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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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女の子一年生

神社に着くと平日なのにかなりの人出があった。


『せっかくだからお参りしようよ!』


ロリータ服姿の小学生が神社でお参りというなんともミスマッチな雰囲気が逆に絵になりそうで、写真を撮り合った。


神社の脇を流れている小川の堤に大きな桜が花びらを散らして綺麗だった。


他の見物客が写らない場所を見つけて


『ここ、良いね。』


と各々がポーズを取って撮影をした。


『あれ?』


大きなレンズを着けたカメラを構えていたカメラマンが振り返った。


美久の父、徹だった。


『白杉さん…だよね。』


卒業式では[知之]で参加していたので知香を見て一瞬分からなかった様だが、はずみ達も一緒に居たので間違いないと確認して声を掛けた様だ。


『おじさん、こんにちは。』


『白杉さん、女の子の姿もやっぱり可愛いね。今日はまたみんなずいぶん素敵な格好だ。』


卒業式の時、[知之]に徹は知香の姿も撮りたいと言っていた。


『ねぇねぇ、いずみは?』


『大森さんの妹さんだね。いずみちゃんも素敵な可愛い天使さんだ。』


自然の写真だけでなくたまにポートレートも撮るらしく褒め上手な徹だった。美久の母・美子もそれに[騙された]のだろう。


『今日はここの桜を撮りに来たんだけど、こんなに素敵な被写体がたくさんいるんだ、みんなを撮ってあげよう。』


あんな高級なカメラで撮って貰えるなんてラッキーだ。


本人は居ないけれど持つべき者は友だと思った。


『美久も来れば良かったのに。』


徹が呟いた。


パーティーの時に美久には会計をやって貰ったので誘っても良かったのだが、どうも美久と雪菜の仲があまり良くないみたいなので声を掛けなかったのだ。


『きみは志田さんかな?だいぶ大きくなったから分からなかったよ。』


徹が一人地味な私服の雪菜に気付いて声を掛けた。


『おじさん、久しぶりです。』


『三年生の頃だったかな?美久と一緒に撮ったよね。覚えてる?』


雪菜と美久が一緒に?という事は昔は仲が良かった?


仲が悪そうに見えたのは自分の思い過ごしだったのか、それともその後に二人に何かあったのか?


『おじさん、その時の写真ってある?』


知香は徹に聞いてみた。


もしかしたらその頃の二人がどんな仲だったか分かるかもしれない。


『ハードディスクにデータは残してあるよ、卒業式と今日撮った写真も一緒に後で落として美久に渡しておくから。』


『あの、昔の写真の事は美久には言わないで戴けますか?美久、怒るから。』


『分かったよ。おじさんも美久に怒られたくないから。』


笑う二人の横で聞いていた雪菜が睨んで呟いた。


『悪趣味……』


(うわっ!ユッキー怒ってる!)


でも、雪菜も美久も大切な親友である。


過去に何があったか分からないが、二人の仲が悪いのは辛い。


そんな事を思っていると、いずみの機嫌がおかしくなってきた。


変な空気に触発されてしまったのだろうか?


『どうしたの?いずみちゃん。』


知香が声を掛けるといずみが泣き出した。


『……だって、だって……、四月になったらお姉ちゃんたちと一緒に学校行けなくなるんだもん!』


知香が教室に復帰した日から毎日一緒に登校していたのだ。


特に知香を慕っていたいずみが寂しさを露わにした。


『ごめんね。せっかく仲良くなったのに。』


知香がいずみの視線に合わせてしゃがんで謝った。


『でもね、チカねぇはまだ女の子一年生なの。いっぱいいっぱいお勉強しないと本当の女の子になれないから中学校で頑張るの。いずみちゃんは今度四年生だから、チカねぇよりず〜っとお姉さんなんだよ。』


小四が中一よりお姉さんとか言っている意味が自分でも分からないが押し通す。


『私はね、女の子になる前はお友だちいなかったんだよ。でもこうしていっぱい友だちが出来たのはのぞみお姉ちゃんやいずみちゃんのおかげなの。私も中学校に行ったらもっといっぱい友だち作るからいずみちゃんもいっぱい作ってね。』


『……うん……』


『じゃあどっちがいっぱいお友だち出来るか、競走しよう。』


『……分かった。……いずみ、チカねぇに負けない。』


いずみに笑顔が戻ってきた。


『天使さんが泣き虫はダメだぞー。』


涙を拭くいずみ。


(ユッキーと美久も仲良くなれたら良いなぁ。)


雪菜の方に目をやると、目を逸らされたが入学したら一緒になる機会はあるだろう。


私も二人の仲を繋ぐキューピッドになれたらなぁと泣き虫天使のいずみを見て知香は思う。


(女の子一年生か…どんな中学生活になるんだろう。)


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