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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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昆虫を食べよう

知香たちは通常8時にスタジオ入りをする。


11時の放送開始までに打ち合わせやカメラリハーサルを済ませ、軽く食事を摂る。


今日は美久たちが見学のために一緒に来ているので賑やかだ。


『スタジオって広いんだね。』


『ライトがたくさんある。』


『これでも東京のキー局のスタジオと比べるとかなり小さいわよ。』


美久やありさが驚いていると田中早苗が後ろで言った。


『あ、ごめんね。私、田中早苗と申します。番組で知香さん、はずみさんのアシスタントをしているの。』


高校生の司会にこんなアシスタントがいるとはさらに驚いた。


『アシスタントってどういう事をされているんですか?』


『番組の途中でニュースや天気予報を読んだりしているわ。後、二人とも素人だから話が詰まったり流れが悪くなった時に助け船を出すの。今まではそういう問題は起きていないけどね、。』


知香たちが試験や学校行事で司会が出来ない時は司会を代行する事もあるそうだ。


『モニターに私たち映っている。』


カメラの1台がこちらを向いている。


『スタジオのカメラ3台と各中継先の映像は向こうでスイッチャーがその都度切り替えるの。』


モニターが今度は中継先の一郎を映した。


『うちの番組は半分はキー局とネットしている全国放送だけどこの昼の時間帯は平日も土日も自社制作の番組なの。少ない予算だけど県内のリポーターからの中継は必要だから土曜日は前の番組から高校生にやってもらっていて、それが好評だったから司会も高校生にって事で知香さんとはずみさんにお願いしたんです。』


都合よく知香たちの高校進学に合わせて番組をスタート出来たのだ。


知香とはずみはディレクターの萩原と最終チェックをしていていよいよ本番だ。


『間もなく本番で~す!10秒前……、5、4、3……。』


合図と共にオープニングテーマ曲が流れ、先ずは知香から挨拶する。


『みなさん、こんにちは。[信州ほっとワイド]司会のトランス高校生、知香です。』


『埼玉の普通の高校生、はずみです。今週も4時間宜しくお願いします。』


2回目からは定番となったオープニングの挨拶はもうすっかり慣れた様だ。


『ゴールデンウィーク、みなさん、どの様にお過ごしですか?』


『私たちも昨日新幹線で長野に来ましたけど凄い混雑でした。今日は県内各地からゴールデンウィークの様子をお届け致します。先ずは上高地から、雅世さん。』


カメラが上高地にいる中川雅世に切り替わる。


『こんにちは。上高地はまだひんやりしていますが、たくさんのハイカーたちが集まっています。』


こんな感じで各中継先を繋ぎ、伊那にいる一郎と北原澄香は最後だ。


『一郎くん、今日はどちらですか?』


『はい、一郎です。今日は澄香さんと一緒に、伊那に来ています。』


モニターに一郎と澄香が写し出される。


『ね、はずみん少し機嫌悪そう。』


スタジオの端で見学している美久が小声でのぞみたちに言った。


『モニターが切り替わったとたん表情変わったよね。』


『高遠の桜は終わってしまいましたが、伊那にはまだ良い場所や特産品がたくさんあるんです。』


『楽しみですね。』


澄香のリポートにはずみが返す。


『後ほど、この地方に昔から伝わる食べ物を紹介致します。』


(遂に来た!)


知香はいつか来ると思って覚悟していたが、不安を煽らない様にはずみには黙っていた。


『はずみんはもともと落ち着いているからこういう司会とか向いているかもね。』


『そうだよね。チカの暴走を止められるだろうから。』


付き合いの長い美久がそう言うとのぞみも頷いた。


『ともちって暴走するの?』


まだ付き合いの浅いみどりたち高校組は知香の事をよく知らない。


『散々振り回されたからね。今に分かると思うよ。』



12時40分、[おいしい信州]のコーナーの時間になった。


『ここで再び伊那から中継です。一郎くん、澄香さん!』


『はい、一郎です。今日の[おいしい信州]は伊那地方で昔から伝わる食べ物を紹介します。澄香さん、お願いします。』


『はい、この地方では昔から昆虫を佃煮にしたりして食べる文化があり、私も子どもの頃から食べていました。』


『昆虫……?』


知香はやはりと思ったが、はずみは初めて聞いて驚く。


『こちらのお店ではイナゴや蜂の子といったものを佃煮にして製造販売しています。』


一郎と澄香が紹介した珍味店に入る。


『お店の方に伺います。昆虫食の特徴はなんですか?』


『非常に栄養バランスが良いところです。食物繊維やビタミンBが豊富でダイエットにも最適です。』


『おすすめの商品を教えて下さい。』


『こちらのイナゴの田舎炊きです。』


一郎が皿に出されたイナゴを食べてみる。


『ごはんに合いますね。』


モニターを見ていたはずみの顔が次第に青ざめていく。


(あらら。私もあまり食べられないけど、いっちゃんが食べちゃったから余計ショックが大きいかも?)


『こちらは蜂の子です。』


一郎は苦もなく食べる。


(私もあれは苦手。小さい頃いっちゃんよく食べたからな。)


昆虫食は伊那地域でよく食べられたと言われているが、長野や群馬の山間部でも昔は食べたそうだ。


『スタジオの知香さん、はずみさん。そちらにもイナゴと蜂の子、届いていますでしょうか?』


ワゴンに乗せられたイナゴと蜂の子が知香たちの前に出された。


まず、知香がイナゴをいやいや食べてみる。


『……不味くはないけどあえて食べたいとは思いませんね。』


知香はなんとかクリアした。


『いや、ダメ、食べられない!』


尻込みしてはずみは悲鳴を上げる。


『ひと口だけでも……。』


『いや~!もう止める~!!』


冷静なはずのはずみが逃げ出した。


『すみません。私が代わりに蜂の子も……うぇっ。』


さすがの知香も少し抵抗があったが、放送事故にならない様に食べた。


『そのままじゃなく、学校の料理部でアレンジを考えてみたいと思います。』


そのまま暫くはずみは放送に復帰出来ず、1時間ほど早苗がはずみの代わりに知香の相手を務めた。

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