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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
小学六年生編
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卒業パーティー➀

翌日、知香ははずみ・のぞみと共に10時には雪菜の家に来ていた。


先に見慣れない女の子が二人来ていたが、すぐにその二人が雪菜たちのクラスのパーティーに参加した後に知香たちのパーティーの給仕をするのだと分かった。


『野村優里花です。今日は宜しくね。』


『水尾ありさです。あなたが知香さんね。』


雪菜は結構知香の事を宣伝している様だ。


『ユッキー!』


『良いじゃん、どうせ中学に入ったら分かる事なんだから。』


『ごめんなさい、白杉知香です。一緒のクラスになれたら良いね!』


はずみとのぞみも続けて挨拶をする。


お店で紗世から説明を受けて最初に知香だけ更衣室に入る。


はずみものぞみも一緒に着替えても構わないと言ったが知香は遠慮した。


ブラウスの袖を通し、上衣、エプロンを付けて最後に頭にカチューシャを付ける。


紗世が本人の意思とは関係なく雪菜の為に考えたデザインでメイド服に近かった。


着替えが終わり更衣室から出てきた知香を見て


『可愛い~。』『似合っている。』


の声があがったが、


『またそんなこと言って、みんなも着るんだからね。はずみんものぞみんも早く着替えなよ。』


知香も最近言われ慣れているのでそう言う時の扱いも分かっている。


お店自体は貸し切りでは無く奥のスペース以外は通常のランチ営業をすることから10時半にはホール係のパート従業員が出社してきた。


『ゆきちゃん、今日は楽しみにしているからね。』


『今日は可愛い娘がいっぱいだからおばさんも若返っちゃう~!』


紗世は今日は雪菜が制服を着てホールに立つ事を毎日吹聴していた。


親バカの紗世の前では知香たちは前座に過ぎない。


一般の客は正規のホール係が相手をするので万一知香たちが声を掛けられたりした時の注意事項を確認していると雪菜のクラスメイトたちが次々に入店してきた。


『じゃ、私たちも席に行くから宜しくね!』


雪菜は優里花・ありさと共にホールに消えた。


『さ、頑張ろ!』


はずみが知香とのぞみに声を掛け、紗世が


『お水を持って行って。』


と指示をする。


水の入ったコップをトレイに乗せて三人は席まで運ぶが意外に重く、バランスを取るのが難しい。


席に着いていた雪菜たちの前に一つづつコップを置いていき、終わると飲み物のオーダーである。


と言っても小学生だから殆どコーラかオレンジジュースであり、予め雪菜が聞いてメモを書いてくれていた。


飲み物を配り終えると司会担当の子が乾杯の音頭を取り、パーティーが始まった。


『ともちゃん、はずみちゃん、のぞみちゃん、持ってって。』


雪菜の父・猛が出来た料理の皿を並べ、知香たちに皿を運ぶ様促した。


料理の乗っている皿は結構重い。


ベテランのホールのおばさんたちなら平気で一度に三皿くらい運べるが知香たちはせいぜい一皿しか運べない。


『無理しなくていいからね。』


何往復もして料理を運ぶと足も腕も辛い。


見た目の可愛さとは裏腹にハードな職業であると知香は感じた。


もう少しで全員の料理を運び終わるという頃には店内に一般の客も増えてきた。


『すみません。』


一般客から声を掛けられた。


『あ、はい。』


つい、反応してしまった。


『注文良いかな?』


『あ、あの……ちょっとお待ち下さい……』


そのような時は『少々お待ちくださいませ。』と返答して正規ホール係に伝える様に指導されていたが咄嗟の事で教えられた言葉が出ない。


まだこれから自分のクラスのパーティーの司会をしなきゃならないと言うのにもうへろへろだ。


『料理は出し終わったしチカちょっと休んでたら?』


知香は厨房の脇に腰掛けて一息付いたが、それもほんの一瞬だった。


『なんかみんなに私たちを紹介したいんだって。』


のぞみが面倒くさそうな表情で知香に伝える。


『二人とも、そんな顔でお客様の前に出ない!』


普段から冷静なはずみが二人を引き締めた。


『それでは、今日お店でみなさんのお料理を運んでくれて四月から一緒に三中に通う仲間を紹介致します!』


司会の男の子がカンペを見ながら言って三人が紹介された。


『青葉台小の大森のぞみさん、松嶋はずみさん、白杉知香さんです!』


順番に挨拶することになった。


『大森のぞみです。よく考える事が三年生の妹と一緒って言われてます。宜しくね!』


のぞみらしくウケ狙いの挨拶だ。


『松嶋はずみです。宜しくお願いします。』


はずみはやっぱり落ち着いている。


知香の番になると、あきらかに空気が変わった。


やはり雪菜によってみんな知っている様であった。


雪菜一人だけが呑気そうな顔をして天井の方を見ていた。


『白杉知香です。みなさん知っているみたいなので言いますが本当は私まだ男の子です。』


確信は無かったが雪菜の事だ、みんな知っていると思う、


『志田さんとは幼なじみで、小さい頃から志田さんに女の子の服を着させられてこんな風になってしまいました。』


どっと沸いた。


呑気そうだった雪菜が急に慌ててこっちを見た。


(たまにはいいでしょ?)


『三中に行ったらみなさんと仲良くやっていきたいです。宜しくお願いします。』


拍手をもらい、下がった知香はそのまま更衣室に下がっていく。


知香にはこの後も忙しい仕事が待っていた。






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