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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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謎のイタリア人

知香たちは二間続きの畳の部屋で身体を休めた。


外は新緑が眩しい。


『おじいちゃん、お正月に来れなくてごめんね。』


孫にお年玉を渡そうと待っていたのに肩透かしを食らった格好になった俊之だったが可愛い女の子に変身して帰ってきた知香には甘い。


『そんな事はどうでも良いんだ。病気と聞いて心配したが、まさかこんな事だったとはな。博之も一言言ってくれたら良かったのにしょうもない親父だろ?』


祖父にとっては息子だが孫にとっては自分の父である博之の事は知香は悪く言えない。


『その時はおとうさんにはまだ言ってなかったよ。』


『何?』


てっきり女の子になってしまった息子を連れて来れなかったため病気と偽っていたのだと俊之は思っていたが、本当は不登校の引き篭もりになったのが原因だった。


『その後家に帰った時ですよ。知之が女の子になっておかえりなんて言うもんだから。正月早々あんなにショックだった事は無かったです。』


博之はその時の事を思い出しながら説明する。


『ごめんなさい、おとうさん。』


改めて博之に謝る知香。


『それにしてもどこから見ても女の子だな。一郎、お前も女装してみるか?』


祖父に振られ、驚く一郎。


『いっちゃんになら服貸しても良いよ。あ、セーラー服持って来てるけど。』


知香が祖父に続く。


『ば、ばか、着るわけねぇだろ。』


顔を真っ赤にして首を振る一郎だが、知香や大人たちは一郎の女装姿も見てみたいと囃し立てる。


『いっちゃんも可愛いから絶対似合うよ。』


一郎を弄っていると、玄関から声が聞こえた。


『タダイマデ~ス。』


声の主はイタリアから来て長期滞在をしているリカルドだった。


『こ、こんにちは。』


明るいリカルドにたじろぐ知香。


『アナタガトシユキノマゴノ[オトコノコ]サンデスネ?』


男の娘と言っている様だ。


『知香です、宜しく。』


『オオ、トモカ。エ・カリーナ!』


(へ?なんて?)


『知香の事可愛いだって。』


一郎が得意そうに通訳する。


一郎はリカルドからイタリア語を少し教わっているらしい。


『カリーナっていうのは女の子に言う可愛いって意味だよ。男の子にはカリーノって言うんだって。』


リカルドは女の子と認めてくれた様だ。


『いっちゃん、ありがとうってイタリア語でどういうの?』


耳打ちで一郎に聞く。


『グラッチェだよ。』


一郎に教えった通り言ってみる。


『グラッチェ。』


『オオ、メラヴィリョーゾ!トモカ、ワタシトイッショ二イタリアニキマセンカ?』


素晴らしいと言っているらしいが女の子を口説く日本語だけは知っているのか?


『リッキーはは追い出されたいのか?』


俊之が凄い顔でリカルドの顔に近づく。


『ゴメンナサイ、ジョーダンデス!』


『冗談でもこれ以上変な事言うと今日は夕食抜きだからな。』


俊之がくぎを刺す。


『こんにちは~。博之たち来てる~?』


博之の姉で一郎の母の坂井瑞希と旦那の高志がやって来た。


『こんにちは、伯母さん、伯父さん。』


『あら!ともちゃん。予想通り可愛いわね。いっちゃんも女装させようかしら?』


瑞希は知香の話を聞いてから顔の似ている一郎でイメージを浮かべていた様だ。


『じゃ、後でセーラー服出しとくね。』


『とも!』


一度消えかかったのに再び振られて一郎は憤慨した。


祖母はさっきから一人で夕食の準備をしていたので、休んでいた由美子と瑞希が台所に手伝いに行く。


『私も手伝う!』


知香が立ち上がるが


『ともちゃんは休んでいて良いわよ。』


と由美子に制止される。


『おばあちゃん、私もやりたい。』


知香は誰に言えば一番許してもらえるかを読んで祖母に聞いた。


知香になってからは空気を読む事に長けてきた様で佐知子に寄り添って手伝いをする。


『出来たものから運んでくれる?』


『は~い。』


佐知子に言われ、配膳をする知香。


男性たちはみんなのんびりテレビを見ている。


自分も去年まではあんな感じだったなぁと思いながら長テーブルに大皿を置く。


こういう時女性は大変だけど自分は動いている方が性に合っていると思う。


料理と飲み物が運ばれ、全員がテーブルの前に座る。


大皿には山菜のてんぷらや煮物といった田舎料理が中心である。


知香は自分の食事を終えると俊之や高志、博之にお酌をして廻る。


『おじいちゃん、夏休み友だちと一緒に来ても良いかなぁ?』


『何人くらいかい?』


誘ったらどれくらい来るだろう?


萌絵一人を誘っても良いが下手に悪目立ちするのも面倒だ。


『4〜5人くらいかな?』


『早めに連絡しなさい。部屋は押さえておくから。』


『わぁ、ありがとう!』


何故だかたまにクチコミで外国人が泊まりに来る程度で日本人の客はほとんど来ない宿だから、満室になる事はほとんど無いらしい。


たまに来る外国人というのはリカルドのホームページを見て泊まりたいと言って来る様だ。


来る者は拒まずと言う祖父・俊之はリカルドに教えて貰い苦手な外国語もなんとか熟して応対すると話した。


『リッキー、後でホームページ見せてね!』


リカルドは周辺の観光地を自転車で廻ってホームページに載せたりしている。


長野に来たのは川中島の合戦に興味があったからと話してくれた。


他に善光寺などが好きらしい。


『明日はその善光寺でお参りするからな。』


初詣にも行った事がある善光寺で十三参りをするのだ。















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