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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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雪菜と美久

自宅に帰った知香はカメラを箱から出して説明書とにらめっこをしながら取り扱いを学んでいた。


(撮り方とか美久のおとうさんに聞けたら良いな。)


そう考えていたら、美久と雪菜が一緒に写った写真の事を思い出した。


徹から貰ったUSBスティックのデータは母の実家で見たけれどフォルダ分けがされていたので撮影会の写真しか見ていなかった。


カメラの取り扱いは中断してパソコンの電源を入れた。


徹が撮った小学三年生の雪菜と美久は二人とも笑顔で本当に仲良しだった事が窺われる。


(二人とも可愛い。)


いつもいずみに相対するときの様な表情で画像を見ていた知香だったが、それだけに二人の不仲が信じられない。


(何とか出来ないかな?)


必死に考えたが、二人に話を聞くのが一番手っ取り早いと思う知香であった。


知香は最初に雪菜の家に行った。


自宅からは美久の家の方が近いけれど、美久の家の中には入った事も無いし付きあいの長さでは圧倒的に雪菜との方が長い。


それに、先日美久の父・徹によって雪菜と美久が友だちだったと暴かれた時雪菜はその場に居たので雪菜の方が落としやすい。


『ユッキーって四年まで青小にいたけど誰と仲良かったっけ?』


なるべく遠回しに知香は切り出した。


『そりゃ、ともちだよね。』


(そんなのは分かっているからどうでも良い。)


もどかしい思いの知香。


『はずみんとは遊んだよね。』


はずみが初めて知香の家に来た時にそれは分かっていた。


『あと、ちっちゃくてうるさい子。名前なんだったっけ?』


菊池奈々の事だろう。


二番目に出て来た、それもインパクトが強い筈の奈々に対しそれくらいしか思い出せないのだから、意外に雪菜も青小時代の友だちが少なかったのかもしれない。


それでも美久の名は口に出さなかった。


『美久は?』


口は開かなかったがその名前を口に出すなという表情で知香を睨んだ。


『なんでよ?このまえ美久のおとうさんと挨拶してたじゃん!』


『あれは[社交辞令]よ!』


『じゃ、これは?』


知香は雪菜にスマホにダウンロードした雪菜と美久のツーショット写真を見せた。


『だから……ともち悪趣味って言うんだよ……。』


たぶん、雪菜は先日知香と徹との会話の一部始終を聞いていた。


『この頃って美久と仲良かったんでしょ?』


雪菜は否定も肯定もしない。


『なんで今あんなによそよそしいの?』


『…………ばか。』


『え?』


雪菜は小さい声で言ったので知香には聞こえなかった。


結局、雪菜は何も答えてくれなかった。



翌日、今度は美久の家に行く。


美久の父・徹から写真を撮って貰ったお礼にお菓子の手みやげを持っていった。


『これ、おかあさんが持って行きなさいって。』


『ありがとう!』


美久が喜んで受け取った。


上機嫌のうちに正面突破を試みる。


『美久ってさ、昔ユッキーと仲良かったんでしょ?』


突然雪菜の話をする知香に驚く美久。


『な、何よ、急に?』


『美久のおとうさんがさ、三年生の時美久と雪菜が二人で写っている写真くれたの。』


そんな写真撮った事あったなと思い出す美久。


『あのくそオヤジ!』


『美久!私がくれって言ったんだからおとうさんの事悪く言わないでよ。』


美久は怒りの鉾先を知香に変える。


『チカ、あんた森林公園の事覚えてないの?』


(森林公園?……四年生の遠足?)


『チカ、雪菜と一緒に入っちゃいけない場所に行ってケガしたでしょ?』


『……………あ。』


(思い出した。あの時は私と雪菜が同じ四年二組で団体からはみ出して変な所に行ったんだっけ。)


『あの時さ、チカが血出して動けないって雪菜先生を探しにチカを置いて居なくなったでしょ?その時一組が近くを通り掛かって泣いてるチカを助けたじゃない?』


その時、美久は両親から応急手当の仕方を教わっていて救急セットをリュックの中に入れていたので[知之]の手当をしてくれたのだった。 


[知之]と美久はそれまで一緒のクラスにはなった事が無くて名前も顔も知らなかった。


そのまま記憶の奥の方に追いやってしまった様だ。


『次の日にさ、チカのクラスに行ったらチカ休んでたでしょ?』


確か、遠足のケガで二日くらい休んだっけ。


『その時私、雪菜にケガ人置いて居なくなるってどういう事って問い詰めたらケンカになっちゃってそれからなんだよ。』


(て事は雪菜と美久が不仲になった原因は私なの?学校休んだ二日の間にそんな事あったなんて……)


『美久、ごめん!』


両手を合わせ平謝りする知香。


『全然知らなかったよ。ホント、ごめんね。ユッキーと仲直り出来ないかな?』


『まぁね……チカが間に入ってくれたら……。』


『じゃ、今から行こ!』


善は急げだ。知香は美久を連れて雪菜の家に向かった。



『どうしたの、ともち?……あ。』


知香の後ろに美久が居たのに気付き、すぐに状況を理解した。


『このおせっかい焼き!』


『そんな事言ったって、私が原因で仲悪くなったんだから仕方ないでしょ?……ごめんね。』


謝る知香の両肩に雪菜が手を掛ける。


『ううん、意固地になった私が行けないんだから。ともち、ごめん。』


『間に入って苦しかったでしょ。ごめんね。きな子も…』


美久も謝ったが、何かおかしい。


『だからその呼び方しないでよ!』


『なにそれ?きな子って?』


知香が顔を上げると再び険悪ムードになりそうになった。


美久は雪菜の名前をもじってきな子と呼んでいたのだった。


『良いね、その言い方。』


知香が美久に同調した。


『良いでしょ?でもさ、きな子って言うとすぐ怒るんだ。』


『じゃあ、私もきな子って呼ぼ!』


『ともち〜!!』


雪菜が怒って迫る。


『きゃー、止めてー、きな子。』


知香は笑いながら逃げる振りをする。


美久も笑っている。


入学式前に二人の仲直りは出来た様で知香は胸を撫で下ろした。




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