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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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チームワーク

球技大会の初日を迎えた。


各種目とも一年C組は隣のD組と対戦するが、それぞれ自分のクラスを応援出来る様、バスケットボールが第一試合、ソフトボールが第二試合という形にずらしている。


そのためクラスの全員が体育館のバスケットボールコートに応援に集まった。


『ともち、頑張って。』


『最初だから緊張するよ。』


みどりと紀子は共にソフトボール、好美は第三試合のバレーボールに出場する。


『みんな、集まって!』


園香が呼び出す。


『勝ち負けは良いから、楽しくやろう。』


『でもみんな見てるしやるからには勝ちたいよね。』


知香はやる気満々だ。


『まあ、どこまでやれるかしらね。せいぜい頑張ってね。』


結局瀬里奈は一度も練習に参加していない。


『羽沢さんもチームメイトです。一緒に頑張って勝ちましょう。』


4人の想いをアイが代弁した。


『園香さんにボール回すからね。』


菜々美も毎日練習をしたが、あまり自信は付いていない様である。


『とりあえずポジションはあるけどチャンスがあったらみんなどんどんシュートして良いからね。あれだけ練習したんだし、自信持ってやろう。』


園香がみんなを励ましてコートに散らばった。


相手のD組もバスケ部に所属している松木沙智という生徒が中心の様で、試合開始のティップオフは園香と沙智が行なう。


バスケ部三年生の審判がボールを上げ、園香と沙智が打ち合ってボールは知香が掴んだ。


(わ、初っぱなから?)


知香は練習通りにドリブルをして進む。


(囲まれちゃったよ!)


一瞬、右斜め後ろに瀬里奈がフリーに見えた。


『瀬里奈さん!』


『え?』


まさか知香からパスが回ると思わなかった瀬里奈はボールを捕ったものの、直ぐに沙智に奪われ、そのままシュートを決められた。


『どんまい、瀬里奈さん。』


園香は励ましたが、瀬里奈は納得がいかない。


『パスするならもっとちゃんと投げてよ!』


瀬里奈の罵声に味方だけでなくD組の選手や生徒たちが固まった。


『別に普通だろ?なんで怒るんだ?』


『お、C組はチームワーク悪そうだ。いけいけ!』


がぜんD組が盛り上がってきた。


菜々美がスローインしたボールをアイが受け取り、園香にボールが回る。


知香は園香とは逆のサイドに走り、園香は知香にパスをした。


(誰もいない!)


そのままドリブルをしてシュートを放ったが、ボールはリングに当たった。


『ともち、惜しい!』


そのボールは再び沙智が捕り、ドリブルでそのままゴールした。


『知香さん、惜しい。悪くないよ、その調子。』


『なにが惜しいよ?自分で決めようなんて出来っこない事しないで倉持さんに回しなさいよ。』


瀬里奈は一人で憤る。


『ごめん……。』


知香は謝るしかない。


『知香さん、気にしない、次頑張ろう!』


前半の10分が終わり、12対4とD組がリードしているが得点は全て沙智と園香が決めたものだった。


ちなみに球技大会のルールは正式の第4ピリオドまでではなく10分ハーフの前後半で勝負は決まる。


『大丈夫、まだ挽回出来るよ。』


『白杉さんのスタンドプレーがなければ勝てるわ。ちょっとくらい練習して上手くなったなんて思わないで。』


園香の励ましにいちいち友梨香がケチを付ける。


『スタンドプレー、違うよ。ともち、みんなにパスしてるよ。』


アイが珍しく怒った。


『ごめん、羽沢さんの言う通りだと思う。気を付けるよ。』


知香は三度シュートを試みて三度とも失敗している。


『知香さん、落ち込まないで。前半と一緒で大丈夫だから。それにD組も沙智以外ほとんど動いていないし。』


園香も知香を励ますと共に瀬里奈に対する不信感が募ってきた。


『さ、逆転するよ!』


再び、知香たちはコートに散った。


ボールを持った園香は瀬里奈にはボールを回さず、知香やアイたちにパスをしていく。


『ともち、運動神経良いんじゃない?』


『小学生の時男の子と一緒に体育したくなかっただけなんだって。スキーは上手いみたいだしね。』


みどりよりは知香の事をよく知る紀子だが、スキーの腕前については[信州ほっとワイド]のジングルの映像でしか見た事がない。


知香は立ちはだかるD組選手を交わしていく。


沙智は園香に邪魔をされ、またまた知香にシュートのチャンスがやってきた。


『知香さん、焦らないでもう少し前に!』


足を止め掛けた知香だが、園香の声に反応してドリブルを続けて前に出た。


『そこから!』


『入った!』


4度目の挑戦で知香はシュートを決めた。


『ともちやったー!』


紀子たちも歓声を上げる。


『知香さん、ナイスシュート!次もいこう!』


『うん!』


伏兵にシュートを決められ、ショックの沙智は集中力を欠いて園香にボールを奪われた。


『アイさん!』


園香はアイにパスし、今度はアイがシュートを決める。


『アイも凄~い!』


後半になり知香たちの活躍もあって残り1分を切ってついに同点に追い付いた。


『知香さん!』


D組からインターセプトしたボールは園香から知香に渡った。


園香は沙智を徹底マークし、他の選手も知香に付いてこれない。


『知香さん、決めて!』


これでシュートが決まればC組の勝利が決まる。


『瀬里奈さん!』


知香の後ろをやる気なさそうにだらだら走っていた瀬里奈に知香はパスを送り、走路を開けた。


『そのままシュートして!』


知香が追ってくるD組の選手を防ぎ、ドリブルでゴール下まで来た瀬里奈がシュートを決め、その直後に審判の笛が鳴る。


『やった、勝ったぁ!』


C組は最後の最後で勝利を決めた。


知香たちは輪になって喜びあったが、最後にシュートを決めた瀬里奈だけは輪に加わらず俯いていた。

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