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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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メディア露出の余波

翌日の朝から知香と雪菜、萌絵の三人は麗の自宅に迎えに行き、自宅から車イスを押して登校する事になった。


『ここまで来るのに結構お時間掛かるのではないですか?わざわざ悪いですわ。』


麗は恐縮して言った。


『気にしないで下さい。この方がいっぱいお話しする時間があって良いでしょう。』


麗は雪菜と同じ坂東小の出身である。


萌絵は青葉台小だが雪菜や麗の家とは近いので問題なかった。


『あれ、ともち?どうしたの?』


ありさと優里花が一行を発見した。


知香の通学路から大きく離れているのに何故ここに居るのだろうと二人は思った。


車イスを押しているので麗が一緒だという事は一目瞭然だったが、雪菜や萌絵も一緒だったので声を掛けた。


『あ、おはよう。』


暫く歩いていくと、美久が奈々やはずみ、のぞみたちと一緒に待っていた。


『おはようございます、麗先輩。』


『おはよう、美久さん。』


先週末まで嫌味で怖い先輩のはずだったのに何故こんなに親しい?とはずみたちは思っている。


『どうですか?たまにはゆっくり行くのも良いでしょう?』


知香が車イスを押しながら麗に話し掛ける。


『はい、車の後ろの席は見辛いですから。』


車イスに乗ったままの乗車は視線が窓より高くなる為眺望が悪い。


学校に近づくと他の生徒たちも前後を歩いている。


『あら、大名行列よ。』


『一年生を従えて、大したお姫さま。』


そんな声が知香や麗の耳にも入った。


『何よ?あの人たち!』


こういう時に吠えるのは正義感の強い奈々だ。


[知之]もよく助けてもらった。


『言いたい人には言わせておけば?ね、ともち。』


美久が何を言われても大丈夫と胸を張る。


『うん。麗先輩、気にしないで下さい。』


『ワタクシは慣れていますので平気ですわ。』


みんな強い。


麗は今まで一人で頑張ってきたが、知香の友だちはみな知香の強さに引っ張られてきて強さを学んでいたのだった。


しかし、鉾先は知香の方に向かってきた。


『車イス押している子、あの子だよね、白杉さんて。』


『そうそう、ユードーガに出てた……。』


(あれ?まさか、テレビに出た時のかな?)


どうやら動画投稿サイトに知香のインタビューが流れているらしい。


これは一大事と、麗を雪菜に任せ、知香は職員室に直行した。


『おはようございます、先生!』


ただならぬ雰囲気の知香に対応したのは学年主任の黒木だった。


『どうした、白杉?』


『学校に来る途中で、私がユードーガに出てるって……。』


黒木が職員室にあるパソコンを開いて一緒に見る。


すると『LGBT中学生美少女?インタビュー』というタイトルで小布施でインタビューされた映像が流れていた。


『これはまずいな…。』


黒木先生がつぶやく。


テレビだけならばその場で見た者以外は分からない。


しかし、その映像を録画やキャプチャーをして一度ネットに流され、拡散されたら元の投稿が削除されても全世界に広まってしまう事もある。


黒木先生は急いでその投稿の削除を申請した。


『この後何事も無ければ良いんだが。』



黒木先生の危惧は現実のものとなった。


今度は知香が車イスの麗を押して歩く映像が流れたのである。


『これが出来るのはウチの生徒か、近所の人しか居ない…。』


職員会議では大問題となった。


生徒には釘を刺したが反感のある生徒の仕業とも限らない。


通学路近辺の家一軒一軒に聞くのも無理だ。


警察に言えばさらに騒ぎが大きくなるかもしれない。



結論が出ないまま時は過ぎた。


六月は修学旅行シーズンである。


三年生は京都・奈良に2泊3日の修学旅行を控えていた。


二年生は夏休み中に1泊2日の校外学習があるのでこの時期は特に行事は無いが、一年生は三年と同じ時期に日帰りの校外学習がある。


『ワタクシは行きませんわよ。』


麗は知香たちに修学旅行不参加を告げた。


『クラスメイトの皆さまはワタクシが一緒ではご迷惑でしょうしお風呂にも入れませんから。』


知香ら一年生が一緒なら良いけれど三年生には好んで麗の世話をする人は居ない。


『せっかく、八つ橋買って来てもらおうと思ったのに~。』


と知香はふざけていたが、三年生の間では麗は完全に孤立しているのが分かった。


その時、見知らぬ男性が知香たちの前に立ちはだかった。


『失礼ですが、白杉知香さんですか?』


(マスコミだ!)


瞬時に知香は判断した。


『は、はい。』


ここで否定してもすぐにバレるだろうと思い、素直に返事をした。


『平成テレビと申します、ちょっとお話宜しいですか?』


(うわっ、どうしよ⁈)


『登校中なのですみません。学校を通してからにしてください。』


学校から取材申し込みなどがあった場合とにかく学校を通すようにと言われている。


『分かりました、それではまた。』


男性は引き下がり、職員室に向かう知香だった。




『もう嗅ぎ付けてきたのか、早いな。』


学年主任の黒木先生は知香の報告を聞いて唸った。


『とりあえず先生からの指示があるまで記者が来ても答えない様に。』


と言われた。


正直、面倒な話だ。


少し普通の人と違うだけでこれだけ注目されるのか?


これからも続くと思うと少々うんざりして来た。


『お、有名人だ!』


『お嬢さまと一緒だと目立ち方も違うねぇ!』


教室に入ると一部であるが、クラスの男子の見る目が変わってきたみたいだ。


『気にしない方が良いよ。』


雪菜たちが励ますが、クラスの連中が何人か騒ぐくらいなんて事は無い。


それより、麗の様にクラスで孤立して先生も誰も助けてくれなかったら……


改めて、雪菜や美久たちに守られている自分だと悟った。


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