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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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快気祝い

マイクロバスから少し遅れて、見慣れたワンボックスカーが到着した。


『麗さん、こうちゃん!』


上西が運転する麗のウェルキャブにこのみと遥が先に降り、麗の車イスが降ろされる。


『こちらに来たのは久し振りですわ。』


『お姉さまと一緒に来たのは初めてですね。』


姉妹となった麗とこのみだが、この場所に来たのはそれぞれ別の機会だった。


『あらあら、みなさんいらっしゃい。リッキー、元気そうね。』


『サチコサン、アイカワラズキレイデス。』


食事の支度をしていた佐知子が出迎えると、直ぐにリカルドがいつもの挨拶だ。


『リカルド!』


『ウララ、アイカワラズコワイデス!』


麗が怒り、リカルドが縮こまると笑いの渦が起きた。


『さ、みんな疲れたでしょ。中にどうぞ。』


玄関には麗が以前来た時にはなかったスロープが付いていて車イスのまま部屋に上がれる様になっている。


今回、中学の同級生組は雪菜、美久、のぞみ、萌絵、奈々、ありさ、優里花に高校でも一緒の紀子と健介、高校組はみどり、好美、アイ、菜々美、瀬里奈、福島、それに麗とこのみ、遥と運転手のリカルドと上西の総勢20人が知香の実家に集まった。


『びっくりしたよ。誰もなにも言わないし。』


『ごめんね、チカに言うと余計な気を回すから。』


ずっと一緒にいたはずみが言い出した様だ。


『ともち終業式の前に急に学校来なくなったからみんなでともちの家に行ったのに会えなくて心配したんだよ。』


みどりたちが家に来てくれた時が一番症状が酷かったのだ。


『ごめんね、ぐり。瀬里奈さんもありがとう。』


『くれぐれも葉月には内緒だからね。』


瀬里奈は知香を嫌う葉月のグループにいながら知香を案じてくれていた。


『元気そうで安心したよ。いずみも心配してたから。』


中学のバスケ部に所属しているのぞみの妹・いずみは行けなくて残念そうにしていたらしい。


『ともちゃん、はずみちゃん、悪いけど配膳手伝ってくれる?』


『は~い!』


夕食は俊之と佐知子、一郎の家族も加わり非常に賑やかな宴会と化した。


『リッキーも上西さんもせっかくだから飲みなさい。』


宴会といっても大人は少ないので俊之は二人に酒を勧める。


『いえ、ホテルまで運転しなければなりませんので。』


麗たちはホテルに宿泊する事になっていた。


『マイクロバスは置いていくんだろう?麗ちゃんを乗せる車なら佐知子も運転出来るだろうから大丈夫だ。』


ウェルキャブは基本的にワンボックスなので普段俊之が乗るワンボックス車と大差なく、佐知子も運転は慣れている。


『それではお言葉に甘えて……。』


『イタダキマス。』


『リッキーは飲み過ぎるとなにをするか分からんからほどほどにな。』


リッキーの酒乱は知香も知っている。


『こうちゃんのお祖父ちゃんって織物工場やってたんだ?』


萌絵たちがこのみの祖父のところで衣装製作をする話を聞いてさっそく知香はこのみに聞いた。


『お母さまの結婚式で着た打掛けが最後の作品なんです。でも工場がかなり価値がある建物なので壊さないで中だけ改装して若いデザイナーの人に貸す事になったんです。』


『ふ~ん。でも二人ともまだ高校生になったばかりだよ?』


『去年の文化祭でクラス全員のメイド服作ったでしょ?あれに可能性を感じたって言われたわ。こんなチャンスそうはないから、やるって答えたの。』


いくら知り合いだといっても大丈夫なのか知香は心配だ。


『……知香の事を思ったら出来そうな気がしたの……。来年二人とも群馬の高校に転校して二人で向こうに住むつもり……。』


もしかしたら萌絵と奈々は既に恋仲になっているかもしれないが、詮索をする気はない。


『……知香がいなかったらこのみちゃんや麗さんとはただの学校の先輩後輩というだけで接点がなかったかもしれない……。』


『そうよ、知香に会ってそれが言いたかったの。』


萌絵と奈々はあうんの呼吸で知香に言った。


『そんな事……。』


『なにを今さら。ここにいる人の半分はともちが引き合わせてくれた様なものじゃない?』


一番付き合いの長い雪菜が謙遜する知香を嗜めた。


『そうですよ。私が今井家の養子になったのも知香さんのお陰ですし。』


このみも負けじと言い放つ。


『ワタクシも感謝しておりますのよ。それでなければわざわざマイクロバスを借りてまでここまで来るなんてしませんですわ。』


『そうだよ。みんなチカがつなげた輪なんだから。そのチカがうつになったなんていうからみんな心配して集まったんだよ。』


麗と美久も続いた。


『みんな、ありがとう。もう大丈夫だから。』


知香は集まってくれた友人たちに心から感謝している。


『なんかさ、俺たち出番ねぇな。』


福島がぽつりと呟いた。


『ばか、余計な事言うな!』


健介は赤い顔で福島の口を塞いだ。


『ともち、高木くんなんか凄く慌てて大変だったんだからちゃんとフォローしてあげなよ。』


(みんな、本当にありがとう。こんな事をされたらいちいち病気になんかなってなれないね。)


知香はこの後1年間投薬治療を続けたが、もう2度とうつで落ち込む様な事はなくなった。


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