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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
未来編
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なずなの友だち

梨香が出ていった部屋で知香はいずみに謝る。


『先生、本当にすみません。』


『なに言ってるの?チカねぇにはさんざん世話になったんだから。あんなモンスターペアレントが怖くて教師なんてやってられないわよ。』


確かに楓が加害者で太陽は被害者ではあるが、それにつけ込んで辛辣な言葉を浴びせて理不尽な要求をするのはモンスターペアレントの常套手段だ。


『それより楓ちゃん、大丈夫ですか?』


『落ち込んでいるみたい。保健室に預けたままにしているんだけど。』


『チカねぇ過保護過ぎない?トラウマは分かるけど、悪い時には叱るのは必要だと思うよ。』


『そうは思うんだけど、あれだけ辛い経験をしてきた子だし。』


『チカねぇが楓ちゃんを引き取ってからずっとそんな感じで接してきたんでしょ。逆に、今はなにをしてもチカねぇに守ってもらえるから、その反動で暴力行為に出てしまうのかもよ。』


楓がキレるのは知香にも原因があるのだといずみは分析している。


『ちょっと、なにを言ってるの?』


『PTSDについて調べたら曝露療法っていうのがあるんだって。敢えて患者が過去に経験した場所に連れていったり、同様の経験をさせても過去の様な事は起こらないという風にするみたい。昔、自分が完璧でなければ命の危険に晒されるくらいの恐怖観念を植え付けられたけど、優しいママがいるからなにをしても大丈夫だって過去に蓋をしているのが今の楓ちゃん。悪い事をしたら普通に叱られるというバランスはこれからの楓ちゃんには必要だと思いますよ。』


『確かに私の方も叱る事に臆病になってたかもしれないね。少しずつ叱る事もないとね。』


二人は楓を保健室に迎えに行った。


『ママ!』


楓が知香の顔を見て駆け寄ってきたが、知香は少し楓を睨み付ける。


『楓。楓が太陽くんにした事を楓はどう思っているの?』


『……分かんない。』


『じゃ、もし、楓がそうされたらどう思う?』


楓は過去の嫌な経験を思い出して踞った。


『やだ。痛くて、熱くて怖い!』


『でしょ?太陽くんもそういう気持ちなんだよ。分かるよね?』


『……うん。』


『だったら、太陽くんに明日謝る事。それから、今日は罰として、夜ごはんのお手伝い!』


知香自身は料理好きだが火を怖がる楓には料理を教えたり手伝ってもらう事はなかった。


この機会に少しずつ料理を覚えてもらえば一石二鳥だ。


『うん……分かった。』


徐々に、悪い時は悪いと叱っていこう。その時は自分も一緒に反省しようと知香は楓を見て思った。



翌朝、太陽は顔に包帯を巻いて登校班の集合場所に向かった。


『おはよう。太陽くん、その顔どうしたの?』


声を掛けたのは五年生の登校班の副班長だ。


『給食の時、転校生に顔にスープを掛けられた。』


『また、太陽くんその子に変な事言ったんじゃないの?』


太陽は親の躾のせいか、もともと人を傷付ける言葉を何気なく言ってしまう性格の様で、五年生の副班長はそれを知っている。


『変な事じゃないよ。だってそいつのお母さん、男だったんだぜ!』


『ふーん……。』


副班長は一瞬間を置き、太陽に聞く。


『太陽くんさ、その子のお母さんって会った事あるの?』


『ないよ。でもPTAの集まりで僕のお母さんそう言ってた。』


『そうなんだ……。』


太陽たちが学校に到着すると、ちょうど楓やなずなたちの班とかち合った。


『あ、あいつだよ。高木って奴。』


『お前なんだよその包帯!昨日のスープなんか熱くなかったろ!』


楓と一緒の登校班の祐希が太陽を見て叫んだ。


太陽は火傷などはしていなかったのである。


『おはよう、愛音(いとね)。どうしたの、あの子?』


『おはよう、なず。昨日あの子にスープ掛けられて火傷したんだって。お母さんが男だって言ったらキレられたって言ってた。』


『あ!ごめん。愛音にはまだ言ってなかった。実はあの子、ともか先生の子どもなの。』


愛音も知香の保育士時代の園児だったのだ。


休み時間に愛音はなずなから詳細を聞いた。


なずなは雪菜から前日の事件の事を聞いて、楓が学校にいられなくなるかもしれないという情報を得ていたのである。


『なず、ちょっと良いかな?』


愛音の提案になずなを承諾し、二人は三年1組に行った。


『祐希くん、ちょっと。』


先ずなずなが祐希を呼び出し耳打ちをする。


『分かった、連れてくる!』


祐希は楓の班全員を廊下に呼び出した。


『ね、昨日の事は仲直り出来たの?』


まだそんな雰囲気ではなさそうだ。


『お姉ちゃん、誰?』


登校した時に顔を見てなずなと友だちという事は楓にも分かったが、それ以上の関係は知らない。


『私はなずねぇと同じクラスの木下愛音。昔、楓ちゃんのママにお世話になったの。明日さ、二人の仲直りと楓ちゃんの引っ越しパーティーをやりたいの。楓ちゃんのうちに行っても大丈夫かな?』


『うちでやるの?たぶん大丈夫だけど……。』


以前は社宅だった事もあったし、障害を持つ楓は友だちを自宅に招く事はなかった。


『太陽くんたちも大丈夫だよね?』


太陽は愛音には逆らえない。


『う……うん。』


『あなたたちも一緒に来てね。』


あかりとさや、祐希も呼ばれる事になった。


最後に来て新しいキャラクターがどんどん出てきて収拾が付きません!



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