力があるのかもしれない。


一般に女子の制服姿を見ると恋心を抱いたり性的欲求が湧いたりする男子も多いだろう。


しかし、自分が女子制服を着用する事で女子生徒になりきって性的欲求を満たす男子も居るのだ。


『自宅から通学とか学校内を女子の制服を着て歩くのはさすがに問題だけど、保健室の中だけとかなら着ても良いわよ。』


浅井先生が妥協案を示す。


『それでも良いです。』


松田はとりあえず


『でもここで白杉さんの制服を脱がす訳にはいかないから、ちょっと待ってくれる?』


浅井先生は松田に後日来る様に伝えた。


『白杉さんはどう思う?』


松田が部屋を出た後で浅井先生が知香に聞いた。


『松田さんの考えも理解出来ます。』


浅井先生はふーんと頷いて知香に言った。


『白杉さんは寛容なのね。私もいろいろ勉強したんだけど自分は間違って男の子に生まれてきたって言う性同一性障害の人の中には女装して満足している男の子を否定する事が多いらしいの。』


知香はへぇ?と首を傾げる。


『自分はこんなに悩み苦しんでいるのに遊び半分で女の子になる人が許せないってね。』


知香は浅井先生の話を聞いて少し考えてから自分の意見を述べた。


『でも松田さんだって悩んでいるから相談に来たんですよね。女装する人だってみんな多かれ少なかれ悩んだと思うんです。ただ私みたいな人はその悩みって言うか、女の子になりたい気持ちが強いだけなんです。』


『白杉さんって大人よね。』


浅井先生が感心しているが、それは知香自身の経験によるものである。


『そんな事ないです。ただ、自分もずっと悩んでいたし、それを助けてくれた仲間が居たから今の自分があると思うんです。だから悩んでいる人には出来るだけ相談に乗ってあげたいと思っているだけです。』


『その[だけ]が難しいのよね。今井さんにしても松田くんにしても白杉さんにすぐ懐いちゃうのはそういうところなのかしら?』


『だから先生、犬じゃないですから。』


話が振り出しに戻った。


『あともう一人、こっちは男の子になりたいって言う女子も今度呼ぶけど大丈夫かしら?』


たしかその生徒も二年生だ。


『分かりました。来週は部活の金曜日以外空いています。』


『じゃ、また連絡するわね。』


知香とは逆のFtⅯ(female to male)の生徒だ。


基本的には知香と同じ考えなのだろうが逆の価値観になるので知香にとってみれば難しいかもしれない。


でもちょっと楽しみな感じになった。


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