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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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お嬢さまと私②

『ずっと出てこないんだもん、何かされているんじゃないかって落ち着かなかったよ。』


給食の時間、机を並べて給食を食べながら雪菜が言う。


『されるわけじゃないでしょ。麗先輩は車イスをなんだし。』


知香はいつの間にか今井先輩から麗先輩と呼び方が変わっている。


『また行くんだ、あんたたちも大変ね。』


いずみに言われるが、今度はいやいや行くのでは無くもっと麗の話を聞きたいのだ。


(萌絵、どうしよう?怒っているだろうな。)


二日続きで昼休みに会えない萌絵の事を考える。


放課後は逆に萌絵の方が部活で下校時間が違うのだ。


『先輩、きな子んちは[スノーホワイト]なんですよ。』


午前中と違い、緊張感は無い。


『まぁ、街道沿いのレストランね。私も行けるかしら?』


『ウチは移転した時からバリアフリーにしてあるので大丈夫ですよ。』


雪菜と美久だけの時はこんなプライベートな話題などしていない。


『美久のおかあさんは市民病院の看護師さんなんです。』


『あら?ワタクシが入院していた病院ですわ。原田さんって優しい主任さんでしたわね。』


こんなつながりがあったとは?


『先輩に聞きたい事があるんですけど。』


知香が麗に聞いた。


『先輩は私立中学受けなかったんですか?』


高木は私立を受けて落ちたと聞いている。


麗の家は高木より裕福そうだし頭も良い麗がこの学校に通っているのが不思議だった。


『ここはバスケ強いでしょ?先輩から誘われまして。』


麗は一年の時すでにレギュラーだと聞いた。


強豪校なのに一年でレギュラーとは相当だっただろうに事故で車イス生活を余儀なくされるなんて。


『あなたたちが気にする事はございませんのよ。終わった事ですから。』


本当に終わった事で良いのだろうか?


車イスの生活になったと言え絶望を抱えたままでは無く希望を持って生きていくべきだ。


『あなたとは違いますのよ。』


麗はそう言うけれど尊敬する先輩をこのまま黙って放置する気にはなれない。



放課後、知香は保健室に居た。


萌絵の部活が終わるのを待つのと、相談室の件で浅井先生から呼ばれたからである。


『テレビに出ちゃうなんて凄いわね。』


浅井先生がお茶を淹れながら笑う。


どうやら浅井先生は話を聞いただけでテレビ自体は見ていない様である。


知香は自分の事より母の失態を知られたくなかった。


『結構ね、投書来てるのよ。』


浅井先生がファイルを出して投書を見せてくれた。


パラパラとファイルを捲る知香。


『大半はね、夜中に白いのが出たとか生理痛が酷いとか普通の悩みなんだけど、白杉さんに関係する悩みもあるのよ。』


浅井先生は付箋のしてある所を開いて見せる。


[2年B組 女子 スカートを穿いて学校に行きたくない。]


[2年C組 男子 白杉さんみたいに女になりたいとまでは思わないけど一度スカートを穿いて学校に行ってみたい。]


(二人を入れ替えたらどうかな?)


知香は安易に考えてみるが、実際家族に言えない事情等があるという。


[1年B組 女子 男子が怖い。女子しか好きになれない。]


(これって、萌絵なのかな?)


一応生徒の名前は伏せてあったが筆跡も同じ様だし間違いないと思う。


萌絵の様な生徒の投書は別の学年にもあった。


『先生、学校の中…放課後のこの時間だけでも男子と女子の制服を入れ替えてみたらどうですか?』


『その場しのぎかもだけど、やってみる価値はあるかもね。』


浅井先生が知香の提案に乗った。


『それと……この子なんですけど、私とお付き合いしている子だと思うんです。』


『え?』


先生が隠してあった付箋を剥がすと八木萌絵と言う文字が出て来た。


『私たち、恋人同士なんです。』


萌絵が相談室に投書している以上、自分だけ隠す訳にはいかなかった。


浅井先生は驚きながら、興味津々という感じで知香に聞いた。



『1年生のくせに、凄いわね。でも、八木さんはあなたを女の子として見ているのかしら?』


『男の子が苦手って言っているので女だと思います。』


浅井先生は息を付いて考えた。


『じゃ、八木さんの事は白杉さんに任せます。別の生徒についてはは今度呼びますので白杉さんの体験談をお話してみてくれるかしら。』


『後、今井先輩なんですけど、今日志田さんと原田さんの手伝いをしていろいろお話をしました。』


手伝いというよりほとんど一人でやったのだがあくまでも当番はあの二人だから先生にはそう言った方が良いだろう。


『あの今井さんとお話って白杉さんって人を引き寄せる能力があるの?』


能力があるとか無いとかは分からないが、知らずのうちに気に入られたのは事実だ。


『今井先輩の事故ってどんなものだったがご存知ですか?』


『私も2年目だから知らないの。』


浅井先生が赴任する前の事だった。


『今井先輩があの様になったのって人を信じられなくなった様な気がするんです。もしかしたら事故が原因で心を閉ざしちゃったのかも。』


『それはありそうね。』


浅井先生が少し考えてみる。


『あの、白杉さん忙しいから悪いんだけど、たまに今井さんの当番協力してくれないかしら?』


『へ?』


『今井さん、白杉さんになら心を開いてくれると思うの。卒業までずっと今井さんがこのままなのは良くないので手伝ってくれない?』


(萌絵になんて言い訳しよう……)


また仕事が増えた。






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