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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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デリケートな問題

長いゴールデンウイークが終わった。


連休の前半は長野の祖父母の家に行ったが後半は特に用も無く日替わりで萌絵や雪菜と会ったり近所で風景写真を撮ったりしていた。


その間に日本は新しい時代を迎えたが女子中学生にそんな実感などは無い。


『おはようございます。』


今日は保健体育の田口先生が校門に立っていた。


『白杉さん、今日昼休み時間取れるかな?』


連休明け早々萌絵に怒られると思うけれど、先生からの呼び出しなら仕方ない。


『分かりました。』



給食の後知香が職員室に向かっていくと、多目的トイレから出て来た今井麗と、それを押す上級生らしき付き添いの女子生徒二人と鉢合った。


すれ違う前に立ち止まり、お辞儀をして見送る知香。


そのままやり過ごせるとほっとしていた知香だったが、麗は見逃さなかった。


『あら?』


知香はびくついた。


『一年A組の白杉知香さんじゃないかしら?これはこれは、超有名人のお出ましですわね。』


(うぁ、来たよ。どうしよう!)


知香は振り返って麗の目を見た。


一見意地悪そうな吊り目の麗であるが、その瞳は澄んでいる。


『白杉です。今井先輩が私の事をご存知なんて光栄です。』


(ちょっと嫌味だったかな?)


『あら、今井先輩だなんて、ワタクシも光栄よ。あなた、いつもこのトイレ使っているのよね。』


身障者の為に作られた多目的トイレであるが、別の理由で使用している生徒の事は当然麗も聞いている様だ。


(それにしても超有名人とはなに?まぁいろいろやらかしているのは事実だけど…。)


『思ってたより可愛いわね。これからもヨ・ロ・シ・ク。』


嫌な予感がした。



『失礼します。』


職員室に入り、田口先生に呼ばれている事を告げる知香。


すぐに田口先生が来て職員室の隅にある応接セットに案内された。


『先月は私たちの方にも資料が無いし他の生徒の様子を見る為体育の授業は見学してもらったけれど。』


知香は入学した四月中は体育の授業には出ていなかった。


『ほかの生徒たちにも聞いて問題なさそうだから今週からは授業に出て欲しいの。』


『着替えはどうするんですか?』


『白杉さんも慣れが必要でしょ?白杉さんならほかの生徒と一緒でも大丈夫と判断しました。それで何か問題が出そうなら即時中止しますが。』


ほんの少しだけど胸が出て来ている現状なら発育がちょっと遅れ気味な生徒と同じくらいだしいずれブラジャーなどの下着も必要になるであろう。


知香の本音は体育は苦手なので出来ればずっと見学でも良かったのと、体に異常が無いのに毎回見学は暇だという半々な思いがある。


『分かりました。』


『何か不都合な事があったらすぐに言って下さいね。』


特別扱いをされているという事はまだ完全に認められていないという事でもある。


あくまでも普通の女子生徒として生活しなければ社会で生きていけない。


(トイレも不便だから早く普通の使いたいな。)


女子トイレはすべて個室だからそう問題は無いはずであるが、デリケートな思春期の中学生だけにもう少し様子を見てから許可が下りるとの事だ。


また今井麗と会わない様に注意すれば何とかなるとは思う。



『今のともちなら誰も文句言わないと思うけどな。』


クラスで友人たちに田口先生との話を報告すると雪菜が言った。


『少なくてもウチのクラスの女子には居ないね。』


いずみも同調し、ありさも頷く。


『でもね、たまに機嫌が悪くなる事があるから気を付けて。』


月経……それは女子には必ず訪れるもので月経の前になると憂鬱で他人に冷たくなったり落ち込んだりする症状が現れる。


知香自身には無関係だけにうかつに接すると厄介な問題でもある。


『私、こればっかりは分からないから。』


それまでも聞いては居たけれど、ここに居る雪菜やいずみ、ありさだって必ずやって来る。


来ないのは知香だけである。


『こういう時は男子に生まれたかったって思うよ。』


『ごめんね。』


ありさの不用意な発言に知香が謝った。


『あ、ごめん、ともちの事言ったんじゃないから。』


知香を傷付けてしまった事に気付いたありさが弁明した。


これから、そういう問題は避けられないのである。


『また明日当番なんだよ。』


雪菜が話題を変えた。


こちらも憂鬱な話である。


『でももう慣れたんじゃない。』


他人事なのでいずみは気軽に考えている。


『そんな事ないよ。胃が縮んじゃう。』


車イスの扱いやトイレの中での移動など作業自体は慣れてきたがキツイ言葉は相変わらずだと言う。


『私、さっき職員室の前で会っちゃった。』


知香が先程の話をする。


『え?なんか話したの?』


いずみはこの手の話には直ぐ喰いついてくる。


『超有名人に会えて光栄ですわだって。』


『うわ、皮肉!』


『でもともち、一か月で学校中でホント有名になっているからね。テレビにも出ちゃうし。』


実際にテレビを見た人間は少ないが緊急メールが送られてきた事もあり、口コミでも広まっていた。


『あの[女王様]に言われるんだから大したモンだよ。』


雪菜の言葉に全然褒められた気分はしない知香だった。



















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