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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
女性化編
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親衛隊同窓会

知香はO宮にある保育専門学校の入学を決め、4月から専門学校生としてスタートを切る事になった。


高校の卒業式も終わった春休みのある日、スノーホワイトで中学時代の友人たちが集まっている。


『皆さん、高校卒業おめでとうございます。今日は知香親衛隊の同窓会にお集まり戴き、誠にありがとうございます。』


1学年下で知香の次の生徒会長だった佐藤しおりが挨拶をした。


司会は同じく副会長だった村田義人との二人が務める。


『今日はお手伝いありがとうね。お嬢さまに給仕してもらえるなんて申し訳ないけど。』


給仕はしおりたちの同級生であるこのみと、さらに一年後輩の陽菜が共に行なってくれる。


『他ならぬ知香さんの頼みです。この店の制服、一度着てみたいと思っていましたし。』


『久し振りにこのみさんに会えて一緒の制服を着てお仕事出来るなんて幸せです。』


陽菜は中学卒業時に今井家のメイドは辞めた様だ。


『それでは乾杯の音頭を青葉台小学校養護教諭、山本香奈子先生にお願いします。』


村田の紹介で香奈子が立ち上がった。


『皆さん、卒業おめでとうございます。今日は知香親衛隊の同窓会にお呼び戴いてありがとうございます。今日は卒業される皆さんが主役です。それでは乾杯!』


グラスを交わす音がする。


乾杯の後は食事をしながらそれぞれの進路を話してもらう。


『それでは親衛隊の発起人である原田さんからお願いします。』


最初に知香が保健室から教室に移る時に知香を守るため親衛隊を作ろうと言った美久が立ち上がる。


『えー、原田美久です。実は私まだ卒業出来ていません。3年間の看護科の過程を終え、4月から残り2年間は看護養成科で実践的な勉強を致します。』


美久の高校は卒業まで5年掛かるが、在学中に看護師の国家試験を受ける事が出来、その合格率は毎年100%を続けている。


小学生の頃から一貫して看護師を目指していた美久の夢は後一歩だ。


『大森のぞみです。東京の私大に合格しました。自宅から通いです。将来は出版社の編集が出来たら良いなって思っています。』


本の好きなのぞみは毎朝読書が出来るという事で自宅からの長い通学時間を楽しみにしている様だ。


『松嶋はずみです。長野の大学に合格しました。今はチカの実家にお世話になっています。』


『結婚はいつですか?』


中三の時のクラスメイトだった優里花が質問する。


『まだ全然考えていません。それと、4月から夕方のニュースワイド番組のリポーターをする事になりました。ローカル番組ですが、全国ネットで中継するコーナーもあるそうです。』


[信州ほっとワイド]でアシスタントをしてくれた田中早苗が以前務めていた仕事であり、正式な局アナでない契約アナウンサーの将来の期待枠にはずみは抜擢されたのだ。


『野村優里花です。私は短大に行きますが、卒業したら会田くんと結婚する予定です。』


優里花と会田とは中学二年生の時校外学習で良い関係になったが、その後は騒がれなかったし、本人の口からも語られる事はなく、密かにその恋は進展していた。


『水尾ありさです。私は、暫くカナダに海外留学に行く事になりました。』


『え?カナダ?』


『一年間の語学留学です。向こうで彼氏掴まえてきます。』


すでになんの目的なのか分からない。


次は奈々と萌絵が二人で立ち上がった。


『私たち、結婚します。』


『えー?』


知香は奈々と萌絵がそういう仲だとは薄々感じていたけれど、まさか結婚なんて言葉が出るとは思わなかった。


『群馬で立ち上げたブランドが少し軌道に乗り始めたので、二人で決めました。近隣の自治体では、O泉町に同性パートナーシップ条例があり、20歳以上という条件なのでそこに住むつもりです。』


『こうちゃん知ってたの?』


グラスの水を足しに来たこのみに知香は聞いた。


『はい、私オーナーですから。』


もともとこのみの祖父の育三郎の工場跡を利用して二人はブランドを立ち上げたのだが、隠居した育三郎に代わり今はこのみがブランドの代表者となっている。


『みんな凄いなぁ。よ~し、私も頑張ろう!いっくよ~、プリスマ、シャワー!!』


子ども向けの人気アニメ番組のキャラクターの決めセリフを紀子が叫んだ。


『高野紀子です。私は声優養成の学校に入学が決まりました。先は長いですが、頑張ります。』


紀子も、高校在学中はボイストレーニングなどをして過ごし、ようやく夢の入り口に辿り着いた。


『志田雪菜です。今日はご利用ありがとうございます。私は卒業したので、この店を引き継ぐためにこれから頑張っていきます。』


雪菜の場合は規定路線である。


『今日の食事を作ったのは私のフィアンセの進藤恭太郎です。』


『なにそれ?聞いてないよ!』


雪菜にフィアンセがいるなんて全くの初耳だった。


『皆さんはじめまして。調理学校を卒業して1年前からスノーホワイトでお世話になっています進藤です。……実は雪菜さんの誕生日の日にやらかしちゃいまして……。』


一瞬、どういう事かみんな理解が出来なかったが、お腹をさする雪菜を見て分かった。


『今、5ヶ月で安定期に入りました。一時期は紀子に迷惑を掛けたし、お父さんお母さんには散々怒られたけど……。』


スノーホワイトでバイトをしていた紀子は雪菜の悪阻の時、だいぶ尻拭いをしたみたいだ。


『きな子、おめでとう!』


祝福の拍手の後、最後に知香と健介が立ち上がった。


『白杉知香です。私は昨年9月、戸籍も女性となりました。来月からはO宮の専門学校で保育士になる勉強を始めます。』


『高木健介です。俺は山梨の大学に行き、知香の様な性同一性障害の人たちの手助けとなる様に勉強し、時間は掛かると思うけど医者として自立出来たら知香と結婚します。』


知香は頬を赤くして頷いた。


『頑張って!』


知香は仲間たちに励まされ、照れながら健介の手を握った。


中学の仲間たちはみんな道は違うが、それぞれが夢のスタート台に立ったのである。

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