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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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お花見撮影会

『えー?やぎっちの甘ロリ、着るの?』


電話の向こう側ではずみが素っ頓狂な声を上げた。


いつも冷静なはずみには珍しい事だ。


『無理なら良いけどさ、着てみると結構ハマるよ。』


ハマった本人の弁だけに説得力がある。


『それにしても、人は見かけによらないよね。あのやぎっちが……ってチカもそうだけど。』


それに関しては否定しない。


『分かった、卒業記念と言う事でいっちょ着てみようかな?』


冷静な分さばさばしている性格のはずみなので助かる。


のぞみは、妹のいずみも連れて行きたいと言った。


いずみは人懐っこく、知香の事が大好きで知香も自分の妹の様に思っている。


『でも、いずみちゃんに合う服無いんじゃない?自分だけ着てないと怒るよ。』


『うーん、あ、そうだ!去年のハロウィンで何か着てたはず。』


『血だらけとかダメだよ。』


『おかあさんに聞いてみるよ。』


のぞみも快諾してくれた。


電話を切ると、母に呼ばれた。


『なぁに?』


『I崎のおじいちゃんがね、ともちゃんの入学祝いに何か欲しいもの買ってやるだって。』


I崎は群馬県の地方都市である。


知香の住むF市とは川を挟んだ向こう側で母の実家がある。


今年の正月は[知之]が引き籠っていたため挨拶に行かなかった。


『春休みに遊びに来いって言うんだけど、まだ言ってないからね。どうしようか?』


[知之]が知香となった事を母方の祖父母も長野に居る父方の祖父母も知らない。


『でもいつかは言わなきゃならないんだし行かなきゃおじいちゃんうるさいよ。』


正月に来なかったから余計にそう思う。


『こういう事はちゃんと自分で言う様にするよ。』


とりあえず電話をする事にした。


『もしもし、おじいちゃん?』


母方の祖父・諏訪勝人はまだ還暦前の59歳なので声も若い。


『知之か。卒業おめでとう。』


『ありがとう。正月行けなくてごめんなさい。』


様子を伺いながら会話をしてみる。


『もう身体の方は良いのか?』


引き籠ってでは無く病気で寝込んでという事になっている。


『うん、先月インフルエンザにもなったけどもう大丈夫。』


ある程度実話を交える。


『ともはまだ声が高いな。そろそろ変声期じゃないか?』


薬で性徴を抑えており変声期で声が低くはなっていない。


ただ、普段意識して高い声を出す様にしているので急に低くしようとすると却っておかしくなる。


『土曜日にこっちに来るならSL撮りに行くから一緒に行かないか?その後に温泉でも入りに行こう。』


『えー?電車はいいよぅ〜。』


祖父は撮り鉄で知香もよく小さい頃撮影に連れていかれた。


『電車じゃない、機関車と客車だ!』


鉄道オタクはこんな細かい所に拘るから嫌だ。


それに知香は日帰り温泉などの公衆浴場には入れない。


『フラワーパークとかで良いんだけど。』


フラワーパークなら祖父の自宅から一時間も掛からない。


『そうか、じゃあその後進学祝いを買いに行こう。』


知香は受話器を下ろすと


『電話じゃ伝えるの難しいよぅ〜。』


と嘆いた。


『仕方ないわね。急に行くと驚くだろうけど。』


二人は覚悟を決めた。



お花見を兼ねた撮影会は祖父の家に行く前々日の木曜日に行く事になった。


最初に雪菜の家に集まり、近所である萌絵の自宅に移動した。


『チカねぇ、卒業おめでとう!』


のぞみの妹、いずみは天使の羽根を付けた白いドレスを着ていた。


『ありがとう!いずみちゃん、ホントに天使みたい!』


いずみの微笑みが可愛い。


萌絵の部屋には10着以上ロリータ服があり、全て母が買ってくれたものだという。


『こんなにいっぱいどうするの?』


『ロリータでもクラロリとかゴスロリとかいっぱいあるんだよ。』


無口な萌絵の力説にみんな『ほーっ』と唸った。


ゴスロリくらいは聞いた事がある。


『クラロリ?』


『クラシカルロリータ。こんなの。』


お嬢様の様なドレスだ。


『はずみんはこういうの良いと思う。』


はずみは普段から落ち着いているから余計お嬢様っぽい。


『ありささんはゴシックでどう?』


ありさは背が高くすらっとしている。


『知香はこれ。』


普段着としても大丈夫そうなデザインだが、スカートの花柄が可愛い。


『パーティーの時は姫だったし知香は目立つからね。』


はずみとのぞみは萌絵が次々とみんなの衣装を決めていくのにも驚いたが知香を呼び捨てにしていておかしいと思った。


『やぎっち、変わったよね。』


のぞみがはずみに問いかけるとはずみも頷いた。


『やっぱチカの影響かな?』


さすがに知香と萌絵が恋仲になったのは分からない。


T神社は駅の向こう側なのでかなり歩く。


最初はみんな恥ずかしそうに歩いていたが、道行く人の注目を集めているうちに慣れた。


普段着で一緒に歩く雪菜の方が恥ずかしく感じる。


『だから一緒に着ればって言ってんのに。』


『ヤダってば。』


ここまで雪菜が頑ななのは小さい頃、無理やり母親に可愛い服を着させられたトラウマでもあるのかと知香は思った。

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