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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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由美子やらかす

小布施は長野の小京都と呼ばれる観光地だ。


最近は着物を貸してくれる業者も多く、若い女性や外国人観光客も着物を着て歩いている。


ゴールデンウイークの為か車が多くてなかなか駐車場に入れなかったが、祖父を残して車を降りた。


『着物の人多いわね。』


『あれ外人さんだよ。』


由美子も一郎もきょろきょろしているが逆に知香は注目の的になっていて少し恥ずかしい。


『なんか、みんなに写真撮られているんだけど……。』


小柄だがちゃんとメイクも髪のセットもして振袖姿で歩く知香はモデルの様だ。


『由美子さんも着てみれば?』


高志が由美子に和服を着て母娘一緒に歩く事を提案する。


『着てみた〜い!ともちゃんに負けないから!』


子供と張り合ってどうするのだろう。


『瑞希もどうだ?』


高志は本当は自分の妻に着て欲しいと思い最初に由美子に焚き付けて瑞希にも言ったのだが


『私は良いわ。由美子さんとともちゃん二人で楽しんで。』


瑞希は酔っ払った由美子を見て断った。


高志の目論見は脆くも崩れた。


お茶を飲んで待っているうちに由美子が着付け終わり、小川沿いの石畳をゆっくり歩いてゆく。


メイクも直して多少時間が経ったので酔っている様には見えない。


着物姿の母娘二人で歩くと余計に周囲の注目を集めた。


『あれ、乗ろっか?』


由美子が人力車を発見した。


『ちょっと恥ずかしいよ!』


これ以上目立つのはどうかと思う。


『なに言ってんの。こんな事滅多に出来ないんだから。旅の恥はかき捨てよ!』


母の恥に付き合っていられないとは思いながら乗り乗りの母に仕方無く付き合う知香。


人力車は古い街並みを走って行く。


観光客のカメラのみならず地元のテレビ局の取材カメラもその姿を捉えていた。


高い位置から見下ろしているので遠くの人たちもよく見える。


『あ、リカルドさんだ。リッキー!』


リカルドは小布施に行く事を聞いていて先回りしていた様だ。


知香は袖が落ちない様に左手で右手首の辺りを支えながら右手を振った。


リカルドもカメラを構えながら手を振ってくれる。


人力車を降りた所でテレビカメラとマイクを持った集団に囲まれた。


『シナノテレビと申します。インタビューしたいんですが宜しいでしょうか?』


テレビ局の取材だが地方のローカル局だから問題無いだろう。


『どうぞどうぞ。』


問題は母の由美子だった。


『じゃあリポーターが簡単な質問をしますので答えて下さい。生放送ですけど緊張しなくて良いですからね。』


ディレクターが説明し、周りにはギャラリーが集まって来た。


ディレクターの合図でマイクを持った女性リポーターが話し掛ける。


『こんにちは〜。素敵なお着物ですね。お母さまと娘さんですか?』


『いえ、姉妹です。』


いきなりやらかした。さすがに無理がある。


『今日はどちらから来たんですか?』


リポーターは知香にマイクを向けた。


『埼玉からです。おじいちゃんの家に遊びに来ています。』


『可愛いお着物ですね。お祝いですか?』


レンタルで振袖を着ている女性はたくさんいるが、丁寧に髪がセットされているのに気付いた女性リポーターが質問を変えた。


『おじいちゃんが女になったお祝いをしてくれたんです。ねぇ、ともちゃん!』


ディレクターもリポーターも由美子のまさかの発言に慌てた。


知香の背格好なら[初潮]の事だろうと知らない人は思う。


放送禁止用語では無いだろうが普通インタビューで答える内容とは思えない。


知香は母の失言を消す為に奥の手を出した。


『私、性同一性障害で去年までは男の子だったんです。この春から女の子として中学校に通って居ます。』


知香の咄嗟の機転にリポーターがディレクターの目を見て指示を仰ぐ。


ディレクターが親指を立てサインを送り、知香に質問を続けた。


『そうなんですか〜?とても可愛くて驚きました〜!』


リポーターがオーバーに表現する。


『……以上、長野から田中がお伝えしました。』


(あれ?長野からって全国ネット?)


『すみません、こんな事になるとは…。番組自体は長野だけなんですがこのコーナーだけネット局に流して居るんです。』


ディレクターは説明不足を謝った。


少なくとも首都圏エリアには流されている。


ゴールデンウィークとはいえ見ている人も居るかもしれない。


知香本人は別に隠すつもりは無いが大きな問題になったら学校に通えなく可能性もある。


(黒木先生が言っていた事ってこれだったのかもしれない。)


祖父の自宅に戻る途中の車の中で担任の木田先生にメールで連絡してみた。



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