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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
中学一年生編
32/304

一年A組白杉知香

真新しい紺色のセーラー服。


いよいよ中学校入学式を迎えた朝。


知香はきょうが本当に女の子としてのスタートだと気を引き締めた。


『後から行くからね。』


『うん、カメラ持ってきてね。』



祖父に買ってもらったカメラは直接知香は持っていけないので由美子に託した。


(入学式が終わったらみんなを撮るんだ。)


自宅にははずみと奈々が迎えに来てくれた。


小学校の時毎日遠回りして迎えに来てくれた萌絵は途中で待ち合わせの約束をしている。


『おはよう!奈々、可愛い~!』


『何よ、チカの方がモテるくせに。』


同じ制服だが奈々は背が小さいので小学生の様に可愛く感じる。


といってもみんなついこの前まで小学生だった。


『はずみん、おはよう。』


『おはよう。また同じクラスだったら良いね。』


奈々とは対照的に落ち着いているはずみの制服姿は大人びて見える。


のぞみの家の前ではランドセルを背負ったいずみも玄関で待っていた。


『いずみちゃん、おはよう。』


『チカねぇ、綺麗。』


『何よいずみ、私には何も言わないくせに。』


のぞみが嫉妬していずみに怒る。


『お姉ちゃん毎日いるじゃん!』


朝から姉妹ケンカが始まる。


『いずみちゃん、双葉ちゃんが見てるよ。』


さくらやの孫娘の双葉と、二年生くらいの小さい子が見ている。姉の手を離れたいずみは朝も双葉たちと登校する様だ。


『競争、頑張ろうね!』


知香はいずみとどちらがたくさん友だちを作れるか勝負をしている。


『うん、いずみ負けないよ!』


いつもの元気ないずみだった。


『じゃあね。気を付けてね。』


知香たち中学生はいずみたちと別れる。


学校に近づき、萌絵は雪菜や優里花たちと一緒だった。


雪菜と萌絵の自宅が近いので、知香が雪菜に頼んでいた。


『萌絵ちゃん、おはよう。』


『……おはよう、ともか…』


『こら!しろやぎ!あんたたちデキてんじゃないの?』


小学校の時と違って名前で呼び合う二人に気付いた奈々が横槍を入れる。


なんかバレバレの様だがそれもいいかと知香は思う。


これから三年間通う事になる市立三中の校門を潜る。


真新しい制服に身を包んだ新一年生たちが掲示板に注目していた。


一年A組……大森のぞみ……志田雪菜…白杉知香…水尾ありさ…。


雪菜と一緒だ!出席番号も二人続いていた。


一年B組……野村優里花…原田美久…八木萌絵…。


萌絵も美久もB組だった。残念だけどみんな一緒というのはさすがに無理がある。


一年C組……菊池奈々……松嶋はずみ…。


対照的な二人が同じC組になった。奈々の声が聞こえないのは寂しい。


『ありささん、宜しくね。』


『うん、一緒のクラスになれたら良いなって思ってた。ともちって呼んで良いかな?』


«ともち»は[知之]の時から雪菜だけがそう呼んでいる。


『うん、«ともか»でも«ともち»でも«チカ»でも何でも良いよ。ありささんはどう呼んだら良いかな?』


『«ありちゃん»だよね。』


雪菜が口を挟んだ。


『«ありちゃん»、私もそう呼ぶね。』


やはりA組になったのぞみが言った。


一方でB組の萌絵が気になる。


『……別々になっちゃった……』


案の定落ち込んでいた。


『大丈夫だよ。美久だっているし。』


『私も忘れないでね。』


そう言ったのは優里花だった。


『萌絵ちゃんと友だちになればまたあの服着れるし。』


『私も今度着てみたいなぁ。』


撮影会には呼ばれなかった美久も言った。


萌絵も大丈夫そうだ。


それぞれ自分たちの教室に向かい、机に貼ってあった自分の名札を確認して席に着く。


出席番号順なので隣に雪菜が居る。


『なんか不思議だね。』


『うん。こうして一緒に並ぶなんてね。』


二人で話をしていると、知らない男子生徒が知香の前に立った。


『お前が男なのに女の格好している白杉か?』


『なによ、高木!』


その生徒は雪菜と同じ小学校から来た高木という名前らしい。


『ふーん。男のくせにな。』


二度も男って言われた。


早々の洗礼だったが、これも想定済みの事である。


『気にしなくていいよ。』


雪菜が慰める。


『大丈夫だよ、平気。』


強がりではなく、自信である。


こんな所でこんなヤツに負ける様なら最初から女の子になんかなれないと知香は思う。


女子だって理解出来ない生徒や嫌悪する生徒は居るだろうし逆に男子にだって理解者は居る筈である。


引き続いて同じクラスになった小川や大崎などは卒業パーティーにも出てくれたし後者の方だろう(それはそれで暑苦しいけど)。


気にしていたらきりが無い。



式の時間になり、知香たちは体育館に向かった。


校長の沢田も前に三中でサポートしてくれるという保健室の浅井や保体の田口も異動は無かった様で知香と目を合わせた。


担任のは木田陽子といって教科は英語だ。


木田は保健室の浅井先生とはどっちが若いか分からないくらいの若い先生だった。


学年主任はB組の黒木といって国語の先生である。


校長先生の挨拶では特に性同一性障害の生徒が居る話は無かったが、保護者にはお知らせと協力のお願いという形でプリントが配られるとの事だった。


入学式が終わって木田先生と共に教室に戻り、明日は自己紹介やクラスの各委員などを決めるという簡単な連絡事項を言う程度で終わった。


知香だけは明日の放課後に先生たちと改めて話をするからと言われ、母たちが待つ校庭に向かった。



中学生からと言うタイトルですが、ここからようやく中学編となりました。

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