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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
女性化編
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戸籍の変更

お盆が終わり、土曜日は1ヶ月振りに『信州ほっとワイド』の生放送に出演した。


番組は知香がタイで手術を受ける事を何度も紹介していたためこの日の放送は知香の復帰で盛り上がり、スタジオの端では博之と由美子も見学している。


『車イスに座って司会やるんですか?もう普通に歩いているし大丈夫ですよ。』


スタジオには知香のため車イスが用意されていた。


『4時間の長丁場なんだしその方がアピール出来るから良いでしょう?』


確かに4時間立ちっ放しは辛いかもしれないがそういうやらせ的な演出は好きではない。


そう思いながら車イスの上にいつも使っているドーナツクッションを置き、本番に臨んだ。


『こんにちは~。信州ほっとワイド、司会のはずみです。そして、今日はタイで女の子になる手術を受けていた私のパートナーが帰って参りました。』


『みなさん、お久し振り。知香です。こんな格好で失礼します。』


車イスに座ると馴染みのスタジオも違って見え、カメラに対しても目線を上げなければならないのでかえって疲れる。


番組の途中には応援メッセージを紹介するコーナーがある。


『今日は知香のためにたくさんのメール、FAX、つぶやきが届いています。まず上田市の6文銭さん。[知香ちゃんお帰りなさい。胸がパワーアップしたみたいですね。これからも頑張って。]』


はずみが選んだメッセージを取り上げる。


『それから千曲市のあんずの里さん。[お疲れさま。またテレビで知香が見られて嬉しいです。僕も頑張ります。]』


[あんずの里]さんは毎回番組にメッセージを寄せていて、知香がうつの時にも早苗にメッセージを読まれたのを覚えている。


『今日はそのあんずの里さんが直接スタジオにお祝いに来ています。』


(え?)


知香がスタジオの扉の方を振り返ると、花束を持った陽平がやって来た。


『あんずの里さんって……。』


『実はあんずの里さん、知香と同じ日に手術を受けて偶然タイの病院で一緒になったそうです。』


はずみが紹介した。


『番組復帰、おめでとう。』


テレビカメラの前だからか、陽平にいつもの毒舌ではなく素直に祝福された。


『ありがとう、びっくりした。』


そんなサプライズがあったが、番組が終わると直接埼玉の自宅に戻る。



『1ヶ月振りの自分ちだぁ~。』


入院生活の間に学校の課題はほとんど済ませていたので2学期が始まるまでにやるべき事は家庭裁判所での申立てくらいである。


戸籍を男性から女性に変更し、それとは別に名前の変更も届けて、それらが認められれば晴れて白杉知香という女性になるのである。


名前に関しては15歳からと法律で定められていて、6年近く知香の名前で学校に通っている実績があるので手術を受けなくても変更は出来るが、面倒は少ないし、けじめを付けるために性別変更と同時に行なう事にした。


先ずは性別変更と名前変更の申立て書をそれぞれ作成する。


申立て書は裁判所のホームページからダウンロードをして必要事項を記入していく。


性別変更の申立て書は他の申立て書と同じ様式になっていて1枚目には現在の住所や氏名などを書く欄があり、2枚目は申立ての趣旨が4行、申立ての理由が15行ある。


先ず1枚目に署名捺印をして、2枚目の趣旨にホームページに従って[申立人の性別の取扱いを男から女に変更するとの審判を求めます]と書く。


『なんか仰々しいな。』


2枚目の理由には、男である事が苦痛であり、女性として生活するに至った経緯やいつ頃から病院に通い治療を受けてきたか、いつ性別適合手術を受けたか、周囲に女性として認知され生活をしているか、現に結婚して未成年の子どもがいないかなどを箇条書きにする。


[1、私は小学5年生頃から他の男子と一緒に着替えたり、裸を見られるのが苦痛になり不登校に到りました。その後、周囲の協力を得て女子として学校に通う様になりました。


2、2019年1月よりジェンダークリニックに通い、性同一性障害の診断を受けて治療を受け、2021年5月よりホルモン治療を開始し、2024年7月23日タイ国○○クリニックにて性別適合手術を受けました。


3、現在通学中の学校では、完全に女性として認識されており、名前も通称として「白杉知香」を使用しています。


4、申立て人は、このように外見も中身も全く女性なのに戸籍などの性別欄が男性となっているため社会生活上不便な思いをすることがあります。従って、性別の取扱いを男から女に変更する審判を求めます。


5、なお、申立人には、子がいませんし、結婚もしていません。]


ホームページにあった記載例をほとんど真似して書き上がった。


1枚目に800円の収入印紙を貼り、提出書類として病院でもらった診断書2通と戸籍謄本を添える。


一方の名前変更の申立ては専用の申立て書があり様式が異なり、最初から趣旨欄に( )を( )へ変更することの許可をもとめると印刷されており、それぞれ(知之)(知香)と書くだけで良い。


さらに理由欄には8つの項目から選ぶ様になっていて、4、異性とまぎらわしい・7、通称として永年使用した(使用を始めた時期 平成31年1月)・8、その他(性同一性障害のため)にそれぞれ○を付け、詳細を書いた。


提出書類としては永年使用の証明として学生証をコピーした。


『お母さん、一緒に行けないけど大丈夫?』


月曜日を待って申立て書を提出するが、知香の手術に同行し、1ヶ月近く仕事を休んだ由美子はもうこれ以上休む訳にもいかない。


『大丈夫。提出するだけだから。』


そう言って知香は駅に向かった。


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