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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
女性化編
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改造人間

知香はアイと綾音と一緒に病棟に歩いて向かった。


その間、綾音はアイに日本語とタイ語を交えて専門的な用語を教えている様で、知香は蚊帳の外だった。


綾音は智美や他の患者を見て回るため、アイに託して病棟を後にする。


待合室で待っていると、看護師が来て体温計を渡されたので脇に挟んで体温を計る。


『日本と一緒だね。』


36.2度、平熱だ。


診察室では軽い問診があり、血圧を図ったりして次は悌毛だ。


手術する部分の回りの毛を看護師が剃ってくれる。


もともと第二次性徴が始まる前にアンチアンドロゲンを投与して男性化を抑えてきた知香だが、多少の毛は生えている。


『これもなくなっちゃうんだな。』


そう思うと少し寂しい。


さらに薬を渡され、飲んでからそれが下剤だと分かった。


やがて便意をもよおし、トイレで朝食べたものはほとんど出したがさらにシャワー室に連れていかれ、腸内を完全にきれいにする。


『ともち、大丈夫?』


『お腹空いちゃったよ。』


当然食べる事は出来ないが、敢えて冗談を言って気を紛らわした。


ここからは車イスに乗って手術室に移動するが車イスを見ると麗の事を思い出す。


(まさか自分が乗せられるなんて。)


体験で車イスに乗った事はあるが、患者として乗るのは生涯初めてである。


手術室に入る前にストレッチャーに寝かされると、綾音もやって来た。


『麻酔で直ぐ意識なくなるけど、起きたら女の子だからね。』


『ありがとうございます。アイもありがとう。』


手術室に入り、いよいよ手術台に仰向けになると、手は動かせない様に固定され、右手の甲に点滴が、左手と胸には電極が付けられた。


見上げた視線の先にはテレビでもよく見た無影燈が眩しい。


(仮面ラ○ダーみたい。)


今もシリーズで続く人気ヒーロー番組だが、一番最初のシリーズでの悪の組織に改造手術を受けるオープニングのシーンは今の子どもでも知っている。


(私、改造人間になるのか……。)


起きたら悪い怪人になるイメージをしてそれも悪くないかなと妄想をして笑い、看護師に不思議がられる。


(マスク、来たぁー!あれされると直ぐ寝ちゃうんだよね。えと……今の時間は……。)


口にマスクが掛けられ、時計に目をやって1時55分と確認したところで意識がなくなった。




(……寒い……。)


目覚めたのはひんやりした処置室で裸のままストレッチャーに乗せられていた。


(終わったのかな?)


下半身は違和感でよく分からない。


首を横にすると、もうひとりストレッチャーに乗せられている人が寝ていた。


(FtMの子?)


知香とは逆に女性として生まれ、ここで男性になる手術を受けたと思われる患者の様である。


知香とは違う性に生まれ、おなじ日にこの病院で手術を受け、また違う性になったという変な因縁を感じる。


その元女性も目を覚まし、知香に気付いたので笑顔を送ったが、その瞬間激しい痛みに襲われた。


『痛い痛い痛い痛い痛い痛い!』


何度痛いを繰り返しただろうか、こんな激しい痛みは今まで経験した事がない。


『痛い痛い痛い痛い痛い!』


自分でも情けないと思うが叫ばずにはいられない痛さである。


必死に左手でナースコールのボタンを押し、痛み止めを入れてもらった。


『はぁ、はぁ、はぁ……。』


痛みで涙が溢れ出ている。


『死ぬかと思った……。』


『……大丈夫?』


同じSRSでもFtMの方が痛みは少ないのだろうか?


『凄く辛そうだね。可哀想に……。』


同情するなら変わってくれと思うが今さら男に戻るのも嫌だ。


『……これくらいの痛みなんて、女の子になれると思えば大したことない……うっ!』


下手に喋ると響く。


『せいぜい強がると良いよ。可愛こちゃん。』


なんか頭に来るが、これでまた激痛が走ってきたら元も子もないので無視をする。


(せっかく女の子になれたのに最初から変な奴と会うなんて……。)


違和感に加え、気分は最悪だ。


(どうせ男になるなら悪い怪人になれば良かったのに。)


悪役にはちょうど良いと思った。


二人とも暫く放置されていたが看護師がやって来て患部の消毒などをして、ようやく引き離された。


ストレッチャーに乗ったまま部屋に入り、ベッドに移される。


『お帰りなさい、知香。』


いつもともちゃんと呼んでいた由美子が初めて知香と呼んでくれた。


『ただいま、お母さん。……ありがとう。』


『知香も頑張ったね。』


母のひと言ひと言が嬉しかった。


『痛くない?』


『今は少しだけ。』


昨日の智美よりはまだましな気がする。


『みーちゃんはどうしてる?』


『だいぶ昨日より良くなったみたいよ。あまり痛いって言わなくなったし。』


この辛さも少しずつ緩和されるなら我慢するしかない。


『お父さんに写真送ろうか。』


アイにスマホを渡し、由美子とツーショットの写真を撮ってもらった。


『なんか酷い顔!』


『仕方ないでしょ。ありのままなんだから。あなたの生まれた時なんか猿そのものだったんだし。』


その写真は恥ずかしくて他人には見せられない。


『みんなにも送らなきゃ。お母さん、アイと一緒の写真も撮って。』


ぎりぎり我慢出来る痛みはあるが、出来る限り最高の笑顔を作り、[女の子になりました。]というメッセージと共に友だちや世話になった人たちにメールを送った。


『やだ、返事が止まらない!』


日本は2時間早い深夜にも関わらず、祝福の返事が続いている。


『みんな心配してくれてたんだよ。』


『ありがとう……。』


知香は遂に念願の女の子になれたのである。


手術が終わりました。


ほぼ一緒に手術を受けたFtMの子よりだいぶ辛そうですが、知香の夢が叶った瞬間です。



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