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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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団体さまご案内

知香は翌週からテレビ復帰を果たし、その後ははずみと共に夏休みの間中長野の田舎に滞在していた。


『信州ほっとワイド』は夏休みという事で毎週スタジオを出て上高地、小諸と普段各リポーターが中継している県内の観光地に出向いたが、結果的に知香のリハビリになっている様だ。


『来週は信州の小京都、小布施からお送りします。』


小布施といえば知香が十三参りの時に早苗からリポートを受け、初めてテレビに出演した思い出の場所でもある。


『ただいま~。』


『お帰りなさい。』


お盆の最中とあって父の博之と母の由美子も前日から帰省していた。


『初めて生でテレビを観たがしっかりしていたな。』


口数の少ない博之にしては上出来な誉め言葉だ。


『ともちゃんあんなに大変だったのにそれでも父親なの?』


博之は母の佐知子に詰られるが、知香は父のその一言に感謝していた。


『はずみちゃんもお帰りなさい。』


『ただいま。……やっぱり今日は天ぷらまんじゅうですか?』


今日は中継先で知香とはずみは天ぷらまんじゅうを食べていた。


『あらはずみちゃん、天ぷらまんじゅうは口に合わないかしら?』


はずみは毎週テレビで長野の郷土に伝わる名物料理を毎週食べているが昆虫食で抵抗して以来、変わった食べ物は食べられないイメージがある。


『いえ、さっき食べましたが大丈夫です。……でも、太りそうで。』


美味しかったけれど中の餡に加え、衣を付けて油で揚げるのだからかなりのカロリーだと思う。


『これを食べるのはお盆の今だけだから気にしないで食べようよ。』


美味しいものには目がない知香に勧められ、結局はずみも他の天ぷらと共に食べてしまった。



土曜日以外、知香たちはなるべく規則正しい生活を心掛けている。


朝は早く起きてはずみのリードで近所を走り、帰ると朝食の準備をする佐知子を手伝い、朝食後も洗濯や掃除をする。


午後は2時間ほど宿題や勉強に充て、再び身体を動かし夕食の準備を手伝う。


時々民宿を利用する客が訪れる事もある。


昔利用した人やスポーツ団体の夏合宿の問い合わせがあり、去年は人手がなく断っていたが、今年は知香とはずみが手伝ってくれるので少数ながら受け入れているのだ。


『いらっしゃいませ。』


4歳の女児を連れた若い夫婦が宿泊にやって来た。


『学生の頃合宿で利用したんですがダメ元で電話したら泊まれるって聞いて驚きました。リゾートホテルも良いけれどこういう素朴な宿が好きなんです。』


若い夫がそう話した。


『私、ここの孫で夏休みの間友人とここに来ているんです。将来保育士を目指しているので夕食までの間お子さんと一緒に遊んでも宜しいでしょうか?』


『お願いして良いかしら?』


知香の提案に妻は喜んだ。


『たまにはごゆっくり二人で散策でも如何ですか?』


佐知子にも勧められ、女児は知香が預かる事になった。


『こんにちは、お名前は?』


『ひな。』


『ひなちゃんね、お姉ちゃんははともか。宜しくね。』


『とも……ねえ……?』


4歳児には少し知香は覚え辛い様だ。


『ともねぇだって。可愛いね。』


子ども好きな知香には小さな子どもの笑顔が一番の良薬だと思った。



『ありがとうございました。お気を付けて。』


『ともねぇ、ばいばい。』


翌朝、若い夫婦とひなちゃんは喜んで帰途に付いた。


『さ、今日は団体さんが来るわよ。』


『団体?何人くらいなの?』


『20名様よ。全員は泊まらないけど。それでお願いがあるんだけど、ほとんど高校生の団体なのであなたたちの部屋にも何人か泊めてほしいんだけど。』


佐知子が妙なお願いをした。


『ちょっと待って。さすがに私はまずいんじゃないの?』


同じ高校生といってもまだ半分男性の知香と初対面の生徒が一緒の部屋なのは無理がある。


『先方は了承してくれたわ。大丈夫。』


知香は半信半疑で佐知子の頼みを受けた。


夕方になり、マイクロバスが到着したので知香とはずみが玄関に出る。


『トモカ、ヒサシブリデス!』


『リッキー?!』


マイクロバスを運転していたのは以前ここに長期滞在して今は麗の父・源一郎の秘書をしているリカルドだった。


『きな、美久?』


中学時代の親友たちがマイクロバスから次々に降りてきた。


『え?ぐりによしみん?それに瀬里奈さん!』


『きな子さんと話し合って高校組は私がみんなに声を掛けたの。』


『俺たちもいるぜぃ。』


福島が健介を引っ張って降りてきた。


『……とりあえず勉強も一段落してオヤジに許可もらったから……。』


知香がうつになって一番心配をしていた健介だが、余計な励ましは却って負担を掛けると、勉強に打ち込んでいたのだ。


『ありがとう……。』


『……知香、久し振り……。』


『奈々……、萌絵も!』


萌絵たちに会うのは麗の父・源一郎とこのみの母・康子の結婚式以来だ。


『私たちね、このみちゃんのお祖父さんのところで洋服作りをする事になったの。今は準備中だけどね。』


このみの祖父母は結婚式で見掛けたが話はしなかった。


『……知香が病気で元気がないってこのみちゃんに聞いたから……。知香に服作ったの……。』


別れても自分の事を思ってくれるなんて申し訳なく思う。


『みんな、わざわざありがとう……。』


夏休みとはいえ、みんなが心配してわざわざ集まってくれて知香は深く感謝した。


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