表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
45/304

もう一人の知香

祖父の家に帰ると、ちょうど携帯電話が鳴り出した。


木田先生だ。


『もしもし、白杉です。』


『白杉さん、どうしちゃったの?家でテレビを見ていたら白杉さんとおかあさんが出て来て、突然あんな事言っちゃって。』


木田先生も慌てている様だった。


『すみません、言うつもりは無かったんですけど母が暴走しちゃって。』


『まだ全国で性同一性障害の中学生なんてまだほとんど居ないから今回の様な露出があると週刊誌とかテレビとかが狙って来ると先生たちも言われているの。あまり騒ぎが大きくなると学校も庇えなくなるから生徒全員に連絡して言わない様にして貰わなきゃ。』


軽率だったかもしれない。


『連休で良かったわ。今から緊急メールを流す様に学校に伝えるから。』


ちょっと前までなら休み期間中の連絡は難しい。


が、今は連絡メールのアプリがあり保護者に即時連絡が可能だ。


『だから気を付けろと言ったんだ。』


仔細を聞いた博之は由美子を責める。


由美子はお酒が入ると放言癖があったのだ。


『まあ、済んだ事は仕方ない。知香の可愛い姿がテレビで流れた訳だし。でも、由美子さんは意外とポンコツなんだなぁ。』


俊之が笑う。


由美子が酒をほとんど飲まない理由は詳しく分からなかったが飲むと饒舌になるとは知っていた。


着物を脱ぐ知香の手伝いをしながら


『ごめんね、気を遣わせた上に変な事になっちゃって。』


由美子が謝る。


『大丈夫だよ。それよりさ、さっき買ったのって何?』


『ともちゃんにだけ教えてあげる。』


知香に耳打ちをする由美子。


『面白いね。じゃ私、普通の格好で良いかな?』


『良いわよ。いっちゃんが来たらこっちに呼んでね。』


一郎たちは一度自宅に帰り、着替えて再び来るそうだ。


私服に着替えた知香は俊之のそばに行く。


群馬の実家に行く時に着ていたワンピースだ。


『なんだ、知香。制服姿を見せてくれるんじゃなかったのか?』


俊之は知香の制服姿を生で見たい為に持って来る様に伝えていたのだ。


『ごめん、明日着るから。今日はずっと着物だったから疲れちゃった。』


残念そうな顔をする俊之。


『それより、この服どう?』


『おお、可愛いぞ。』


再び一郎たちがやって来た。


『お邪魔します。』


『あ、いっちゃん!おかあさんが話があるんだって。ちょっとこっち来て!』


早速知香が一郎を手招きして奥の部屋に案内する。


『叔母さんが?』


知香は一郎が奥の部屋に入るとぴしゃりと襖を閉めて誰も入れない様に立ち塞がった。


『ちょっと、イヤです!』


『大丈夫、ちゃんと綺麗にするから。』


奥の部屋から何やら二人が言い争っている。


『何してるんだ、由美子は?』


『ナイショ。』


博之が不思議がるが知香は教えない。


『良いわよ。ともちゃん、開けて。』


知香が襖を少し開けて奥を覗き、振り返ってニヤっとした。


『行くよ、じゃ〜ん!』


襖を大きく開けると、セーラー服を来た知香がもう一人居た。


いや、知香に似せた一郎だった。


頭には雑貨店で買ったウィッグをかぶって、顔もメイクをして男の子っぽさをカバーしている。


『おおーっ!』


祖父母も一郎の両親も博之も歓声を上げた。


『やっぱりこうして見ると二人はよく似ているなぁ。』


一郎は恥ずかしくてスカートの裾を掴んで顔を赤くしている。


『これ、なんかの罰ゲーム?恥ずかしいよ。』


『似合うよ、いっちゃん。』


知香は一郎の横に並んで微笑んだ。


『お前、よく人前で平気でスカートとか穿けるよな。』


『初めて外に出た時も結構平気だったよ。』


知香は普通では無いと一郎は感じた。


一郎の女装の首謀者の由美子が後ろで立ち上がって謝る。


『今日は重ね重ね申し訳ありません。』


『おれ、由美子さんの事よく分からなくなったよ。』


高志が笑いながら困った顔になった。


『ともちゃんと違って一郎は落ち着きが無いから女の子になって少しは大人しくなるかな?』


瑞希は一郎の女装を歓迎した。


『二人とも、こっちに来なさい。』


俊之が知香と一郎を招き寄せ、両隣に座らせた。


『二人とも男の子だった筈なのにこんなに可愛い女の子になるなんておじいちゃんも嬉しいよ。』


『俺は違うよ!』


一郎は激しく否定する。


盛り上がっている所にお寿司屋の出前とリカルドが同時に来た。


『トモカ、フタリイマスネ。』


リカルドも笑っていた。


『リッキー、さっき撮った写真見せて!』


知香が博之の手から離れてリカルドに声を掛けた。


リカルドは今日一日でだいぶ撮影をした様だ。


『トモカ、キモノトテモキレイデス。ホームページノセテイイデスカ?』


さっきのテレビの一件があったので少し迷ったが、リカルドの頼みでもあるし了承した。


『トモカモSNSヤリマセンカ?トモダチニナリマショウ。』


知香はスマホで無料通話アプリをやっていて友だちと連絡を取っていたがツィートをするSNSはやった事が無い。


『セカイヂュウニトモダチデキマスヨ!』


そこまで友だちは要らないけれど、自分と同世代で同じ境遇の人が居たら連絡を取り合いたいと思った。


『教えて教えて!』


早速リカルドに教えて貰いプロフィールを書き込んでリカルドに友だち申請をした。


一方の一郎は帰る間際まで大人たちから弄くられていた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ