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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
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従兄弟のいっちゃん

中学生になって最初の一か月はあっという間だ。


入学式が終わってからバタバタしているうちにもうゴールデンウイークがスタートする。


今年はなんと10連休もあり、予定を組むのも大変だ。


知香の家では前半は長野県の父の実家に帰省するが後半は特に予定が無い。


自宅から新幹線の駅までは車で30分くらいなのでそこまでは由美子が運転して駐車場に車を入れた。


おじいちゃんの希望で学校の制服もカバンに詰めたため、荷物が多くなってしまい車の方が楽ではあるが新幹線は乗ればちょうど一時間で長野に着くのだ。


『知香、大丈夫か?』


『うん。』


知香になって父と一緒に出掛けるのは初めてである。


駅前のコンビニでおにぎりやお菓子を買って貰い、改札に向かう。


この駅は大学のキャンパスがあるので後から出来た新しい駅だが長野に向かう列車は驚くほど本数が少ないので早め早めの行動をしなければならない。


新幹線に乗り込み、進行方向右側の指定された三人掛けのシートに三人は座る。


ゴールデンウイークの最初の日なので車内は満席であった。


『早いねぇ~。』


ゴンゴンと音を立てて進む新幹線の車窓を眺めながら知香は言う。


知香の家は中途半端な地域なのでほとんど新幹線に乗った事は無かった。


『新幹線が通る前は3時間くらい掛ったんだぞ。』


父・博之が昔を振り返って話す。


途中で山を登るのに機関車を付けるので時間が掛ったけれどその間によく駅弁の釜飯を買って食べるのが良かったと回想するが知香の生まれる前の話なので全く想像が出来ない。


終点の長野駅に到着した。


改札を出て一度外に出てからエスカレーターで地下に向かう。


『地下鉄なの?』


地下に降りると小さな切符売り場と改札があった。


『地下なのは少しだけだよ。……お、一郎くんだ。』


改札を出たところに従兄弟の一郎が立っていた。


『こんにちは。』


一郎は祖父に駄賃を貰って三人を迎えに来たのだった。


まず母の弟である博之に挨拶をする。


一郎は[知之]の顔に似てはいるがだいぶ背丈に差が付いたみたいである。


『お前ホントに[とも]か?びっくりしたなぁ。』


祖父から聞いていたとはいえ突然女の子になった従兄弟に一郎は驚く。


『うん、久しぶり。いっちゃん大きくなったね。』


二人並ぶと兄弟の様だった。


『もうすぐロマンスカーが来るからそれで行こう。』


『ロマンスカー?』


ちょうど電車が入ってきたが確かに展望席の付いたロマンスカーである。


『昔箱根のロマンスカーだったお古だよ。』


知香も本やテレビで見たことがあるしロマンスカー自体は乗った事はあるがこの電車と同じだったかは分からない。


知香はショルダーバッグからカメラを出して写真を撮った。


(群馬のおじいちゃんに見せてあげよう。)


『まだ時間があるから知香、ちょっとカメラを貸しなさい。二人並んだところを撮ってあげよう。』


博之に言われ、電車をバックに一郎と並んでみる。


こうして並ぶとずいぶん身長の差が付いたと思うが男性ホルモンを抑える薬の影響かもしれない。


動き出した電車は暫く地下を走り、地上に出るとのんびり走った。


『考えてみるとともって昔っから女っぽいところあったよな。でもともに惚れたらどうしよう?』


気を許した従兄弟同士とはいえ、すっかり変わってしまった知香に緊張する一郎。


『いっちゃん、知香ね、学校だと結構モテるのよ。』


向かいに座っている由美子が一郎に言う。


『止めてよ、おかあさん。』


このやり取りを見ているとどうしても母娘の会話にしか思えない。


『あ、鉄橋!車と並んでいる。』


知香が窓の外を見てはしゃぐ。


『昔は一つの鉄橋を電車と車が一緒に使っていたんだ。』


『へぇ~。』


昔話はピンと来ないのであまり興味が無い。


程なく車庫のある駅に到着して、4人は電車を降りた。


少し古びているがしっかりした階段を上がると改札があり、祖父・俊之が迎えに来ている。


『おじいちゃん!』


『おお、[とも]か?!ホントに女の子になっちゃったんだなぁ。ずいぶん可愛いなぁ。』


俊之は目を細めた。


が、時々一郎と[知之]を間違えて呼んだりしていたので


『もういっちゃんと私を間違えないでね。』


と知香に言われて苦笑いして迎えた。


父の実家は駅から山の方に向かって20分ほど走ったところにある。


もともと民宿を営んでいて部屋はいくつもある古民家風の建物だ。


今は民宿もあまり見向きもされなくなり閉業同然だったがインバウンドの増加で最近は外人客が訪れるらしい。


ゴールデンウイークではあるが、知香たちが滞在している間は長期滞在者を除いて宿泊を断っていた。


『こんにちは!』


玄関の前に立つ祖母・佐知子を見つけ、知香は叫んだ。


『いらっしゃい!』


もともと[知之]の名前は祖父と祖母の名前を合わせたものだ。


知香という名になって自分の名前の部分だけ残した事を佐知子は喜び俊之は悔しがっていたと博之に聞かされていた。


『ともちゃん、よく来たわね。すっかり可愛くなって。』


『そのままずっとここに居て看板娘にならないか?』


俊之も初めての孫娘が可愛いらしい。


『うん、考えてみる。』


最近、知香は社交辞令を覚えたのでさらりと答えた。

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