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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
女性化編
281/304

家裁でデート

8月の後半に入ったが、暑さはまだまだ続いている。


知香は胸を強調するサマードレスにつば広の帽子を被り、入院中に京香から習ったメイクもして駅に向かった。


『ウォータープルーフだけどメイク大丈夫かな?大人の女の人って大変。』


改札脇のコンビニで冷たいジュースを買って涼んでいると、健介がやって来た。


『悪い、遅くなった。』


『大丈夫、はいこれ。』


知香がジュースを手渡した。


『なんか変わったな……。大人になったというか……。』


つい健介の視線は大きくなった胸にいってしまう。


『やっぱり健介くん、男の子だね。』


『知香とは違うよ。』


二つ先の駅から歩いて15分くらいで裁判所に着く。


『こういうところは出来ればあまり来たくないな。』


今回の知香の申立ては自分の事なので前向きな審判だが、家庭裁判所の多くは相手と争いや破産申立てなど、あまり良いイメージはない。


『その言葉、信じているからね。』


もし二人が結婚してもその関係が破綻してしまえば調停や裁判で争う事もあり得るが、知香は将来そうならない様望んでいる。


『性別と名前の変更の申立てをしたいのですが。』


『家事受付係ですね。そこの階段を上がって2階になります。』


受付で申立てをする係を聞くと、受付の女性は知香をちらりと見て答えた。


階段を上がり、家事受付係に向かい、もう一度同じ様に聞く。


『性別と名前の変更の申立てです。』


『申立てをするご本人ですか?』


『はい。』


『書類は揃ってますか?』


知香が申立て書と戸籍謄本や診断書などの書類を提出した。


『受理致しました。後ほど申立て書の確認のためご自宅に書類を郵送致しますので、必要事項を記入して返送して下さい。』


もう一度同じ様な内容のものを書いて返送するのは本人かどうかの確認のためだろうか?


『この場で聞き取りとかはしないんですか?』


『もし内容に不備があったり不審な点があれば再度来て戴く事もありますが、基本的には郵送した書類に記載致します。』


面倒な事は一度で済ませたいがそういう訳にはいかない様だ。


知香と健介は裁判所を出て、駅までの道をゆっくり歩く。


『知香は凄いよな。』


『なんで?』


『自分で考えて、ちゃんと道を開いたもんな。』


『まだまだだよ。自分が女の子になりたいからやっているだけだし。道って言ってもこれからだもん。仕事だって結婚だって……。』


健介の前という事もあり、言葉に詰まった。


『俺、知香がタイに行っている間に考えたんだ。』


一瞬、沈黙があり健介が口を開く。


(まさか、振られるんじゃ?)


知香に緊張が走る。


手術をして戸籍も女性になっても子どもを産む事が出来ない中途半端な人間には変わりない。


曲がった事が嫌いな健介が知香に愛想をつかしても無理はないと思う。


『俺、山梨の大学を受ける事にした。』


知香の思ってもみない発言だった。


『東京の大学を目指すんじゃないの?』


父親の後を継ぎ、医者を目指す健介は医学部のある東京の有名な国立か私大に行くのだとばかり思っていた。


『俺さ、医者になってなにをしたいのか考えていたんだ。オヤジの後を継げばそれで良いのか?って。それでずっと考えてさ。』


『それで?』


『今は知香みたいな女になりたい男の子や男になりたい女の子ってたくさんいるだろ?でも性別適合手術って日本じゃまだ数少ないし、みんなタイに行っているじゃないか?』


日本でも少数の病院や医師が手術を行なっているが、それでもまだタイに行って手術を受ける人が大半だ。


『でな、調べたら岡山と山梨の大学付属病院の形成外科で積極的ひ手術をやっている事が分かったんだ。』


『健介くん、それって……。』


『俺は知香の様に自分の性別に悩んでいる患者を俺の手で助けたいんだ。』


一番最初に知香に会った時、認めないと言っていた健介がそういう事を言ってくれるのが知香は嬉しかった。


『山梨って近いけど遠いね。』


地図上では隣の県だが、鉄道や高速道路を使うと一度東京・神奈川を経由しなければならない。


『少し不便だが、その方が勉強に集中出来ると思う。』


『大丈夫?』


健介の事だからよほどの事がない限り脇目も振らずに勉強する事だろう。


『それなら私も早く運転免許取らなきゃね。』


『知香が車の免許?』


健介が少し意外な顔をした。


『戸籍が変われば知香の名前で免許取れるんだよ。知香として初めて自分を証明出来るものなんだから。』


マイナンバーなども変更届を出せばカードを作る事も出来るが、18歳になった知香は自力で自分の身分証明を作りたいのだ。


『うち、車あるし免許さえあれば山を越えて山梨に行けるよ。』


『お前の運動神経で山道とか大丈夫なのか?』


『スキー1級の腕前を見くびらないでよ。』


知香はテレビの仕事のお陰で長野に行く機会が多くなり、時間があればスキーに行って2度目の冬に念願のスキー検定1級を獲得していた。


『先ずは教習所だな。』


知香の新たな目標が出来た。

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