表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
40/304

長野の祖父母

土曜日、萌絵と会うのを午後にしたので朝は少し遅めに居間に降りると、父・博之が新聞を読んでいた。


『おはよう、おとうさん。』


『おはよう。』


母の由美子と違いなかなか息子が娘になった事を完全に受け入れる事が出来ない博之だったが、最近はだいぶ違和感無く会話が出来る様になった。


『女の子になったんだからそんな格好でうろうろするな。』


暖かくなり、知香は春らしい明るい色のパジャマ姿だった。


『可愛いでしょ?』


博之は新聞で顔を隠す。


知香のこういう攻撃にはまだ慣れていない。


『ゴールデンウィークは新幹線で長野に行く事になったからな。』


長野県は父の実家がある。


昨年までは母の運転で自家用車で正月とお盆に言っていたが、今年は博之一人で帰省した為新幹線で往復していた。


博之は自動車免許を持っているが余程の事が無いと運転しない、ほぼペーパードライバーである。


『新幹線は乗ったらすぐだから楽だぞ。』


一度利用して味をしめたらしいが、知香は祖父がスキーを教えてくれるので冬の帰省の時は小学生一人で新幹線に乗って先に行っている事が多い。


埼玉県北部から長野までは高速道路で普段なら3時間くらいで着いてしまうが、ピークの時は倍以上掛かる。


高速で両親と帰省するとへとへとになっていたので知香も喜んだ。


『きっぷも取れたからちゃんと長野のおじいちゃんおばあちゃんに挨拶しなさい。』


母の実家には卒業式の後、春休み中に挨拶をしてきた。


知香となった事を言って無いのは父の実家だけである。


『うん、分かった。』


『知香には悪いが実はこの前おじいちゃんたちには言ったんだよ。』


母の実家に言う時は自分の口から話すと母に言っておいた。


ただ、父は父で考えていたのだろう。


『向こうでお祝いをしたいって言ってきてな。』


(お祝い?)


『おとうさんも知らなかったんだけど[十三祝い]ってお祝いがあるらしいんだよ。先月電話が来て中学進学祝いを兼ねてやりたいって言ってた。さすがにちゃんと言わなきゃいけないなと話したんだ。』


男子のお祝いをしようと待っていたら女子が来たなんてなったら笑い話にもならない。


『それで、おじいちゃんどんな感じだった?』


『そりゃ最初は驚かれたよ。でも直ぐに振袖を用意しなきゃとか言ってたぞ。』


(突然なんで振袖?)


『なにか意味があるらしい。ずいぶん張りきっていたみたいだ。』


正直、雪菜が七歳の時に振袖姿を見ていつかは着たいと思っていた。


たぶん成人式には着れるとは思っていたが、この歳で着るのは嬉しい想定外である。


『一郎も来るらしいぞ。一緒にお祝いするみたいだ。』


一郎とは同い年の従兄弟で父の姉の長男にあたり祖父母の自宅近くに住んでいる。。


帰省した時は一緒によく遊んだ仲だ。


『いっちゃん、大きくなったかな?』


従兄弟同士のせいか、[知之]と一郎は双子と言われるくらい似ていた。


ただ、知香はあまり背が伸びていないので差が付いているかもしれない。


(私を見てどんな顔をするだろう?)



午後はカメラを持って萌絵の家に行く。


また、ロリータ服を着て撮影をするのだ。


『なんか貸しスタジオっていうのがあって、ちゃんとセットとか照明を使って撮影出来るんだよ。』


とはいえ中学生にはレンタル料がちょっと高いので二人だけで借りるのは難しい。


机のスタンドなどを使ったりして萌絵のベッドの上などでそれらしく撮影してみるが今ひとつだった。


『やっぱり腕かなぁ?勉強しなきゃ。』


ポーズも二人で考えてああでもないこうでもないと撮ってみた。


『ゴールデンウィークさ、長野のおじいちゃんちに行くんだけどなんか振袖着てお祝いしてくれるんだって。』


『えー、良いなぁ。私も行きたい!』


さすがに今からは無理だ。


『写真撮ったら一番に見せるから。』


最近は萌絵もだんだん我が儘になってきて、知香が与えたものは常に自分が[一番]に共有しなければ許せないみたいだ。


『絶対…だよ…。』


『その代わり、萌絵の七五三の時の写真見せてよ。』


きっと可愛いに違いない。


『ヤだ。』


『なんで?』


『……だって、絶対笑うから。』


『そんな事無いよ。絶対笑わないから。』


どうしても見てみたい。


咄嗟に知香は萌絵の唇を奪った。


前は萌絵からされたので知香からの口づけは初めてであり、驚いた萌絵の目は大きく開いていた。


舌は入れはしなかったが、少しだけ出して萌絵の唇に触れた。


『……ズルいよ……。』


『この前のお返しだよ。可愛い萌絵をどうしても見たいから。これでも見せて貰えないの?』


萌絵は黙って部屋を出てすぐに写真を持ってきた。


スタジオでちゃんと撮った振袖の写真だが、機嫌が悪かったのか、むすっとしている。


『ふふ、可愛いじゃない?』


『やっぱり笑った!』


萌絵の頬が膨れる。


写真の顔と一緒だった。


『萌絵の怒った顔って可愛いよね。』


『もう!』


ますます萌絵の顔が膨れる。


おじいちゃんにお願いして夏休みは萌絵も連れて行こうと知香は思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ