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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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苦手な球技大会

みどり高校では毎年6月に球技大会が行なわれる。


『やだなぁ~。』


スキー以外の運動が苦手な知香にとっては嫌な季節だ。


『この中から希望する種目を選んで下さい。』


黒板に書かれた種目は女子はソフトボール、バレーボール、バスケットボールで、クラスの女子は20人だからぴったり全員参加となる。


『全部ダメ。男の子の時だって野球とかした事ないしバレーはサーブだって届かないし。』


『ともち、麗さんって怪我する前バスケで将来期待されてたんでしょ?教えてもらえば?』


今まで紀子と麗は接点がなかったが麗の逸話は知っている。


『無理だよ。車イスバスケも日本代表を目指して今度男子チームに入ったらしいから。』


といっても麗を見てきた関係で他の2種目と比べたら出来そうな気がする。


『でも一番動く種目だと思うよ。』


ソフトボールは投手と捕手以外球が来なければあまり動く事はないしバレーボールは自分の動く範囲はそう広くない。


しかしバスケットボールは5人でコートの中を走り回らなければならないから3つの競技の中では一番ハードだ。


『なんとか頑張ってみるよ。』


やはりダメもとで麗に協力を求める事にした。



『まあ、知香さんがバスケットボールを?』


『あくまで消去法ですから。といってもみんなの足手まといになりたくないので基本的な指導をしてもらえば……。』


麗の目が光る。


『苦手な事でも知香さんの責任感が許せないのですね。私もお手伝い致しますよ。』


このみも普段、自分の勉強や習い事がない時は麗の練習を手伝っているらしい。


『もうひとり、一緒に練習をしてくれる方がもうすぐ来られますので、今のうちに身体をほぐしておきましょう。』


知香は麗のコーチでもある上西の事だと思ったが、すでに麗と共に帰宅しているはずだ。


知香たちがウォーミングアップをしていると、そのひとりがやって来た。


『いずみちゃん?』


中学の体操着姿のいずみである。


『いつも学校の練習が終わったらここで麗さんに教えてもらっているの。』


いずみは中学生になり、バスケットボール部に入部したらしいが、まだ小学生だった頃から麗にコーチをしてもらっていたのだ。


『一年生だからまだ試合には出られないけど、先生から筋が良いって言われてるの。』


それも麗のコーチと本人の努力の賜物であろう。


『私の方がうんちで下手っぴいだけど宜しくお願いします。』


知香の言葉は謙遜でもなんでもなく本音だ。


中学一年生にも運動神経が劣ると思っている。


『球技大会まで10日間、きっちり基礎を学んで戴きますわ。』


初日はパスとドリブルの練習を繰り返し行なった。


地味な練習だが、それでもいずみやこのみみたいに上手く出来ない。


『やっぱり私、ダメみたい。』


『そう思うのが一番ダメなのですわ。最初は誰でも上手く出来ません。』


麗が叱咤する。


『チカねぇ、だんだん様になってきたよ。』


3歳も年下のいずみに励まされてなんとかコツは掴めた様だ。


『知香さんは本当は()()()なんかではないと思います。あれだけスキーが上手いのだから、やる気だと思いますよ。』


このみの言葉には説得力がある。


男子だった小学時代は苦手意識と他の生徒と一緒に着替えるのが嫌で体育を休んでいたが、走力はさほど低くはなく、中学の体育祭の1500メートル走では3位に入っていた。


『要は気持ちですわ。好きこそものの上手なれて言うではありませんか?』


自分で勝手に苦手意識を植え付けているだけなのだと麗も言う。


『分かりました。明日からも宜しくお願いします。』


知香は覚悟を決めた。



『おはよう~。』


翌朝は筋肉痛に悩まされたが学校を休む訳にはいかない。


『なんか辛そうだね。大丈夫?』


みどりに心配されるがそれだけ普段身体を動かしていないのが自分でも分かった。


『うん。あちこち痛いけど。』


週末は長野に行かなければならないので練習からは解放されるが、麗からはボールがあるなら練習は続ける様にとプログラムを渡されている。


『白杉さん。』


『はい。羽沢さん?』


声を掛けたのは葉月のグループの羽沢瀬里奈である。


『あなたも球技大会バスケをやられるんですってね?せいぜい足手まといにならない様、宜しく頼みますね。』


『分かりました、宜しくお願いします。』


面倒くさいチームメイトだが、今の知香ではなにも言い返せない。


『ともち、おはよう。私もバスケやるよ。一緒に練習して頑張ろう。』


アイもバスケだったのは助かる。


なにしろ補欠がいないので全員フル出場しなければならないから、チームワークが悪いとそれだけで不利となってしまうのだ。


ちなみに各学年に6クラスづつあるので最初はA組対B組という様に隣のクラスが対戦し、勝ったチーム同士、負けたチーム同士がそれぞれ2回戦って順位が決まる方式となり必ず3試合行なう事になる。


『白杉さん、宇野さん、一緒に頑張りましょうね。』


『倉持さん、宜しくお願いします。……下手ですけど。』


倉持園香はバスケ部なので彼女が中心になるだろう。


『大丈夫、楽しみましょう。』


園香にとってはたかが球技大会であるがそれこそ足を引っ張ってはならない。


『私も下手だけど宜しく……。』


もうひとりはバスケ部ではないが園香と仲が良い副島菜々美で、園香と一緒なのでバスケを選んだらしいが彼女も運動は苦手な様だ。


『倉持さん。昼休み練習したいんだけど嫌でなかったら教えてくれる?』


知香は申し訳なさそうに園香に言った。


『そこまで本気にならなくても……って思うけど、その気持ちは嬉しいわ。教えるなんておこがましいけど付き合うよ。』


知香のやる気に火が着いた。

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