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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
未来編
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大暴露大会

この後、班決めが行なわれ、クラスは5人づつ6班に分かれ、席も班毎にまとめられた。


楓の班は森野あかりが班長で、村田さや、熊田太陽と蛭間祐希の女子3人男子2人という構成となった。


『高木さん、楓だからかえちゃんって呼んで良い?宜しくね。』


あかりは班長らしく、明るく誰とでも仲良くなるタイプの生徒だが、転校生の楓が病気だと聞いて、特に気を掛けてくれる。


『うん。宜しく。』


『ね、山梨ってどんなところ?』


さやは活発な女子だ。


親の趣味で毎年国内のあちこちを旅行しているのでさや自身もご当地話が大好きだ。


『目の前に富士山があって、夏は暑いよ。』


『ここも夏は凄く暑いよ。』


『うん。去年の夏休み遊びに来たから知ってる。』


なんとか、楓もクラスや班に馴染もうとしている。


(森野さんの班なら大丈夫かな?)


班はくじ引きで決めたが、森野あかりの班なら楓も打ち解けるだろうとは思った。


しかし、なずなの時の様に突然キレたりするので目を離すのは危険である。



新学期が始まると直ぐにPTAの集まりがあった。


『今年1年、三年1組の担任を致します大森です。宜しくお願いします。』


担任として挨拶をすれば後は去年役員をやった親に任せれば良いが、いずみは独自に作ったプリントを全員に回した。


『PTSD?』


『はい。皆さんご存知かと思いますが、心的外傷後ストレス障害と言って大きな災害や交通事故、虐待などで大きなショックを受けた事がトラウマとなり、それがもとで起こる障害の事を言います。』


近年、大きな災害や社会問題になっている家庭内暴力などにより、PTSDを発症する患者は多い。


『この度1組に入りました転校生の高木楓さんがPTSDという診断を受けていて、皆さんにご理解戴きたいと思いプリントを作成致しました。』


プリントにはPTSDの症例の他、前の学校での楓の症状も書かれている。


いずみの説明の後知香が立ち上がった。


『はじめまして。高木楓の母で高木知香と申します。実のところを申しますと、楓は私たち夫婦の子どもではございません。』


子どもから聞いていた親もいたが、教室は騒然となった。


『私たち夫婦というより私は子どもが作れない身体なので、楓は養子縁組をした里子なのです。楓の産みの親の詳細は知る事は出来ませんが、長い間虐待を受けていて、実際楓に初めて会った時には無数の傷がありました。』


『ちょっと待って下さい。高木さんが子どもが作れないのは分かりましたが、なぜ楓ちゃんの様な子を引き取ったんですか?あなた方夫婦の自己満足で、障害のある子どもを育てたなんて美談にするのは構いませんがそれで迷惑を被るのは私たちの子どもなんですよ。』


プリントを読んで知香に異議を唱える母親が訴えた。


『確かに、皆さんはお子さんを愛情を持って今日まで育てて、PTSDになるような事はなく過ごされたと思います。もし楓がその様に実の親から育てられたら私たちは楓に会う事もなかったのです。私は、初めて楓の目を見た時にこの子を自分の子として育てたい、この子の笑顔を見てみたいと感じ、その瞬間、私は楓の親になろうと思いました。PTSDだろうが、障害を持っていようが、楓には愛情を与えて私たちの子どもとして育てたいと思ったのです。』


知香が懸命に反論し、その言葉に賛同する親もいる。


『もしかして、あすなろ保育園のともか先生じゃないですか?』


保育士時代の知香を知っている親がいた。


『私、楓ちゃんと同じ班の森野あかりの母で森野早紀と申します。知香先生は受け持ちは違いましたが、凄く優しい先生で子どもたちの評判も良かったです。先生が子どもを作れないとは知りませんでしたが、先生のお子さんを思う気持ちは本物だと、私は信じています。どうか、みんなで楓ちゃんを受け入れて上げられないでしょうか?』


保育園でも知香の素性はほとんどバレしていなかったので下手に元男性とか言わなくて良かったと思う。


『あの。』


別の手が挙がったが、見た事のある顔だ。


『私、村田さやの母のしおりと申します。』


(村田?……しおり……?佐藤さん?!)


知香の1年後輩で生徒会長だった佐藤しおりは村田姓となっていた。


(という事はあの村田くんが旦那さん?)


知香の一代後の生徒会長のしおりと副会長の村田義人はそのままゴールインした様だ。


『最初、高木さんと聞いてぴんとしませんでしたが私たち夫婦は中学の時、旧姓白杉知香さんと一緒に生徒会で仕事をしていました。白杉さんは性同一性障害のトランスジェンダーでありながら、数々の伝説を残した名物生徒会長で……。』


(……ああ、言わないで!)


知香が元男性と暴露され、再び教室は騒然となる。


『でも、昔から知香さんの一本気なところは変わっていません。知香さんの気持ちは本物だと断言致します。私も主人もうちのさやも楓ちゃんを支えていこうと思います。』


しおりが楓の同級生の母という事で、だいぶ雲行きが変わってきた。


『ともか先生が男?』


早紀も驚いている。


『今は手術をして戸籍も女性なので主人とは正式に夫婦なんですが……。』


手術を受けようが戸籍を変えようが関係なく、話題は楓ではなく完全に知香の方になっていた。


『大変申し訳ございません。』


いずみが口を挟んだ。


『私も実は姉が高木さんと同級生で、小学生の頃から高木さんを姉の様に慕っていました。昔から高木さんは小さい子どもが好きで、私たち下級生のためにイベントを企画したり、勉強を教えてくださりました。私が今こうして教職の立場にいるのは高木さんのお陰と言っても過言ではありません。』


(いや、過言でしょ?いずみちゃん、盛り過ぎ!)


放課後見守り隊で夏休みに勉強を教えたのは事実だが、いずみは最初から姉譲りの本好きで勉強家だったから直接教えたりはしなくても優秀だったのだ。


PTAの集まりは大暴露大会と化してしまった。


懐かしい後輩たちが大人になって帰ってきて、在庫一掃セールみたいになっていますが、それぞれみんな大切な知香の仲間なので、再登場と相成りました。

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