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中学生から始める女の子生活  作者: Ichiko
高校一年生編
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ホワイトデーのお見送り

卒業式が終わり、高校入学まではだいぶ間が空く。


長い春休みではあるが知香とはずみは4月から始まる長野のテレビ番組の司会に決まっているため、その打ち合わせで1週間長野に滞在するのである。


といっても1週間のうちテレビ局に顔を出すのは2回だけで、知香は受験が終わって解禁になったスキーを楽しむため、はずみは一郎との時間を有意義に過ごすのが本当の目的であった。


14日の月曜日、午後1時から最初の打ち合わせと出演者・スタッフの顔見せがあるため、知香とはずみは10時半に駅で待ち合わせをして長野に向かう事になった。


平日なので由美子も仕事でいないため、知香は玄関の鍵を掛け、自宅を出る。


『……知香……。』


『健介くん?』


自転車に跨がった高木健介が知香の目の前に現れた。


『……今日から長野に行くって言ってたろ?送ろうと思って……。』


『もう、メールくらいしてよ。それじゃストーカーみたいだよ。』


『ごめん。……なんか恥ずかしくってよ……。』


健介は高校に行っても無粋なままだろう。


『ありがと。はずみんとは駅で待ち合わせしているから行こ。』


『お、おう……。』


二人は歩き始め、駅に向かった。


『あのよ……、先月チョコもらったからこれ……。松嶋と新幹線の中で食べてもらおうと思って……。』


高木が手渡したお菓子はきちんと包装されていたが中身はひとつひとつ食べられる様個別になっている。


『ホワイトデー?』


無粋な健介にしては上出来だと思う。


『……バレンタインの時さ、本命じゃないなんて言ってたけどね。あれって嘘なんだ。』


知香は受験勉強の合間に男子では高木だけにチョコを渡していたが、同じ高校を受けるよしみだと説明していた。


『合格発表の時に告白しようかなって思ったら邪魔が入っちゃったでしょ?今言っても良いかな?』


『……は、はい……。』


健介は立ち止まり、身構える。


『好きだよ。』


健介の顔が沸騰した。


『長野から帰ってきたら、デートしようよ。待っててね。』


『……わ、分かった。……どこに行けば良い?』


『健介くんに任せるよ、宿題ね。』


駅のロータリーに到着し、階段の下で健介は見送る事にした。


『じゃあ、気を付けてな。』


待ち合わせをしているはずみに真っ赤な顔を見られたくないからである。


『ありがと、行ってきます。』


知香ははずみが待つ改札口に向かった。


『おはよう。』


『チカ、遅いよ。電車来ちゃう。』


『ごめんごめん。』


10時半の待ち合わせだったが、3~4分経っている。


電車が発車するのは37分なので二人は急いでホームに向かった。


『チカが時間ぎりぎりって珍しいよね。いつも早く来るのに。』


『うん、健介くんがホワイトデーだからってもらったんだけど。』


はずみにお菓子の包装を見せる。


『やるじゃん、高木くん。』


『それでね……、保留にしてた返事言ったの。……好きだって……。』


健介に言った時は平静を装っていた知香だったが、改めてはずみに報告すると顔が赤くなった。


『凄いよ!やったじゃん、チカ。』


電車の中なのではずみは静かに祝福する。


『でも高木くんって大丈夫なの?勉強は出来るけど言葉とか乱暴だし。前に顔を叩かれたんでしょ?』


はずみは同じクラスになった事はないが一通りの話は知っている。


『それは健介くんの家の問題もあったからね。今は健介くんのお父さんも少しだけ認めてくれる様になったし。』


知香は高木には愛が足りないので偏屈になったと考えていた。


『私も良かったわ。これで少しは冷やかしから解放されるし。』


『いいや、人前でいちゃいちゃしたら冷やかすから覚悟しな。』


今日から1週間、いちゃいちゃしているところを見せ付けられそうなので、先手を打つ。


在来線から新幹線に乗り換え、40分ほどで長野に到着すると、一郎と祖父の俊之が迎えに来ていた。


『こんにちは。』


一郎と顔を合わせたはずみは知香の視線が気になり、普段よりよそよそしい。


知香たちは俊之の車に乗り込み、シナノテレビに向かった。


『わしたちにも披露宴の招待状が届いたぞ?』


今は麗の父・源一郎の秘書であるイタリア出身のリカルドはもともと俊之の民宿に滞在していたし、麗もこのみも世話になったため、招待状が届いたのだ。


『おじいちゃんたち、出席するの?』


『まあ、たまにはリッキーの顔を見たいしな。』


リカルドは源一郎の秘書になってから一度も長野には行っていない。


『じゃあ家に泊まるの?』


『いや、式場になるホテルに泊まる事になる。わしらだけじゃなく、一郎たちも泊まるからな。』


『一郎たち……っておじさんたちも来るんだ。』


『参ったよ。はずみのお父さんお母さんに挨拶したいとか言ってさ。』


『ちょっと!私聞いてないよ。』


はずみも知香も知らぬ間にそんな話になっている。


『これって事実上の婚約って事?いよいよだね。』


結局はずみは知香に冷やかされた。


なんでも大人たちの間ですでに話は済んでいる様で、今井家の披露宴の前日に一郎とはずみの両親、俊之と佐知子、博之と由美子、それに知香、一郎、はずみが揃って食事会をする事になっている。


『おじいちゃん、いつそんな話決めたの?』


『招待状が来たのが先月の半ばだから、それから直ぐだ。』


『まったく、勝手なんだから。』


ぼやいているうちにテレビ局に到着した。

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