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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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好美の好奇心

番組の後半になってようやくはずみが落ち着いて番組に復帰した。


その間、看護師を目指す美久に介抱されていたのは幸いだった。


『はずみさん、大丈夫ですか?』


『はい、失礼致しました。でも昆虫はこれからも無理です。』


美味しそう(?)に食べていた一郎の事をはずみはどう思っただろう?


知香は二人の先行きが少し不安になった。



放送が終わり、知香たちは俊之の家に帰ってきたが、一郎の帰りはかなり遅くなりそうだ。


『うちでも昔はよく作ったな。なあ、母さん。』


『はい、でも民宿のお客さんがなかなか食べてくれないから止めたけど、いっちゃん、ともちゃんはよく食べてたわね。』


俊之と佐知子は昔を思い出しながら話してくれた。


『私はいっちゃんほど食べなかったよ。いっちゃんは全然抵抗なかったみたいだけど。』


知之だった頃は遊びに行くといつも同い年の一郎と比較されるので仕方なく食べていたのだ。


『タイもイサーンでは昆虫食べるよ。バンコクの人、食べないけど。』


タイも東北部のイサーン地方では農作物に恵まれていないために昆虫を食べる文化があるが、都会のバンコクの人からはゲテモノ食いと蔑まれているとアイが説明した。


『一郎の嫁になるためにはイナゴくらい食べられないとダメかもね。』


『お母さん、私、嫁失格ですか?』


瑞希に烙印を押されはずみが泣き付いた。


『こういうはずみん見るの、楽しいね。』


はずみは一郎の事になると冷静さを欠くきらいがあり、瑞希たちにからかわれる事が多い。


『大丈夫よ。うちももう食べてないから。ごめんね、苛めて。』


知香の父・博之は真面目で寡黙なのであまり知香に似ていないが博之の妹の瑞希と知香の性格がそっくりだとはずみは思った。


『さ、口直しじゃないけど今日ははずみちゃんの好物を用意したわよ。』


『ありがとうございます、お手伝いします。』


『はずみん、すっかりお嫁さんになっちゃってるね。』


美久とのぞみに冷やかされるのも嬉しいはずみである。



食事が終わると交代で入浴するが、毎週末同じ部屋に寝ているはずみでさえ知香と一緒に入浴した事はなく、基本的に知香は一人でお風呂に入る。


『ともちとお風呂、一緒に入りたい。』


突然好美が言った。


『ダメだよ。私、まだ付いてるんだから。』


知香と一緒に入浴した事があるのは同じトランスジェンダーのこのみと、赤ちゃん返りをした紀子だけである。


『見てみたいの……。』


好美がそんな事を言うとは思わなかった。


『見せ物じゃないんだけど。』


『減るもんじゃないから良いでしょ。』


逆に見られて減るならいくらでも見せてやると思う。


『……分かった。変な事しないでね。』


知香は折れて好美と一緒に入浴する事になった。


普段おっとりしているくせに攻めに転じると凄い。


(萌絵と似たところがあるな。)


知香が下半身を隠して脱衣場から風呂場に移る。


『タオルなんかで隠さないでちゃんと見せて。』


『やだよ。』


知香が嫌がると好美が顔を近付けてきた。


『じゃ、キスしちゃう。』


キスは初めてではないが、この状況ではしたくない。


『もう、分かったよ。』


知香は仕方なくタオルを取った。


『ちっちゃい!これって大きくならないの?』


なんか失礼だと思う。


『ホルモンやってもう1年近くなるからならないよ。』


ほとんど小便をするだけの機能しか残っていないのだ。


『おっぱいは結構大きいね。』


知香の胸はBカップくらいに成長している。


『いつまでもそんなじろじろ見ないで身体洗ってお風呂入ろ。』


『私、身体洗ってあげる。』


『そんな……良いよ、自分で洗うから。』


『せっかく一緒にお風呂に入ったんだから洗わせてよ。』


どうしたらそんな発想になるのか不思議でならない。


『肌、キレイだね。』


赤ん坊の時以来他人に初めて身体を洗ってもらったが、意外に気持ち良い。


『他に誰かの身体洗った事あるの?』


『うん。修学旅行の時。後、お姉ちゃんと一緒にお風呂入る時はいつも。』


好美には姉がいるらしいが、高校生になっていつも一緒にお風呂に入るなんてどうなのだろう?


『私、変でしょ?』


『私から見れば大したことないよ。』


身体を流して一緒に湯船に浸かる。


『私ね、両親いないんだ。お姉ちゃんと10歳離れていてずっと二人で生活してきたから。』


『お姉さん、お仕事は?』


『在宅でネットの仕事しているみたい。細かい事はよく分からないけど、まあまあ収入は良いらしいからあんたはバイトしないで高校に行ったら好きな事しなさいって。料理部に入ったのも家でずっとごはん作っていたから。』


好美が料理好きな理由が分かった。


『お姉さんと一度会ってみたいね。』


『たぶん喜ぶと思うよ。家でもともちの話をしてるんだ。』


どんな話をしているかは分からないが、たぶん悪くは言っていないだろう。


『ごめんね、一緒にお風呂入るって言ったのは二人だけで話をしたかったからなの。』


それならそうと言ってくれれば良かったのにと思う。


『そのくせ、ずいぶん人の恥ずかしいところを見たよね。』


『……お姉ちゃんがね、見せてもらえって言うから。……私も興味あったけど……。』


両親がいないのは同情するが、変な姉妹である。


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